研究主題に迫るための手だて
   実態調査の結果を踏まえ,問題解決的な学習のそれぞれの過程における生活に生かす力をはぐくむ視点を以下に示す。
   生活を見つめ,問題をとらえる視点
   とらえた問題を生活に生かせるような課題として設定する視点
   解決方法を生活と結びつけて計画・立案する視点
   生活との関連を考えた課題の追究となる視点
   学びを生活に生かそうとする意欲を高める視点
 
   なお上記の視点に対し以下の手だてを校種ごとの実態や題材に合わせて選択して講じ研究を進めた。
   自分の生活に結びつけて主体的に学習できるような題材構成の工夫
   子どもの主体的な学習を進めることができる学習環境の整備
     学びを保証する場面や時間の確保
     教材・教具の工夫
   学び合いのできる学習形態の工夫
   一人一人の学習を確実にするための指導体制の工夫
 
   また,家庭及び技術・家庭における問題解決的な学習の過程における生活に生かす力をはぐくむ視点を考慮し,基礎的・基本的な内容が習得できるよう個に応じた指導を充実させるためのこの研究における具体的な支援の手だてやその他の手だての例を次ページに示す。
 
 
 授業研究
   研究主題に関する基本的な考えと実態調査の結果を踏まえ上記の手だてを講じ小学校中学校において授業研究を行った。
  (1)  小学校における授業研究
     1年目の授業研究では,問題解決的な学習を通して,児童が日常生活から住まいに関する課題を見つけ,主体的に課題解決に取り組み,生活に生かす力をはぐくむことをねらいとして小学校第5学年「プロジェクト『エコ・ライフ』大作戦」の授業を展開した。
 この題材では,建物としての住まいではなく,住まいに目を向けながらそこで暮らしているそれぞれの家族における健康で快適な生活に進んでかかわろうとすることで,児童の住まい方に対する関心を高め,それによって家族の触れ合いを深めることを実感的に気づくようにした。そして,快適な住まい方の根底には環境に配慮した暮らし方があることを考慮した学習を構成し,自分たちが取り組む課題が,環境に配慮した生活につながっていくことにも気づいて,自分の住まい方を工夫することをねらった。
 課題を解決するための計画を立てる段階では,自分の生活を振り返りながら計画が立てられるように,「実験カード」「調べカード」「アンケートカード」「インタビューカード」の学習カードを使用し,児童の課題に応じた支援を行った。授業後のアンケート結果によると,自分の家のことを考えながら決めた課題に対して「調べる計画を課題に合わせて決めることができた」児童は91%であった。多くの児童が見通しをもって学習に取り組むことができたと考えられる。また,風通しに関するグループでは,図1のように住居模型を用いた試行体験から自分の課題を解決するために必要なことを実感しながらつかむことができた。
 課題を追究する段階では,児童の課題に応じた実践的・体験的な活動を行った。(図2)具体的には実験,観察,インターネットの活用,インタビュー,アンケート,などを取り入れ,課題の内容別のティーム・ティーチング(以下TTと表す)の形態を取った。多様な課題を内容によってグルーピングして支援にあたったことで一人一人の課題追究が充実したと考える。また,明るさ,暖かさ,風通しなど共通のテーマで学習を進める場を設定したことで,他のグループの活動が参考になり,児童どうしが学び合う場ともなった。その結果「課題に合わせて実験やアンケート,調査などに取り組むことができた」児童は84%であった。学習前は,調べる段階は難しいと感じていた児童もいくつかの活動を組み合わせ,自分なりの方法で課題追究に取り組むことができたと考えられる。また「環境にやさしく快適な住まい方が分かった」児童は91%,「自分や友だちの学習から家でやってみたいことがあった」児童は90%「実際に家でやってみた」児童は87%という結果であった。自分の生活と結びつけた問題解決的な学習に取り組むことにより,学んだことを生活に生かそうとする意欲が高まったと考える。
 今後の課題としては,自分の生活を見つめ,問題をとらえ課題を設定する段階を充実させる題材構成の工夫に取り組む必要があるであろう。  なお,2年目となる本年度の小学校における授業研究については,次のとおりである。


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