家庭及び技術・家庭科の学習及び学習指導に関する実態調査
   家庭及び技術・家庭科の学習及び学習指導にかかわる実態を,本県の小学校及び中学校の児童生徒と家庭及び技術・家庭科を担当する教師を対象に,質問紙により調査した。
  (1)  調査の対象
   
 児童生徒…  校種別に学校規模や地域性を考慮して調査校を抽出した。小学校については10校の第6学年,中学校については12校の第2学年で実態調査を行った。回答者数は,小学校児童277人,中学校生徒472人の計749人である。
 教師…  県内の公立小学校100校,公立中学校100校を無作為に抽出した。小学校については各校1名,中学校については技術・家庭科担当者各校2名を対象者とした。回答者数は,小学校100人,中学校199人(技術担当100人,家庭担当99人)である。
  (2)  実施時期  平成14年9月12日(木)から9月20日(金)まで
  (3)  調査結果及び分析
   
選択肢の尺度
  ア あてはまる   イ どちらかといえばあてはまる
  ウ どちらかといえばあてはまらない   エ あてはまらない
表中の数値は各問の全回答者数に対する割合(%)である(校種別)
     学習意欲について
      表1−1 家庭科及び技術・家庭の授業でやる気が起こる時<児童生徒>(%)
項    目
(1)  自分の学習したい学習課題で学習する時は,やる気が起こる。
44.3 51.6 40.6 32.7 14.0 12.5 1.1 3.2
(2)  作品の見本や作り方の手順などが分かるプリントやビデオなどが用意されているときは,やる気が起こる。
21.4 18.0 49.1 42.6 27.7 34.3 1.8 5.1
(3)  先生や友達に認めてもらったりほめられたときはやる気が起こる。
46.1 31.4 30.3 39.9 22.1 24.2 1.5 4.5
(4)  グループやペアで学習するときは,やる気が起きる。
52.8 39.7 31.6 41.6 14.1 15.6 1.5 3.0
(5)  個別で先生に教えてもらったときはやる気が起こる。
10.0 6.9 39.4 28.2 42.0 44.1 8.6 20.8

 表1−1は,各校種ごとに「家庭及び技術・家庭の授業でやる気が起こる時」について調査した結果である。小学校児童が,「(1)自分の学習したい学習課題で学習する時」の項目を「あてはまる」」,「どちらかといえばあてはまる」と回答した数を合わせると84.9%と高い数値を示している。同様に「(4)グループやペアで学習する時」の項目も84.4%となっている。次いで「(3)先生や友達に認めてもらったりほめてもらった時」は76.4%という結果である。中学校生徒においても,ほぼ同様の傾向がみられる。
      表1−2 児童生徒の学習意欲を高めるための指導工夫<教師>(%)
項    目
(1)  児童生徒の興味・関心に応じた学習課題の工夫を心がけている。
20.0 26.1 60.0 67.9 20.0 6.0 0.0 0.0
(2)  教材・教具の開発と活用を心がけている。
4.0 13.1 53.0 66.3 42.0 20.1 1.0 0.5
(3)  認め,励ます機会の設定を心がけている。
36.0 37.7 62.0 56.8 2.0 5.5 0.0 0.0
(4)  学習形態の工夫を心がけている
6.0 13.1 70.0 55.8 24.0 31.2 0.0 0.0
(5)  問題解決的な学習の導入を心がけている。
5.0 14.1 49.0 59.8 44.0 24.6 2.0 1.5
(6)  コース別学習の導入を心がけている
4.0 7.0 26.0 30.2 58.0 48.2 12.0 14.6

 教師の結果(表1−2)を見てみると「あてはまる「どちらかといえばあてはまる」」,を合わせた回答数がもっとも多かったのは「(3)認め,励ます機会の設定」の小学校教師,98.0%,中学校教師94.5%であり,次いで,「(1)児童生徒の興味・関心に応じた学習課題の工夫」で,小学校教師80.0%,中学校教師94.0%であった。その他,特筆すべき事柄として,小学校教師は「(2)教材・教具の開発と活用」と「(5)問題解決的な学習の導入」の項目について「どちらかといえばあてはまらない」と回答した数がどちらも約4割という結果であった。
 両者を比較してみると,児童生徒の「自分の学習したい学習課題で学習する時」と教師の「児童生徒の興味・関心に応じた学習課題の工夫」は,どちらも「あてはまる」,「どちらかといえばあてはまる」を合わせた回答数が8割以上であることから,今後も学習意欲を高めるための手段として重視すべきであると考える。また,「認め,励ます機会の設定」や学習形態の工夫」についても同様である。
     学習でつまずいた時について
      表2−1 学習でつまずいた時,解消する方法<児童生徒>(%)
項    目
(1)  たっぷり時間をかけて考えたり,試したりしてみることで解消する。
29.6 22.7 44.2 41.4 22.1 31.5 4.1 4.3
(2)  作品の見本や作り方の手順などがわかるプリントやビデオ等を利用することで解消する。
27.8 19.7 42.2 45.8 26.3 30.5 3.7 4.0
(3)  複数の先生(ティーム・ティーチング等)の指導を受けることで解消する
19.6 10.6 43.0 29.2 33.7 48.3 3.7 11.9
(4)  グループ学習,ペア学習等で友達と学び合うことで解消する。
58.1 41.9 29.3 39.8 11.5 15.3 1.1 3.0

 表2−1で学習をしていてつまずいた時の解決法として「あてはまる」,「どちらかといえばあてはまる」を合わせた回答数がいちばん高かったのは「(4)グループ学習,ペア学習等で友達と学び合うこと」で児童は87.4%,生徒は81.7%と,児童も生徒もほぼ同様の傾向が見られる。次いで「(1)たっぷり時間をかけて考えたり,試したりすること」で児童は73.8%,生徒は64.1%,「(2)作品の見本や作り方の手順などがわかるプリントやビデオ等の利用」で児童は70.0%,生徒は,65.5%であった。
      表2−2 児童生徒のつまずきを解消するための手だて<教師>(%)
項    目
(1)  児童・生徒に十分に時間を与え,考えたり試したりさせる。
16.0 21.1 56.0 54.8 28.0 24.1 0.0 0.0
(2)  つまずきを解消できるような教材・教具を準備する。
9.0 5.5 42.0 50.3 47.0 43.7 2.0 0.5
(3)  複数の先生(ティーム・ティーチング等)で指導をする。
12.0 5.0 15.0 9.0 30.0 25.6 43.0 60.3
(4)  学習形態の工夫(グループ学習,ペア学習等)を心がけている。
26.0 16.1 67.0 61.8 7.0 20.1 0.0 2.0

 表2−2の教師も「あてはまる」,「どちらかといえばあてはまる」を合わせた回答数で比較してみると児童生徒と,ほぼ同様の結果が得られた。
 表1−1(4)の結果と同様に両者共,「学習形態の工夫」の数値が高いことから,さらに学習形態を工夫し,学び合いが十分できるよう配慮すべきであることがわかる。また,時間を十分に与え,試行の場を設定することもつまずきを解消するための手だてとして効果的であると思われる。表1−1(2)「作品の見本や作り方の手順などがわかるプリントやビデオ等の利用」については児童生徒がつまずきを解消する方法として「あてはまる」,「どちらかといえばあてはまる」の回答数を合わせると6割以上選択していることから,一人一人の学習のつまずきにおける支援として,有効な教材・教具の工夫が望まれる。
     問題解決的な学習を行う場合について
      表3−1 重視している段階<教師>(%)
項    目
(1)  課題を設定する段階の指導を重視している。
15.0 16.6 52.0 54.3 32.0 27.1 1.0 2.0
(2)  課題を解決するための計画を立てる段階の指導を重視している。
14.0 13.1 65.0 60.8 21.0 26.1 0.0 0.0
(3)  課題を追究する段階の指導を重視している。
18.0 22.6 64.0 62.3 18.0 15.1 0.0 0.0
(4)  まとめる段階の指導を重視している
4.0 10.6 66.0 61.3 30.0 28.1 0.0 0.0
(5)  生活に生かす段階の指導を重視している。
31.0 34.7 55.0 41.7 14.0 23.6 0.0 0.0

 表3−1より,教師が問題解決的な学習を行う場合について指導を重視している段階を「あてはまる」,「どちらかといえばあてはまる」を合わせた回答数で比較してみると小・中教師共「(5)生活に生かす段階」,「(3)課題を追究する段階」が8割程度という結果である「生活に生かす段階」を重視している教師が多いのは,この教科が実践的な態度を育てることをねらいとしているためだと思われる。
      表3−2 学習が難しいと思われる段階<児童生徒>(%)
項    目
(1)  課題を決める段階は難しい。
25.1 32.4 41.9 41.9 28.1 21.4 4.9 4.2
(2)  課題を解決するための計画を立てる段階は難しい。
19.8 23.7 46.3 45.6 30.2 25.8 3.7 4.9
(3)  課題を調べる段階は難しい。
21.2 15.9 36.4 39.9 35.3 37.4 7.1 6.8
(4)  まとめる段階は難しい。
28.3 21.7 37.9 42.5 26.8 29.3 7.1 6.6
(5)  生活に生かす段階は難しい。
21.9 28.0 31.1 38.1 36.7 27.1 10.4 6.8

 表3−2は,児童生徒が問題解決的な学習を行う場合に学習が難しいと思う段階を調査した結果である。「あてはまる」,「どちらかといえばあてはまる」を合わせた回答数で比較してみると児童は「(1)課題を決める段階」,「(4)まとめる段階」,「(2)課題を解決するための計画を立てる段階」がぼぼ同数である。生徒の結果は,「(1)課題を決める段階」,「(5)生活に生かす段階」,「(4)まとめる段階」の順となっている。
      表3−3 指導が難しいと思われる段階<教師>(%)
項    目
(1)  課題を設定する段階の指導が難しい
21.0 28.1 53.0 44.7 24.0 25.1 2.0 1.5
(2)  課題を解決するための計画を立てる段階の指導が難しい。
13.0 20.1 58.0 56.3 29.0 22.1 0.0 1.5
(3)  課題を追究する段階の指導が難しい
13.0 16.6 60.0 50.8 26.0 30.7 1.0 1.5
(4)  まとめる段階の指導が難しい。
3.0 8.0 51.0 52.8 45.0 35.2 1.0 3.5
(5)  生活に生かす段階の指導が難しい。
17.0 21.6 49.0 47.7 31.0 25.6 3.0 4.5

 表3−3は,教師が問題解決的な学習を行う場合について指導が難しいと思われる段階についての結果であるが,「あてはまる」,「どちらかといえばあてはまる」を合わせた回答数で比較してみると小・中教師共,「(1)課題を設定する段階」,「(2)課題を解決するための計画を立てる段階」が7割を越えている。これは,課題を設定する段階がその後の児童生徒の課題解決の成否や生活に生かせるかどうか左右する大切な段階であることを教師は日々の指導で実感しているためと推察される。
     学習したことを家庭生活や学校生活で生かすことについて
      表4 学習したことを家庭生活や学校生活で生かしたか<児童生徒>(%)
項    目 はい いいえ
 学習したことを家庭生活や学校生活で生かしたことがある。 91.4 68.3 8.6 31.7

 「学習したことを家庭生活や学校生活で生かしたか」についての質問に「はい」と回答した割合は,児童91.4%,生徒68.3%であった。児童は9割程度が生活に生かしているのに,生徒は7割弱程度を示している。
     表5 上記の質問で「いいえ」と答えた児童生徒が学習したことを家庭生活や学校生活で生かせない理由について
      表5 学習したことを生かせない理由<児童生徒>(%)
項    目 はい いいえ
(1)  やる気がないので生かせない。
52.2 49.0 34.8 50.3
(2)  何をしたらよいのか分からないので生かせない。
47.8 61.7 34.8 37.6
(3)  学習したことがやりたいときに合わないので生かせない。
69.9 59.1 26.1 40.3
(4)  やる時間がないので生かせない。
43.5 59.1 47.8 40.9
(5)  家族の誰かがやってしまうので生かせない。
30.4 27.5 56.5 71.8
(6)  うまくできないので生かせない。
34.8 58.4 52.2 39.6

 学習したことを家庭生活や学校生活で生かせない理由(表5)として「はい」と回答した児童は,「(3)「学習したことがやりたいときに合わないので」69.9%,「(1)やる気がない」52.2%,「(2)何をしたらよいのか分からない」47.8%という結果であった。生徒は,「(2)何をしたらよいのか分からない」61.7%,「(3)学習したことがやりたいときに合わないので」59.1%,「(4)やる時間がないので」59.1%,「(6)うまくできないので」58.4%という順である。児童生徒共「学習したことがやりたいときに合わないので」「なにをしたらよい」 のか分からない」を「はい」と答えたのは学習課題が自分の生活から発生したものでなく,学習したけれどもその学習内容を生活場面に応用・転移できなかったことも一因と考えられる。また,応用・転移できない理由としては,基礎・基本が十分に身についていないことも考えられる。生徒においては,日常生活が課外活動などで多忙なため「時間がない」の回答が多いのではないかと推測される。今後,家庭だけでなく学校生活でも生かす場を設定することを考えていくべきかと思う。
  (4)  調査のまとめ
     実態調査の結果次のようなことが分かった。
     児童生徒は,自分の学習したい課題で学習すると意欲的に取り組める。また,認め励ますことや学習形態の工夫(グループ学習,ペア学習など)も学習意欲を高める一要因であることが分かった。
     児童生徒は基礎的・基本的な内容を習得する過程でのつまずき解消の手だてとして,第一にグループ学習,ペア学習での学び合い,続いて十分な時間をかけて考えたり試したりすることやつまずきを解消してくれる教材・教具を選択していることが分かった。
     問題解決的な学習を行う場合,教師は「生活に生かす段階」を重視しているが,その指導も難しいと感じている。また,教師,児童生徒とも「課題を設定する段階」の指導や学習が難しいと感じている。
     小学生に比べ中学生は,学習したことを生活に生かしている割合が低い。理由は「なにをしたらよいのか分からないので生かせない」「学習したことがやりたいときに合わない」の回答が多かった。


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