は じ め に

 これまでも体育・保健体育科では,生涯スポーツを視野に入れ,運動に親しむことや健康の保持増進と体力の向上を図ることを教科の目標として,児童生徒の健全な心身の発達に重要な役割を果たしてきた。しかし,一方では,児童生徒を取り巻く環境の変化によって,体力・運動能力の低下傾向や活発に運動する者とそうでない者とに二極化している状況にあることも指摘されている。体育・保健体育の授業において,体が自然に動きだしてしまうような楽しい運動の経験,仲間とかかわり合って楽しく運動できるような経験をすることが,児童生徒を自ずと運動を好きにさせていくのではないかと考える。また,自分に必要な体力は何かを考え,体力の高め方を学び,その運動をさらに工夫し実践していくことが体力向上や課題を解決していく力を高めることにつながると考える。
 体育・保健体育科では今回の改訂で,「体操」領域に代わり新たに「体つくり運動」領域が盛り込まれた。「体つくり運動」は,体の調子を整えることや仲間との交流などをねらいとした「体ほぐしの運動」と,直接的に身体的能力が高まることをねらいとした「体力を高める運動」とから構成されている運動である。
 本研究では,小学校及び中学校では,児童生徒が自ずと運動を好きになるような指導の在り方について「体ほぐしの運動」を取り上げ授業研究を行った。高等学校では自己の能力に応じた体ほぐしの行い方と体力の高め方を,実践的に工夫できるようにする指導の在り方について「体つくり運動」を取り上げ授業研究を行い,児童生徒が自ら学び,自ら考える力を育てる体育・保健体育科学習の指導の在り方を究明しようとした。



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