生き方や進路を考える「総合的な学習の時間」の在り方
―自己の生き方を考え,進路を主体的に選択しようとする生徒の育成をめざして―
県立波崎柳川高等学校
 主題設定の理由
   本校は,全日制普通科を置く各学年6クラスの中規模校であり,創立以来「文武両道」を建学の精神として掲げてきた。普通科クラスの中に各学年1クラスの体育コースが設けられ,部活動で優れた成績を収める一方,進路面は大学・短大進学,専門学校進学,就職と多様であるが,日頃から「生徒一人一人の将来の進路実現を図る」ことを目標とし,進路指導の充実に努めてきた結果,年々実績が上がってきている。
 しかし,本校生徒の最近の傾向は,学校教育全般を取り巻く昨今の風潮に漏れず,学校生活の中に目標を見いだせない生徒,進路意識が低く学習意欲の乏しい生徒,そして,実社会に出ることを避けるフリーター志向の生徒なども目立ってきている。その原因としては,一般的に言われている社会的体験の乏しさ,景気低迷による将来に対する見通しの不透明感などの社会的要因が挙げられる。今後,学校教育においても,自分を見つめるとともに社会に目を向け,自らの人生観や職業観を養うことが一層求められる。従って,「総合的な学習の時間」の中に様々な体験活動を取り入れながら,進路への自覚・関心を系統的段階的に高めていく学習が必要である。そして,生徒の将来の進路に対する希望を基本として,自らの学習に意欲的に取り組む態度を育て,一人一人の生徒にふさわしい進路選択を可能にする必要があると考えた。
 そこで,生徒が自らの生き方や進路を考える「総合的な学習の時間」の在り方についての一考を試みた。
 
 研究のねらい
  (1)  自己の在り方生き方や進路について考察する学習活動を通して,生徒に明確な目的意識,進路意識をもたせ,主体的に進路を選択する意欲・態度を育成する。
  (2)  生徒が興味・関心,進路等に応じて設定した課題についての学習活動を通して,課題解決能力や自己の進路を切り拓く力を育成する。
  (3)  体験的な活動を取り入れ,勤労観・職業観を養うとともに,社会と積極的にかかわろうとする意欲・態度を育成する。
 
 「評価」の基本的な考え方
   教育課程審議会答申は,「総合的な学習の時間」の評価について,「教科のように試験の成績によって数値的に評価することはせず,活動や学習の過程,報告書や作品,発表や討論などに見られる学習の状況や成果などについて,児童生徒のよい点,学習に対する意欲や態度,進歩の状況などを踏まえて適切に評価すること」と示している。
 従って,「総合的な学習の時間」における評価は,学習の結果の良し悪しを評価するのではなく,生徒自らの課題に対してどう取り組み追究しているか,その学習の中での意欲,態度,よい点,進歩の状況などの過程を評価することが重要である。
  (1)  評価の観点
     活動への関心・意欲・態度
       課題の解決や追究活動に主体的,創造的に取り組む態度や粘り強く進めていく力
     課題解決能力
       自ら課題を見つけ,自ら学び考え,主体的に判断しよりよく課題を解決しようとする力
     学び方・考え方
       情報の集め方,調べ方,まとめ方,報告や発表などの学び方やものの見方
     生き方の探求
       今までの生き方や将来について考えたり,目標や進路の実現に向けて行動したりする力
  (2)  評価の方法
     生徒自身による自己評価を中心に,生徒同士による相互評価,教師による評価を行う。
     自己評価
       自己評価として,毎時間の終わりでの評価,各学習段階ごとの評価を行う。
      (ア)  毎時間の終わりでの評価
         毎時間学習活動を振り返り,活動内容,感想・反省を記録して自己評価を行う。自己評価の観点は,「調べたいことを決めることができたか」,「計画どおり進んでいるか」,「率先して取り組めたか」,「自分なりの意見や考えを出すようにしたか」,「間違ったり失敗したりしても,あきらめずに頑張ろうとしたか」とする。
      (イ)  各学習段階ごとの評価(構想案の学習活動を評価する観点を参照)
         各学習段階ごとにチェックリストによる自己評価を行う。
     相互評価
       発表会で生徒同士の相互評価を行う。短時間で評価を行うので簡単な観点と感想を記入する。評価の観点は,「まとめ方は筋道が立っているか」,「発表の仕方は分かりやすかったか」,「表現は工夫されていたか」とする。
     教師による評価
       生徒の学習ノート,計画書,報告書,レポートなどの分析や生徒の具体的な学習活動に対する観察を行い,特に認め励まし,伸ばしたい点を記述する。
 
 活動の実際とその考察
  (1)  「総合的な学習の時間」の計画と概要
     平成15年度より「総合的な学習の時間」を取り入れるにあたり,各学年1単位とし,計3単位の実施計画を作成する。
     学習形態は原則として各学年ごととする。
      (ア)  学年別の学習活動
       
  1. 第1学年
     「自分を知る」「職業を知る@」「上級学校を知る」「社会を知る」などの学習活動を行う。具体的には,「自分を知る」ではこれまでの生活を振り返っての「自分史」を書き,さらに「10年後,20年後の自分」というテーマで作文を書く。「職業を知る@」では,職業の全体像を把握し,それらの職業が社会にどのように貢献しているのかを調べレポートにまとめる。「上級学校を知る」では,大学・短大・専門学校における必要な試験教科・科目や入学後の授業について調べレポートにまとめる。「社会を知る」では,国際理解,情報,環境,福祉などの現代社会の課題について生徒の身近なことから考えさせ,新聞,雑誌,インターネットを活用して情報を入手,整理して自分の課題を把握し,テーマを設定する。その後,聞き取り調査や文献,インターネットを活用して資料収集,体験活動を行いテーマ追究の結果をレポートにまとめ,小グループあるいはクラスごとに発表を行う。


  2. 第2学年
     「職業を知るA」「将来の職業や生き方を考える(学習活動の展開計画参照)」「学問新聞を作る」などの学習活動を行う。具体的には,「職業を知るA」では1年次の「職業を知る@」を基礎に,その上で就きたい職業は何か,それは具体的にどのような内容の仕事か,どのような人が向いているか,将来どのような道が開けているか,その職業に就くにはどのような勉強や資格が必要か等について調べ,レポートにまとめる。「学問新聞を作る」では,上記の学習活動を通して就きたい職業を絞り込み,その職業に就くにはどういう学問が必要か,その学問ではどんなことを学ぶのか,その学問を学べる大学・学部・学科にはどんなものがあるか等を調べ,新聞を作成する。


  3. 第3学年
     「課題研究」を中心に学習活動を行い,国際理解,環境,情報,福祉,健康とスポーツ,郷土等の大テーマから各自の興味・関心や自分の将来に合致するような課題を各自設定する。次に研究計画書を担当教師に提出し,本格的な課題追及を行う。その後,中間報告書を担当教師に提出し,研究の具体化についてアドバイスを受ける。課題研究が進む中で,小論文の書き方の指導を受け,追究内容を小論文にまとめ,最終的に発表会を行い,成果を発表する。

      (イ)  学習活動の展開計画
  計画
      (ウ)  学習活動の展開計画の考察
         社会人講話とその後の討議を通して,社会人として働く上での必要な心構えや社会人が責任をもって仕事にあたっていることに気付き,一人一人が働くことへの考えをもち,自分の課題をつかむことができる。また,学習の計画は,時間の確保と教師(TT)の生徒一人一人への対応によって,自力で立てることができ,体験活動への自主的な取り組みの意欲につながる。体験活動を通して,職業理解のみならず責任感,協調性や人間関係など社会人の在り方を身をもって体験させることができ,進路意識の高揚と職業観の育成に役立つ。さらに,学習を振り返る,学習をまとめるという場を設定することで,生徒一人一人が自己を見つめ,自己の生き方についての自覚を深めることができる。
 
 今後の「評価」の在り方と改善への視点
   「総合的な学習の時間」のねらいには「自ら課題を見つけ,自ら学び,自ら考える」とあるように,課題解決能力の育成が重要である。よって評価においても,自己の追究活動を振り返り,反省し課題をよりよく解決することができるような生徒自身による主体的な評価活動が重要である。今後,そうした自己を評価する力を育成することが求められると考える。
 そのためには,次のような視点から学習を進める必要があると考える。まずは,学習活動に実生活との関連を図った体験的な学習や問題解決的な学習といった自分との関わりの深い活動を積極的に展開することである。これは,自分が学習したことに対して責任と自覚を生じやすくさせ,学習状況の過程と成果について自己評価をせざるを得ない環境をつくるためである。
 次に,学習に先立って,学習のねらいを明確にしておくことである。また,どのような評価の観点や規準から教師が評価するのかを生徒に示すことも必要である。その結果,生徒は学習のねらいや教師の設定した評価規準をもとに,学習を振り返ることができるようになる。
 以上のことが機能し,生徒の自己評価力を育成するためには,ポートフォリオ評価が効果的であると考える。ポートフォリオ作成によって,生徒は自らの学習を振り返り,自分自身の成長を確認することができ,評価した結果を活用できる。そのために,教師は生徒が自己の活動について振り返ることができる機会と時間をもてるよう支援したい。
 そして,生徒の主体的な学習意欲を促し,一人一人のもつよさや可能性を見いだすために,生徒自身による自己評価を支えるものとして,生徒同士の相互評価や教師による多面的・継続的な評価方法を工夫する必要があると考える。

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