国語科の学習及び学習指導に関する実態調査
   国語科の学習及び学習指導にかかわる意識の実態を,本県の小学校,中学校及び高等学校の児童生徒と国語科を担当する教師を対象に,質問紙により調査した。
  (1)  調査の対象
   
 児童生徒…  校種別に学校規模や地域性を考慮して調査校を抽出した。小学校については8校の第5学年,中学校については5校の第2学年,高等学校については10校の第2学年で実態調査を行った。回答者数は,小学校児童219人,中学校生徒339人,高等学校生徒375人の計933人である。
 教師…  県内の公立小学校100校,公立中学校100校,公立全日制高等学校50校を無作為に抽出した。小学校については各校1人,中学校については国語科担当者各校1人,高等学校については国語科担当者各校2人を対象者とした。
回答者数は,小学校100人,中学校100人,高等学校100人の300人である。
  (2)  実施時期  平成13年9月3日(月)から9月7日(金)まで
  (3)  調査項目,調査結果及び分析
   
  •  国語科学習に関する調査項目数は,児童生徒と教師に対してそれぞれ5項目とした。
  •  調査項目ア〜オについての質問内容は,以下に示す。
  •  表中の数値は各問の,回答者数に対する回答数の割合(%)である。
  •  児童生徒用の質問内容は,中学生用のものを掲載する。
     基礎的・基本的な国語の力について(表1,表2)
     
《生徒》質問文

 次にあげた学習や活動で,困っていることを二つ選びその記号を回答欄に記入してください。
   漢字を読んだり書いたりすること  言葉の意味や使い方に関すること
 場面に応じて話したり聞いたりすること  目的に応じて文章を書くこと
 文学的文章を読み取ること  説明的文章を読み取ること
 その他    
 
《教師》質問文

 児童生徒に基礎的・基本的な国語の力を身に付けさせるために,力を入れていることはどんなことですか。あてはまるものを二つ選び,記号で回答欄に記入してください。
   漢字を読んだり書いたりすること  言語生活における言葉に関すること(漢字を除く)
 適切に話したり聞いたりすること  状況に応じて文章を書くこと
 文学的文章を読み取ること  説明的文章を読み取ること
 その他    
      表1 学習や活動で困っていること  (%)《児童生徒》
選択肢 (二つ選択)
ア 漢字を読んだり書いたりすること 28.8 28.6 21.1
イ 言葉の意味や使い方に関すること 39.3 38.6 30.7
ウ 場面に応じて話したり聞いたりすること 29.7 13.9 12.5
エ 目的に応じて文章を書くこと 48.4 41.0 39.2
オ 文学的文章を読み取ること 21.0 40.4 38.9
カ 説明的文章を読み取ること 31.5 33.9 43.5
キ その他 1.4 2.4 6.7


表2 基礎的・基本的な国語の力の育成のために(%)《教師》
選択肢 (二つ選択)
ア 漢字を読んだり書いたりすること 61.0 52.0 63.0
イ 言葉の意味や使い方に関すること 23.0 24.0 36.0
ウ 場面に応じて話したり聞いたりすること 61.0 47.0 25.0
エ 目的に応じて文章を書くこと 35.0 43.0 25.0
オ 文学的文章を読み取ること 10.0 8.0 10.0
カ 説明的文章を読み取ること 6.0 22.0 34.0
キ その他 2.0 4.0 7.0
       児童生徒は,目的に応じて文章を書くことを学習上困っていることとしている割合が高い。授業で「何をどのように書けばよいのか分からない」という児童生徒の声があることから,教師は比較的指導に力を入れているのだが,「書くこと」の指導において十分な成果を上げることができていないと考えられる。また,児童生徒は文学的文章や説明的文章を読み取ることを学習上困っていることとして挙げている割合が比較的高い。「読むこと」の学習を苦手としている傾向があり,一方で,中学校,高等学校の教師は,説明的な文章を読み取ることに比較的力を入れているのだが,児童生徒は論理的に理解することや思考することを苦手としていることが分かる。
 児童生徒が学習上困っていることとして言葉の意味や使い方に関することを挙げている割合も比較的高い。語彙力の低下が言われて久しいが,教師は言葉に関する学習指導に力を入れる必要があると考える。
 児童生徒は困っていることとして場面に応じて話したり聞いたりすることを挙げる割合は比較的低い。しかし,一方で教師は「話すこと・聞くこと」領域の指導に力を入れている。これは,自分の考えを言葉で伝え合うために「話すこと・聞くこと」の力が重要であるという認識が,児童生徒の中で十分に定着していないためであると考えられる。教師は,言葉で伝え合うことの大切さも含めて指導する必要があると考える。
 小学校,中学校,高等学校とも教師は,基礎的・基本的な国語の力として漢字を読んだり書いたりすることの指導に力を入れているという割合が高い。これは,日常生活の中で文章を書いたり読んだりするために漢字の力が重要であるため指導に時間をかけているが,十分に児童生徒の漢字の力が定着しないという実態を反映したものと考えられる。漢字指導では,漢字の使い方・使われ方までの理解を十分に進める必要がある。また,小学校,中学校の教師は「話すこと・聞くこと」領域の指導に力を入れているという割合が高い。前回の学習指導要領で音声言語の力を育てることが強調されたため,教師の音声言語指導に対する意識が高まったためと考えられる。
     主体的な学習を進める手だてについて(表3,表4)
     
《生徒》質問文

 国語の学習活動をするとき,どんな援助があれば自分から進んで学習することができますか。あてはまるものを二つ選び,その記号を回答欄に記入してください。
  ア 先生が示してくれる学習計画
イ プリントなど先生が与えてくれる教材
ウ 課題ごとのコース別学習を行うこと
エ 何人かの先生による授業(ティーム・ティーチングなど)
オ 友達と相談したり教えあったりすること
カ 他学級,他学年,他学校,家庭,地域などとの交流学習を行うこと
キ その他
 
《教師》質問文

 児童生徒が主体的に学習するために,力を入れていることはどんなことですか。あてはまるものを二つ選び,記号で回答欄に記入してください。
  ア 学習指導計画を工夫すること
イ 児童生徒の興味・関心を引き出す教材を工夫すること
ウ 類似した課題ごとのコース別学習を行うこと
エ 複数の指導者による授業や小人数の授業を行うこと
オ 児童生徒同士の相互学習を行うこと
カ 他学級,他学年,他学校,家庭,地域などとの交流学習を行うこと
キ その他
      表3 自分から進んで学習すること  (%)《児童生徒》
選択肢 (二つ選択)
ア 先生が示してくれる学習計画 10.1 27.7 19.2
イ プリントなど先生が与えてくれる教材 34.3 45.7 59.5
ウ 課題ごとのコース別学習を行うこと 39.7 32.7 30.7
エ 何人かの先生による授業 16.4 10.3 8.8
オ 友達と相談したり教えあったりすること 65.3 68.7 54.1
カ 他学級,他学年などとの交流学習を行うこと 16.9 11.8 10.4
キ その他 1.4 1.4 3.7


表4 主体的に学習するために(%)《教師》
選択肢 (二つ選択)
ア 学習指導計画を工夫すること 53.0 48.0 79.0
イ 興味・関心を引き出す教材を工夫すること 73.0 67.0 79.0
ウ 課題ごとのコース別学習を行うこと 22.0 19.0 6.0
エ 複数の指導者や小人数の授業を行うこと 8.0 5.0 7.0
オ 児童生徒同士の相互学習を行うこと 36.0 60.0 22.0
カ 他学級,他学年などとの交流学習を行うこと 6.0 0.0 3.0
キ その他 0.0 1.0 4.0
       小学校,中学校,高等学校とも児童生徒は,自分から進んで学習する際に友達と相談したり教え合ったりすることが必要であることを挙げる割合が高い。また,課題ごとのコース別学習を挙げる割合が比較的高いことから,課題ごとのグループ学習により自分から進んで学習することができると考えていることが分かる。しかし,グループ学習では友達に教えてもらうことに頼ってしまう生徒もいることから,一人一人の学習を成立させるためには,指導者は相互学習の活用の仕方を工夫することが大切なことと考える。さらに,プリントなど先生が与えてくれる教材により自分から学習を進められるという割合が比較的高い。課題を考えるプリントや学習の手引きなどで,教師は児童生徒の理解や思考を促すように工夫する必要がある。
 小学校,中学校,高等学校とも教師は,児童生徒が主体的に学習するために学習指導計画を工夫することと,興味・関心を引き出す材料を工夫することに力を入れている割合が高い。学習過程の中で児童生徒主体の学習を進める時間を確保したり,具体的な学習活動において教材や学習の場を工夫したりと,児童生徒の主体性を引き出す取り組みが行われていることが分かる。興味・関心を引き出すことを考えると同時に,教師はその単元や教材で何を指導するのかという指導内容の全体像をしっかりと把握しておくことを忘れてはならない。小学校と中学校の教師は,課題ごとのコース別学習に力を入れている割合が比較的高いが,高等学校の教師は割合が低い。このことと,小学校と中学校の教師が児童生徒同士の相互学習を行うことに力を入れている割合が比較的高いこととを考え合わせると,小学校と中学校の授業は,複線型の課題解決学習やグループ学習が比較的多く取り入れられているが,高等学校の授業は一斉授業になりやすいということを表していると考えられ,授業改善の一つの視点ととらえことができる。
     一人一人を伸ばすための評価の工夫(やる気の出る評価)について(表5,表6)
     
《生徒》質問文

 国語の学習で,あなたはどのような評価をしたりされたりすると,やる気が出ますか。あてはまるものを二つ選びその記号を回答欄に記入してください。
   授業中に自己評価をすること
 友達と相互評価をすること
 これまでの学習の成果を先生が知らせてくれること
 先生が学期末の「通知票」によって評価をしてくれること
 何回か続けて自己評価や相互評価をすること
 先生が励ましの言葉をかけてくれること
 その他
 
《教師》質問文

 児童生徒一人一人のよさや可能性を伸ばすことを考えて,どのように評価のための実践をしていますか。あてはまるものを二つ選び,記号で回答欄に記入してください。
   児童生徒の自己評価を充実させること
 児童生徒同士の相互評価を充実させること
 評価に関する個人ごとの学習記録を活用すること
 児童生徒のよさや学習の成果を認めたり教師の評価を充実させたりすること
 学習のどの段階でどのように評価するかを計画すること
 次の学習への意欲が高まるように言葉かけなどによる評価をすること
 その他
      表5 やる気が出る評価  (%)《児童生徒》
選択肢 (二つ選択)
ア 授業中に自己評価をすること 41.1 16.8 16.3
イ 友達と相互評価をすること 42.0 29.8 25.9
ウ 学習の成果を先生が知らせてくれること 43.4 47.2 48.3
エ 「通知票」によって評価をしてくれること 49.3 46.3 38.1
オ 何回か続けて自己評価や相互評価をすること 24.2 18.3 22.1
カ 先生が励ましの言葉をかけてくれること 24.2 37.2 33.6
キ その他 1.8 2.4 5.3


表6 評価のための実践  (%)《教師》
選択肢 (二つ選択)
ア 児童生徒の自己評価を充実させること 26.0 34.0 20.0
イ 児童生徒同士の相互評価を充実させること 27.0 33.0 9.0
ウ 個人ごとの学習記録を活用すること 44.0 29.0 25.0
エ 教師の評価を充実させたりすること 54.0 59.0 63.0
オ 評価の時期や方法を計画すること 11.0 14.0 16.0
カ 言葉かけなどによる評価をすること 36.0 31.0 64.0
キ その他 0.0 0.0 3.0
       児童生徒は,やる気の出る評価として,学習の成果を先生が知らせてくれることや先生がいわゆる「通知票」によって評価してくれること,先生が励ましの言葉をかけてくれることを挙げる割合が比較的高い。また,小学校の児童は授業中に自己評価をすることや友達と相互評価をすることがやる気の出る評価として挙げる割合も比較的高いが,中学校と高等学校の生徒は,やる気の出る評価として自己評価や相互評価は,あまり高い割合を示していない。このことは,児童生徒は「振り返りカード」などで行う記号や点数による評価だけではなく,教師による評定や実際の生の言葉を期待していることが分かる。中学校と高等学校の生徒による自己評価と相互評価については,生徒が自分自身を的確に評価し学習意欲を高めることができるように改善する必要があると考える。
 教師は児童生徒一人一人のよさや可能性をのばすために,評価の実践として教師の評価を充実させたり言葉かけなどによる評価を充実させたりしている割合が高い。評価は教師が行うという基本的な姿勢が表れていると思われる。言葉かけなどによる評価については,小学校と中学校の教師より高等学校の教師の方が実践している割合が高いが,生徒同士の相互評価を実践している割合は低い。これは,生徒同士の評価にあまり信頼性を置かずに教師自らの評価を重視しているものと考えられる。また,この相互評価や児童生徒の自己評価を充実させることについては,割合は,授業で多く実践されているという現実にもかかわらず比較的高いという程度である。このことは,「振り返りカード」などによる自己評価や相互評価について,評価の信頼性という点で疑問を感じている教師が多くなっていることと考えられる。しかし,何をどのように評価するのか,自分の中で以前と比べてどう変わったのかという観点を明確にもたせることで,自己評価や相互評価を学習の成果を上げるための有効な評価とすることができると考える。また,評価に関する個人ごとの学習記録を活用することを実践している教師の割合はあまり高くないが,これからの評価方法である絶対評価を考えると,児童生徒の学習記録を積み重ねて個人カルテを作成し絶対評価を実施していくことが大切であると考える。その際に,評価をする時期や方法を計画する,評価計画を作成することも重要である。
     学習の場面で何を意識しているかについて(表7,表8)
     
《生徒》質問文

 国語の授業で,「調べたことを発表する」という学習活動の場面では,あなたは次の中のどのようなことに特に力を入れて学習しますか。あてはまるものを二つ選び,その記号を回答欄に記入してください。
  ア 何のために調べたことを発表するのか,ということ
イ 誰に対して発表するのか,伝えるのか,ということ
ウ どのような場面で発表するのか,ということ
エ どのように調べたり発表したりするのか,ということ
オ 調べてから発表するまでの様子や成果を振り返り評価すること
カ 特に意識しない
キ その他
 
《教師》質問文

 国語の授業で,「調べたことを発表する」という学習活動の場面では,あなたは次の中のどのようなことに特に力を入れて指導しますか。あてはまるものを二つ選び,記号で回答欄に記入してください。
  ア 何のために調べたことを発表するのか,ということ
イ 誰に対して発表するのか,伝えるのか,ということ
ウ どのような場面で発表するのか,ということ
エ どのように調べたり発表したりするのか,ということ
オ 児童生徒が自らの学習過程や成果を振り返り評価すること
カ 特に意識しない
キ その他
      表7 目的意識など学習での意識  (%)《児童生徒》
選択肢 (二つ選択)
ア 何のために調べ発表するのか,ということ 23.3 43.4 43.5
イ 誰に対して伝えるのか,ということ 26.5 20.1 20.8
ウ どのような場面で発表するのか,ということ 25.1 15.9 10.7
エ どのように調べ発表するのか,ということ 58.0 61.4 57.6
オ 学習の様子や成果を振り返り評価すること 28.8 19.8 17.9
カ 特に意識しない 23.7 31.9 33.3
キ その他 0.9 0.9 4.3


表8 目的意識など学習での意識  (%)《教師》
選択肢 (二つ選択)
ア 何のために調べ発表するのか,ということ 43.0 42.0 42.0
イ 誰に対して伝えるのか,ということ 61.0 54.0 31.0
ウ どのような場面で発表するのか,ということ 6.0 13.0 8.0
エ どのように調べ発表するのか,ということ 67.0 70.0 74.0
オ 学習過程や成果を振り返り評価すること 18.0 18.0 32.0
カ 特に意識しない 1.0 1.0 8.0
キ その他 1.0 2.0 4.0
       児童生徒は,どのように調べたり発表したりするのかということに力を入れて学習する割合が高い。教師と同じように学習の方法を強く意識しながら学習を進めていることが分かる。しかし,誰に対して発表するのか,伝えるのかという相手意識をあまりもっていないという実態が分かる。言語の活動にある「伝える」という機能を考えると,それは相手があって成立するものであるから,今後児童生徒に意識させるべき重要なことであると考える。
 教師は,「調べたことを発表する」という学習活動の場面で,どのように調べたり発表したりするのかということに力を入れて指導する割合が高く,何のために調べたことを発表するのかということの割合も比較的高い。また,小学校と中学校の教師は,誰に対して発表するのか,伝えるのかということの割合も高い。学習指導場面で,教師は言語活動の方法意識や目的意識,相手意識を強調しているということが分かる。さらに,どのような場面で発表するのかということ(場面意識)や,児童生徒が自らの学習過程や成果を振り返り評価すること(評価意識)についても力を入れて指導する必要がある。場面意識は相手意識にも通じることから意識化させることが大切であり,いつ,何を,どのように評価するのかという計画を児童生徒に示し,児童生徒が自分の力を把握しながら学習を進められるようにすることも必要である。
     指導上必要なこと(学習上望んでいること)について(表9,表10)
     
《生徒》質問文

 国語の学習で,あなたが望んでいることはどんなことですか。あてはまるものを二つ選び,その記号を回答欄に記入してください。
   個別に学習するための時間が十分あること
 複数の先生による授業が多くなること
 自分にあった学習方法がはっきりすること
 授業での学習の進め方に見通しがもてること
 学習を進めるために必要な図書室の本やインターネットなど,教材・教具の種類や量がたくさんあること
 学習の進み具合を先生がほめてくれること
 その他
 
《教師》質問文

 児童生徒一人一人のよさや可能性を伸ばす国語科学習指導を進める上で,必要なことはどんなことですか。あてはまるものを二つ選び,記号で回答欄に記入してください。
   一人一人の学習状況を把握するための時間が十分にあること
 一人一人に応じた学習指導を進めるために指導者が複数いること
 児童生徒一人一人に応じた学習指導のために何を教えたらよいのかがはっきりすること
 児童生徒一人一人に応じた学習指導を位置付けた学習指導計画を明確に作成できること
 児童生徒一人一人に応じた学習指導を進めるために,教材・教具が質・量ともに十分にあること
 児童生徒一人一人に応じた学習指導を進めるための評価方法がはっきりすること
 その他
      表9 学習上望んでいること  (%)《児童生徒》
選択肢 (二つ選択)
ア 学習状況把握のための時間が十分にあること 21.0 24.8 29.9
イ 学習指導を進めるために指導者が複数いること 16.9 7.4 6.4
ウ 何を教えたらよいのかがはっきりすること 48.4 72.0 70.9
エ 学習指導計画を明確に作成できること 24.7 34.5 36.5
オ 教材・教具が質・量ともに十分にあること 70.3 49.3 35.2
カ 評価方法がはっきりすること 17.4 7.7 5.1
キ その他 1.4 1.8 5.1


表10 個を伸ばすために指導上必要なこと(%)《教師》
選択肢 (二つ選択)
ア 個別に学習するための時間が十分あること 54.0 40.0 56.0
イ 複数の先生による授業が多くなること 32.0 37.0 27.0
ウ 自分にあった学習方法がはっきりすること 44.0 49.0 48.0
エ 授業での学習の進め方に見通しがもてること 20.0 28.0 30.0
オ 教材・教具の種類や量がたくさんあること 34.0 24.0 28.0
カ 学習の進み具合を先生がほめてくれること 13.0 21.0 8.0
キ その他 1.0 1.0 3.0
       児童生徒は,学習する上で自分にあった学習方法がはっきりすることを望む割合が比較的高く,中学校と高等学校の生徒については特に高い。これは,学習方法について戸惑っているということであり,教師は児童生徒の要望に応えられるよう的確に助言しなければならない。同時に,児童生徒自身にも,学習状況を客観的に把握し学習方法を見いだす能力が求められるであろう。
 教師は,児童生徒一人一人のよさや可能性を伸ばすために,一人一人の学習状況を把握するための時間が十分にあることや一人一人に応じた学習指導のために何を教えたらよいのかがはっきりすることを必要とする割合が比較的高い。一人一人のよさや可能性を伸ばすために,今後学習の個別化と個性化を進め,さらに一人一人の学習状況を把握して,向上していることや力を入れなければならないことを明確にしていくことが必要であると考える。また,学習状況の違う一人一人に対して,何を指導すれば児童生徒はさらに伸びるのかを,教師は判断しなければならない。
     調査結果のまとめ
       本調査の結果,次のことが明らかになった。
      (ア)  小学校,中学校、高等学校ともに児童生徒は,国語の「話すこと・聞くこと」,「書くこと」,「読むこと」,言語事項の全体にわたって,学習や活動で困っていることを挙げている。
      (イ)  小学校,中学校、高等学校ともに教師は,児童生徒が主体的に学習するために興味を引き出す教材を工夫している。また,相互学習を行うことが児童生徒から求められている。
      (ウ)  小学校,中学校、高等学校ともに教師は,教師が行う評価を充実させようとしており,児童生徒からもそれが求められている。
      (エ)  授業では,児童生徒が相手意識,場面意識,評価意識をもって学習が進められるように,教師は配慮することが大切であると考えられる。
      (オ)  自分にあった学習方法がはっきりすることが,児童生徒から求められている。


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