研究主題 生活に生かす力をはぐくむ問題解決的な学習における指導の在り方

 家庭及び技術・家庭の研究のねらい
   家庭及び技術・家庭科の学習指導及び学習にかかわる実態調査を実施し,その結果を踏まえて小学校,中学校ごとに授業研究を行い,生活に生かす力をはぐくむ問題解決的な学習における指導の在り方を究明する。
 
 研究主題に関する基本的な考え方
  (1)  家庭及び技術・家庭科の改善の基本方針から
     社会の変化による家事労働の省力化や社会化に伴い,金銭で物やサービスを購入できるようになった現在,中央教育審議会第一次答申第1部今後の教育の在り方「子供たちの生活の現状」において「疑似体験や間接体験が多くなる一方で,生活体験,自然体験が著しく不足し,家事の時間も極端に少ないという状況がうかがえる」と指摘されているように,子どもたちは,日常に欠かせない衣食住に関する生活体験をする機会が少なくなっているという事が日々の授業実践においても強く感じられる。
 これらの現状を受けて,教育課程審議会の答申において,家庭及び技術・家庭科の改善の基本方針では,「生活に必要な知識と技術の習得」「生活を工夫し創造する能力の育成」「生活をよりよくしようとする意欲と実践的な態度の育成」をより一層重視する観点から改善を図ることが示された。
 上記のような生活体験の十分でない子どもたちに家庭及び技術・家庭で目指す資質・能力の育成を図るには,実践的・体験的な学習を一層重視するとともに,将来にわたって変化し続ける生活に適切に対応していけるような生活に生かす力を育成することのできる問題解決的な学習を充実させていくことが重要であると考える。
  (2)  「生活に生かす力をはぐくむ」について
     「生活に生かす力をはぐくむ」とは,自分の生活の中で直面する様々な問題に気付き,現在学んでいることや今まで学んだ知識と技能及び技術を応用・転移することにより,自分なりに解決方法を探求したり,新しい方法を創造したりでき,現在及びその後,学校,家庭,社会生活の中で生かすことのできる力を育成することととらえる。
 生活に生かす力をはぐくむためには,自分の生活から見いだした問題を自分の考えを働かせ,工夫しながら追究し,生活実践へとつなげることのできる問題解決的な学習の導入が有効であると考える。
 家庭及び技術・家庭科における問題解決的な学習は,まず,子どもが自分を取り巻く身の回りの生活を見つめ,生活を実感し,そこからよりよい生活を目指して問題をもつことから学習が始まる。生活は,一人一人異なるものであり,そこでの生活経験,問題点や興味・関心なども異なっている。その一人一人の違いを大切にして学習課題を設定し,解決の見通しをもち,意欲的に追究していく。そして,追究した学習内容を互いに共有化し,一人一人が学習過程で得た知識や技能及び技術をそれぞれの生活に応じて生かせるようにつなげていく。このような一連のサイクルでの問題解決的な学習を通して,子どもが自分の生活に結びつけて意欲的に個性を発揮しながら繰り返し学ぶことで,基礎的・基本的な内容が習得でき,学びが生活に生かす力となり得ると考える。
 一人一人が学んだ基礎的・基本的な内容を生活に合わせて応用・転移できる力を育成するために,この研究では,家庭及び技術・家庭における問題解決的な学習の学習過程を「生活を見つめる」,「課題をつかむ」,「解決を見通す」,「課題を追究する」,「学びを広げる・深める」,「学びを生活に生かす」と設定し,この学習過程に対応させて次のように視点をとらえた。これらの視点を踏まえて,基礎的・基本的な内容が習得できるよう個に応じた指導を充実させ,研究のねらいに迫りたいと考える。
     生活を見つめ,問題をとらえる視点
     とらえた問題を生活に生かせるような課題として設定する視点
     解決方法を生活と結びつけて計画・立案する視点
     生活との関連を考えた課題の追究となる視点
     学びを生活に生かそうとする意欲を高める視点


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