研究主題 生徒の興味・関心を高め,実践的コミュニケーション能力を育てる学習指導の在り方

 外国語(英語)科の研究のねらい
   実践的コミュニケーション能力を育成するための生徒の興味・関心及びコミュニケーション活動の指導に関する実態調査を実施し,その結果を踏まえて授業研究を行い,生徒の興味・関心を高め,実践的コミュニケーション能力を育てる学習指導の在り方を明らかにする。
 
 研究主題に関する基本的な考え方
  (1)  「実践的コミュニケーション能力」とは
     「実践的コミュニケーション能力」について,中学校学習指導要領(平成10年12月)解説−外国語編−では,「単に外国語の文法規則や語彙などについての知識をもっているということだけではなく,実際のコミュニケーションを目的として外国語を運用することができる能力のことである。」とされ,高等学校学習指導要領解説外国語編英語編(平成11年12月)では,「外国語の音声や文字を使って実際にコミュニケーションを図ることができる能力である。すなわち,外国語を使って,情報や相手の意向などを理解したり自分の考えなどを表現したりして,通じ合うことができる能力である。」とされている。前回の平成元年学習指導要領の改定においても,中学校,高等学校それぞれに,「外国語で積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度を育てる」ということが目標として掲げられ,コミュニケーション能力を育成する方向が明確に示された。今回の改定では,あえて「実践的」という語を加えて,その方針を一層進め,「実践的コミュニケーション能力を養う」ことを強調している。特に,中学校においては,音声によるコミュニケーション能力の育成に重点がおかれた。本研究においては,中学校,高等学校それぞれの学習指導要領解説に示された「実践的コミュニケーション能力」についての考え方に基づき研究を進めた。
  (2)  生徒の興味・関心と「実践的コミュニケーション能力」との関連について
     英語に対する,または英語の学習に対する興味・関心のもち方,もち具合は生徒個々によって違いが見られる。流暢に英語が話せるようになりたい,字幕なしで映画の台詞が聞き取れるようになりたい,英語の雑誌が読めるようになりたい,英語で手紙が書けるようになりたい,流暢な英語でなくてもいいから, 自分の思いを英語で表現できるように ちょうなりたいと思う生徒もいると思われる。英語の授業をとおして,生徒一人一人の,これらの興味・関心を高めていくことが,「実践的コミュニケーション能力」の育成につながると本研究では考える。
 コミュニケーション能力はコミュニケーションを実際に行なう活動の中で育成されるものであるから,英語の授業で行なわれるコミュニケーション活動も,実際の,または,実際の言語の使用場面を踏まえた活動の中で展開される必要があると考えられる。これらのことを踏まえた上で,本研究においては,生徒一人一人がもつ背景知識(スキーマ)の活用をコミュニケーション活動の拠りどころとした。英語を形づくる実質的な素材である言語材料の知識をもっていることは,コミュニケーションを図る際には必要なことであるが,実際のコミュニケーションは,相手と話をするための内容があって初めて成立すると考えるからである。この「内容」の大切さに関して上智大学の吉田研作教授は,「教材は,教師のみが与えるものではなく,生徒が真に興味を持ち,皆とシェアしたいと思ったものを積極的に取り入れていかなければならない。」と述べている。背景知識(スキーマ)にささえられながら,英語に対する興味・関心が高まっていく中でのコミュニケーション活動をとおして,生徒一人一人の「実践的コミュニケーション能力」は育まれていき,また逆に,「実践的コミュニケーション能力」が育まれる中で,生徒一人一人の背景知識(スキーマ)そのものが広がり,英語に対する興味・関心が高まっていくという相乗効果があると考える。
 先に述べた,この背景知識(スキーマ)について,筑波大学の卯城祐司助教授は,「『知っていること・知らないこと』という区分の他に,『より親しみを感じること・感じないこと』という分け方もでき,そうすると,集団を指導する際に,必ずしも全員の興味・関心が完全に一致していなくても,仲間のスキーマを分かち合ったり,自分自身の関連するスキーマを活性化させることによって,当初は全く未知のテーマと思われていたものも,各自とつながりがもてるようになる。」と述べている。本研究においては,卯城助教授の背景知識(スキーマ)に対する考え方に基づき研究を進めることにした。
  (3)  生徒の興味・関心を高め,実践的コミュニケーション能力を育てる学習活動の工夫
     中学校学習指導要領(平成10年12月)外国語では,指導計画の作成と内容の取扱いにおいて,「生徒の実態や教材の内容に応じて,コンピュータや情報通信ネットワーク,教育機器などの有効活用やネイティブ・スピーカーなどの協力を得ることなどに留意すること。また,学習形態などを工夫し,ペアワーク,グループワークなど適宜取り入れること。」とある。高等学校学習指導要領(平成11年12月)外国語では,各科目にわたる指導計画の作成と内容の取り扱いに,「各科目の指導に当たっては,指導方法や指導体制を工夫し,ティーム・ティーチングやペア・ワーク,グループワークなどを適宜取り入れたり,視聴覚教材や,LL,コンピュータ,情報通信ネットワークなどを指導に生かしたりすること。また,ネイティブ・スピーカーなどの協力を得て行う授業を積極的に取り入れ,生徒のコミュニケーション能力を育成するとともに,国際理解を深めるようにする。」とある。
 本研究においては,生徒の英語に対する興味・関心を高めるこれらの学習活動の工夫を,前述した生徒の背景知識(スキーマ)を活用したコミュニケーション活動に,生徒一人一人が進んで関わっていくという視点から有機的に関連付けていきたい。つまり,『活動』である以上,自らの関わり具合が高まるほど,活動に対する期待感,活動中の充実感,活動後の達成感が高まるはずであると考えるからである。さらに,自らの関わり具合が高ければ,生徒は,行なった活動に対する,自分自身による,友達同士による,教師・ALTによる評価を十分に活かし,次の活動に対する意欲を高めることができると考える。題材・教材に対する内面的な関わりを高めるために,コミュニケーション活動に現実感や臨場感を与える視聴覚教材やコンピュータなどの活用を,英語に対する時間的なかかわりを高めるために,グループワークなどの工夫を,適宜,生徒の背景知識(スキーマ)を活用したコミュニケーション活動に有機的に関連させながら,本研究の考察を進めることにした。


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