(2)  高等学校における授業研究
   高等学校における1年目の授業研究は,第1学年において,扱った教材との関連を図り,数やデータを含んだレポートの発表というコミュニケーション活動を設定し,生徒の興味・関心を高め,実践的コミュニケーション能力を育てる学習指導の在り方を究明した。
  @  授業の構想(Lesson 6 Tennis (SPECTRUM ENGLISH COURSET))
     実際のコミュニケーションの場においては,電話やメモなど,様々な場面での数を表す表現の伝達は欠かすことのできないものである。そこで,数字を効果的に使ってテニスの歴史を説明した英文を教科書で学習した後,数を含む言語材料を十分に与え,学習させた後で,実際に数を含んだ英文を生徒に書かせ,発表させる活動を行って,実践的コミュニケーション能力を育てていくという授業の構想を立てた。
  A  授業の手だて及び考察
     生徒一人一人の背景知識(スキーマ)を活用したコミュニケーション活動の工夫
      (ア)  数を表す表現の指導
         まず,教科書で,テニスに関して説明した英文を,数やデータの部分の重要性や効果的な使い方について,考えさせながら読ませ,数の部分を答えとして引き出す質問をするなどの活動をした。さらに,教科書の既習のページで,数を含む箇所を復習させたり,数を含む様々な英文を集めた資料を家庭学習用に配布したりして,多種多様な数の表現について理解を深めさせた。これらの活動により,生徒の数を表す表現に対する苦手意識が弱まり,それらを使って何かを伝えてみたいという意識が自然に芽生える様子が感じられた。
      (イ)  レポートの作成
         生徒は,自分が背景知識(スキーマ)をもち,興味・関心のあるものの中から,レポートのテーマを設定し,それぞれの題材に関して,具体的な数やデータを収集するという作業を行った。この段階では,インターネットが大きな力を発揮した。生徒はそれらの数やデータを織り込んで,各自のテーマを紹介するレポートを書いた。生徒は,英文を書く活動そのものには苦労していたが,自分の興味・関心のあることをクラスメートに伝えたいという思いが強く,前向きな姿勢で取り組んでいた。また,資料収集の段階で,新しい事実を発見したり,理解が深まったりする過程を経たことで,書く材料が増え,より積極的にレポートを書こうとする意欲が高まっていく様子が感じられた。できあがったレポートは提出させ,明らかに不適切な個所は添削してから返却した。
     コミュニケーション活動の形態の工夫
       レポートの発表に関しては,ペアワークで全員ペアワークでのレポート発表の様子に練習させた後,数名の生徒にプレゼンテーションを行わせた。発表を聞く側には,レポートの中にでてくる数に集中させ,ワークシートの中にメモを取らせた。プレゼンテーション終了後,正確に数を聞き取れたかを確認させるため、発表者の原稿をプロジェクターでスクリーンに表示した。この方法は、短時間で、メモの内容を確認させる上では効果的だった。数を聞き取るという明確な目標をもたせたことで,聞き手となった生徒の集中力が増し,数を聞き取る活動を重ねたことで「数を表す表現の聞き取りに自信がもてた。」という声が多かった。
     コミュニケーション能力の評価の工夫
       評価については,自分がどれだけプレゼンテーションを正確に聞き取れたか,発表者のレポートと比較して自分のレポートがどの程度うまく書けていたかという2点について,自己評価させた。数を表す表現の聞き取りに関しては、約70%の生徒が,「ほぼ正確にメモをとれた。」と答え,英文の聞き取りにおける一応の目標は達成できた。自分のレポートに関する評価としては,「文法に自信はないが,楽しく書けた。」,「もっと多くの内容を書きたかったが,英文を作るのは難しかった。」など、苦労しながらも,進んで取り組んだ様子がうかがえ,次の活動につながりそうな可能性が感じられた。
  B  まとめと今後の課題
     今回の授業を通して確認できたのは,まず第一に,レポートのテーマを興味や関心をもっているものの中から学習者自身が選び、進んで自分の思いや考えを伝達しようという動機が生じる活動を設定し,生徒の背景知識(スキーマ)を積極的に引きだすことが重要であるという点である。第二に,実際のコミュニケーションで必要となることが予測される言語材料を,あらかじめ十分に学習させ,到達目標を明確にして,達成感が感じられるコミュニケーション活動を行っていくことが生徒の英語に対する興味・関心を高める上で,有効であるということである。生徒自らが積極的に自己表現しようとする題材を教科書などの内容と関連付けながら,いかに見出し,継続的に活動していくかが今後の課題である。
 高等学校における2年目の授業研究は,次の通りである。


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