研究のまとめ
   算数・数学科では,平成13・14年度の二年間にわたり,「学ぶ楽しさや充実感を味わう算数・数学科学習の指導の在り方」, という研究主題を設定し実践的な研究に取り組んできた。本研究主題に関して,理論的な研究を進めるとともに,算数・数学科における「学ぶ楽しさや充実感」を味わうことについて,児童生徒及び教師を対象として実態調査を実施し,理論的な研究,実態調査を踏まえて小学校,中学校,高等学校ごとに授業研究を行った。
 小学校では,児童が自分らしい解き方・考え方などの個性を発揮し,互いに学び合いながら算数のよさに気付いていけるようにすることが大切であると考え,児童一人一人が目的意識をもって進んで課題解決に取り組めるような指導法の工夫改善に着目した。具体的には,「学習課題の工夫」,「解決の過程で互いの考えを話し合える場の設定」を主なる手だてとした。児童が問題の内容や意味が分かり,算数的活動を通して新しい見方や考え方に気付いたり,新しい知識が得られたり,算数のよさを感得する過程を通して「学ぶ楽しさや充実感」を味わうことができた。特に,児童が課題に対するあるいは課題解決に対する知的な好奇心をもつということや,算数的活動を通して算数のよさを児童なりに感じ取ることが,「学ぶ楽しさや充実感」を味わうことに大きくかかわるということが分かった。
 中学校では,生徒が数学のよさ,数学的な見方や考え方,数学を学ぶことの意義などを感じ取る活動としての数学的活動に視点を置き,指導法の工夫改善に取り組んだ。具体的には,「生徒の多様な考え方や取り組みを生かす活動」,「具体的な操作を試みたりするなどして,数学を創り上げていく活動」を学習過程に位置付けることとした。生徒は解決すべき問題の意味をとらえ,解決への見通しをもって試行錯誤しながら問題が解決できたことや問題解決の過程で,あるいは問題解決の結果から自分にとって新たな見方・考え方に気付いたり,見いだしたり,自分なりに知識等を再構成していくことを通して,「学ぶ楽しさや充実感」を味わうことができた。特に,探究的な数学的活動を通して,数学のもつ有用性やよさに触れたり論理的に考えたり,規則性などを発見したりすることが,「学ぶ楽しさや充実感」を味わうことにつながるということが分かった。
 高等学校では,小学校,中学校,高等学校と校種が変わるにつれ,児童生徒の算数・数学嫌いが徐々に増加しているという現状を踏まえ,どのような指導の工夫・改善が必要であるかを考えた。今回の研究においては,「生徒がじっくり考えることができる時間や場」,「追究的な活動や創意工夫しながら問題解決に取り組む活動」を位置付け,本研究主題に迫れるように授業研究に取り組んだ。その結果,生徒は自分がつまずいているところが分かったり,自分の目的意識のもと,追究的活動に取り組んだり,主体的に数学を学ぶことにかかわったりすることが,「学ぶ楽しさや充実感」を味わうことにつながるということが分かった。
 また,特に小中学校では,児童生徒が基礎的・基本的な内容を十分に身に付けていることが,「学ぶ楽しさや充実感」を味わうことに大きくかかわるということを感じた。個性の伸長を目指す学習指導をさらに充実させるために,例えば少人数による学習指導等に着目したい。  児童生徒が,主体的に算数・数学,を学ぶことにかかわり,「学ぶ楽しさや充実感」を味わい,学ぶことへの関心や意欲を高めるようにしていきたいということを基盤に置いて,二年間にわたり研究を進めてきた。今後は,本研究を踏まえ,児童生徒が自ら考え,学ぶ意欲をもち続けながら算数・数学の学習に臨み,学んだ力をどう発揮していくかということについて,「基礎・基本」,「学力」という視点からも,さらに追究していきたいと考える。


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