(2)  中学校における授業研究
   1年目の技術分野における授業研究では,問題解決的な学習を通して生活に生かす力をはぐくむために,中学校第1学年において題材「生活に役立つものをつくろう」を展開した。
 技術分野の「技術とものづくり」では,科学技術の進展等を考慮し,加工,生産等のものづくりにかかわる基礎的な知識と技術を習得することによって,技術を適切に理解しようす能力と,工夫・創造して課題を解決する実践的な態度を育成することをねらいとしている。つまり,生徒は自分が取り巻く身の回りの生活を見つめ,よりよい生活を目指して,問題解決的な学習に繰り返し取り組むことにより,基礎的・基本的な内容が確実に定着し,生活に生かす力が身に付くと考える。
 生徒の実態を見ると,「生活に役立つものをつくってみたい」と考える生徒は多いが,思いや願いは多様であり,単一の教材だけで,その思いや願いを実現することは難しい面がある。ものづくりに興味を示さない生徒は,「うまくできない」「作り方がわからない」など今までの失敗などにより,興味が薄れてしまっている。さらに,製作に使う工具に関して,基礎的な知識や技術が身に付いていないままに使っている生徒が多い。これらの現状を踏まえると,自分の生活を見つめ問題をとらえる場面で,生徒の思いや願いを実現するためには,できる限り様々な規制を取り除き,木材の大きさや板材・角材・丸材などの形状や金属,プラスチック等の素材の特徴を生かした製作題材を工夫することが重要となる。さらに,問題を解決する場面で,一人一人の製作題材が多様であると,製作の過程や進度,使用工具などが異なるので自力解決できる学習環境や指導体制の工夫が必要であると考える。
 そこで,基礎的・基本的な内容の確実な定着を図り,生活に生かす力をはぐくむことができるように,次のような手だてを考え授業研究に取り組んだ。まず,学習過程の工夫として身近な生活の中から課題を見つけ,設計・製作を通して自力解決ができるような問題解決的な学習に取り組めるようにした。製作過程においても,様々な工具の使い方について「調べる」「試す」「実践する」を繰り返すことにより,学び方を身に付けるとともに,基礎的な知識や技術の習得が図れるようにした。次に,教材・教具の工夫として,自力解決ができるように,学習カードや参考資料となる学習の手引きを作成した。また,自作CD−ROM資料集にある工具の使い方を動画で繰り返し見られるようにした。さらに,指導体制の工夫として,大工さんをゲストティーチャー(以下GTと表す。)として迎え,実際に使用している工具を見せてもらったり,工具の取り扱いや基礎的な技能の習得のために製作の過程において継続的に援助してもらった。
 これらの製作過程,学習環境や指導体制の工夫を継続的に講じたことで,一人一人が自分の生活に役立つものを計画し,学習カードをもとに工具の使い方を様々な方法で調べ,試し材を使ってコツを見つけたり,GTに個別指導を受けることで基礎的・基本的な内容の定着が図られ,自信をもってものづくりに取り組むことができた。
 今後は,生活との関連を図る題材の開発や学び合いのできる学習形態について工夫していかなければならない。さらに,個に応じた学習指導の充実に努めていかなければならないと考えた。なお,2年目となる本年度の中学校技術分野における授業研究については,次のとおりである。


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