【授業研究2】  高等学校工業「機械実習」において生徒一人一人の興味・関心を生かした学習指導の在り方

(1)  授業研究のねらい
   「機械実習」は,専門科目の中の一つの科目で,機械分野の基礎的な技術を実際の作業を通して総合的に習得させ,技術革新に主体的に対応できることを目標とする科目である。
 本研究では,生徒一人一人の興味・関心を生かした学習指導の在り方を探るために,生徒が興味をもちやすい実習の項目を設定する。さらに実習等の実際的・体験的な学習を通して生徒自身の自発的・創造的なものづくりをする力を育むことについて研究する。
 
(2)  生徒一人一人の興味・関心を生かすための手立て
   生徒に興味・関心をもたせるための工夫
     1学年と2学年においては,機械科としての基礎的な技術を実際の作業を通して身に付けさせるために,生徒全員が同じ内容を学習する。そして3学年において実習を2種類のコースに分ける。コースに分けるときにガイダンスを開き,生徒の希望を聞き,コース分けを行う。このとき一つのコースの人数は,内容,施設設備等も考慮しながら20人以下となるように調整し,学習意欲が高められるようにする。
   生徒の理解を深めるための工夫
     3学年の機械実習では,実習のコース制を実施し,ものづくりを中心とした生産技術コースと,自動車・制御関係を中心としたメカトロコースに分けて進める。機械実習に入る前に,ガイダンスを開き生徒の希望を聞きながら,コースごとに班分けを行う。
 生産技術コースにおいては,作品の図面の他にテキストを作成し,作業内容を分かりやすくするとともに,毎時間の作業内容をテキストに記録させる。
   生徒に対する評価方法の工夫
     「授業態度や意欲」「出席状況」を考慮しながらも,作業の区切りによって自己評価,相互評価を取り入れる。
 
(3)  授業の実践
   コース別における実習内容(機械科3年1組)
   メカトロコース(11名)
   生産技術コース(15名)
 
   年間指導計画(生産技術コース)
 ※ スターリングエンジンの製作(一人1台)
 
   学習指導案   実施 平成14年7月4日(木) 1,2,3時限
 
(4)  授業の結果と考察
   授業効果を高めるための工夫
    (ア)  授業時間は前期に週2回6時間(3単位)を利用して実施したので,集中的に,効率よく授業を展開することができた。
    (イ)  指導する教師の人数は各コース3人ずつの1クラス6人で,実習のコースごとに担当者を決めて実施したので,分かりやすい指導をすることができた。
    (ウ)  授業を実施するときは,各コースを2班に分け,それぞれの班に1人から2人の教師で指導し,きめ細かい指導ができるように工夫した。
   生徒に興味・関心を持たせるための工夫
    (ア)  コースを決定するとき,生徒一人一人の興味と関心を重要視するためにガイダンスを実施するとともに,できるだけ生徒の希望を優先させた。ガイダンスにおいては,1クラスを2班に分けて,なるべく少人数で実施し,実際に実習で使用する施設,設備を見学させて,生徒が各コース内容を理解できるようにした。
    (イ)  各コースの中でさらに2班に分け,少人数に分けた。教師も各コースに3名ずつ配置して,生徒の状況に応じて進行状況が遅れている生徒に対してはサポートできるようにした。
    (ウ)  生産技術コースにおいては,生徒がものづくりに対して興味・関心をもって行えるようにするため,金属加工の作業を中心とした。生徒たちには,物をつくる喜びと完成したときの達成感を経験させるために,製作する物は,材料の切り出しから部品の製作,組立完成までを一貫して行い,完成後は「動くもの」ということで,スターリングエンジンの製作とした。
    (エ)  本校で作成したテキストを利用しながら,生徒たちに説明をするようにした。図面だけでは分かりにくいのでテキストには写真を多く配置し,製作する部品の形状等をなるべく分かりやすくした。
    (オ)  授業のはじめに,その時間の作業内容を図面を使いながら説明し,それをテキストに記入させるようにした。さらに授業の最後に,使用した機械,工具,切削条件も記入させた。
   学習評価の工夫
    (ア)  テキストに加工方法,加工条件などを記入させることにより,その時間における自分の作業内容の確認,理解ができた。
    (イ)  実習への取り組み方,作品の完成度などを,生徒に自己評価させるばかりでなく生徒同士に相互評価をさせた。
    資料1 生徒の自己評価票(中間)
 
    資料2 生徒の自己評価票(最終)
 
(5)  授業研究の成果と課題
   研究の成果
    (ア)  実習のコース制を実施し,ものづくりを中心とした生産技術コースと,自動車・制御関係を中心としたメカトロコースに分けた。コースを決めるときに,ガイダンスを開き生徒の希望を聞きながらコースごとに班分けを行ったので,生徒たちは興味をもつとともに意欲的に取り組む姿勢がみられた。
    (イ)  生産技術コースにおいては,作品の図面の他にテキストを作成し,作業内容を分かりやすくするとともに,毎時間の作業内容をテキストに記録させることにより,内容の理解に役に立った。
    (ウ)  各コースを2つの班に分け,少人数のグループで実施できたので,生徒一人一人の興味・関心を引き出すことができたばかりでなく,教師は細かい部分における指導が可能であった。
    (エ)  相互評価を取り入れることにより,お互いを客観的に見るようになり,学習態度に真剣な態度が出たばかりでなく,生徒間で学び合うといった協力関係がみられるようになった。
   今後の課題
    (ア)  一つのコースの人数は,内容,施設設備等も考慮しながら20人以下となるように調整しなければならず,今年は生徒の希望だけで決める事ができたが,20人の定数を超えた場合の調整が難しいと思われる。
    (イ)  2学年までに習得した技術を中心として,製作実習をするわけであるが,生徒によって習得の程度が異なったり欠席をしたりして同時進行で進めていくのは困難なので,それらの生徒に個別に対応する工夫が必要である。
    (ウ)  まだ,始めたばかりの新しい実習なので,部品の加工技術,生徒に対する指導方法を教師側が研修していく必要がある。


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