課題研究活動の在り方
―教科の枠を越えた課題研究活動の実施に向けて―
茨城県立水戸商業高等学校
 主題設定の理由
   本校商業科においては,3年次に「課題研究」を2単位で実施している。平成15年度からの新教育課程の導入に伴い,「総合的な学習の時間」が必履修となる。「総合的な学習の時間」と商業科目の「課題研究」に求められているねらいやテ−マには,多くの類似点が見られる。本校では,「課題研究」3単位(105 時間相当)の実施により,「総合的な学習の時間」を代替する考えが主である。しかし,現在実施されているテ−マの中には,国際理解,環境や健康に関するテ−マはない。
 「総合的な学習の時間」と関連付け,教科の枠を越えた課題研究活動についての取り組みが必要である。
 
 研究のねらい
  (1)  「課題研究」
     ねらいは,学習している専門分野から,自分の興味・関心のある研究テ−マを設定し,その問題の解決を図る学習を通して,専門的な知識と技術を深め,問題解決能力や自発的・創造的な力を身につけることにある。
 研究テ−マは,商業に関する調査・実験・研究,作品制作,産業現場における実習,職業資格の取得の4分野の中から,自分の興味・関心,進路希望に応じて,個人あるいはグル−プで決定する。
  (2)  「総合的な学習の時間」
     ねらいは,自ら課題を見つけ,自ら学び,主体的に判断し,よりよく問題を解決する資質や能力を育てる。学び方やものの考え方を身に付け,問題の解決や探究活動に主体的・創造的に取り組む態度を育て,自己の生き方を考えることができるようにすることにある。内容は,国際理解・情報・環境・健康などの総合的課題についての学習活動,生徒が興味・関心・進路等に応じて設定した課題についての知識や技能の深化・総合化を図る学習活動,自己の在り方・生き方や進路について考察する学習活動である。
 いずれにおいても,学習内容や活動の展開においては.ボランティア活動や現場実習などの社会体験,実験・観察,見学や調査,発表や討論,作品制作や生産活動など体験的な学習を取り入れること,また個人やグル−プ活動による学習などの多様な学習形態,社会人講師や地域の人々の協力も得つつ全教師が一体となって指導に当たる指導体制,地域の豊かな教材や学習環境の積極的な活用について工夫する等,共通点が多い。
 求められているのは,変化の激しい社会に柔軟に対できるような「生きる力」であり,高校の「総合的な学習の時間」は,小学校から育んできた「生きる力」の仕上げをする役割を担っている。ここでは,研究テ−マの設定から,計画・研究・整理発表と続く学習活動の各段階において,生徒自身が自分をどう評価し,教師がどう支援し,励まして課題の達成まで共に歩んで行くべきかを探るということが求められる。
 
 「評価」の基本的な考え方
   学習活動を通して生徒がどれだけ成長したかを評価することが重要であり,そのため生徒自身による自己評価,生徒同志による相互評価,教師による評価等が考えられる。
 自己評価については,具体的な要素としての問題を発見する力,計画や企画する力,意欲や態度,実行する力,思考力や情報を活用する力,表現力,人とのコミュニケ−ション力等を視点におき,活動の過程で自分なりの考えを持って活動に取り組めたか,周囲と協力しながら活動できたか,積極的に活動できたか,目的意識を持って取り組めたかどうかを観点とする。評価方法は学習日誌の記録や簡単なレポ−ト提出等による。
 相互評価については,発表会を行った際,生徒に発表の仕方や方法・取り組みの姿勢を相互に評価させる。
 教師による評価は,課題は違っても共通に身につけたいことを明確にしておくことが必要である。学習日誌への指導・助言,感想や励まし等は,生徒の活動の支えになる。また,職場見学や体験学習,社会人講師等,外部からの厳しい評価は生徒の心に深く響くであろうし,プラスに評価されることは次の学習意欲へつながっていくと考えられる。
 
 活動の実際とその考察
  (1)   研究テーマ
     本校商業科(4クラス)の今年度の課題研究活動は,2単位で月曜日の5,6時限に実施している。研究テ−マは,以下のとおりである。この中で,デザイン(インテリア)作品制作と英語検定資格2級は,美術と英語科教師の協力を得,簿記検定資格2級とコンピュ−タ利用技術検定資格は社会人講師が担当し実施している。作品制作や現場実習では活動が放課後まで及ぶことも多いが,概ね,生徒は意欲的である。また,現場実習は終了後,その場で放課となる。
    図
     現在は,各テ−マとも情報収集や研究の最終段階に入り,作品の完成も間近なところに来ている。現場実習も順調に進み,資格取得等の結果も出てきている。成果が見られる一方,今後に向けた新たな課題等も生じている。
  (2)  評価
     評価については,年間計画に基づき,生徒が主体的に活動し問題の解決を図ることから,自己評価が中心となる。本校では,学習日誌を実施日毎に提出させ,その中で評価をさせている。
    図
     また,教師側は生徒の活動状況を把握し,テ−マが計画どおりに進んでいるか,目指している力が身についているか等について,成果の見取りをもとに,問題解決のための効果的援助として学習日誌に指導・助言を行い,励ましを行っている。テ−マによっては,学習成果の確認のため,評価の一方法として考査を実施している。
  (3)  成果と課題
     活動と自己評価,教師による指導・助言を繰り返し,研究活動を進める過程において,以下のような成果が見られる。
  • 協力してテ−マに取り組むことで,互いを尊重し,理解する気持ちが育まれている。
  • 活動の各場面毎に達成感が得られ,それが次時への意欲となっている。
  • 情報収集の方法や作品制作において,創意工夫が見られる。
  • 地域の人々との接触により,社会人となるための心構え等,意識に変化が見られる。
 しかし,生徒の考えの多様化や限られた教育環境のなか,主体的に取り組めるテ−マを見出せなかった生徒や目的意識の低い生徒,自己評価の困難な生徒等,抱えている問題は多い。このような生徒に共通に見られることは,各教科の基礎・基本が身についていないことであり,教科指導の充実が課題研究活動の根幹であると考えられる。
 今後,調査研究のまとめや整理,作品の完成等へ向かう過程で,目指した力がさらに育ち,終了時に成就感や満足感が得られることを目指して活動を続けている。さらに,終了後,テ−マへの更なるこだわりが生まれ,新たなテ−マに向かう意欲が沸き上がればと願っている。
 
 今後の「評価」の在り方と改善への視点
  (1)  自己評価・相互評価・教師による評価
     評価は,活動を通して実現を目指す問題解決の力を,教師が具体的に把握することから始まる。また,生徒の主体的な活動を前提とするから,自己評価・相互評価・教師による評価第三者の評価等,視点を変えた評価の工夫が求められる。自己評価については,目指した力がついているか,問題解決によって思いを実現する方法を身につけたか等の成果を見取り,生徒への返しのため,そして思いの実現のための効果的な支援を行う必要がある。そのためには,生徒の活動状況の把握,生徒との対話が大切であり,学習を振り返っての日誌やレポ−トへの指導・助言は欠かせない。教師による評価には,活動の過程における進歩に着目したものであること,自らの生き方をも振り返る自己評価する力を育てるものであること,一人一人の良い点や進歩を評価するものであること等の視点が必要と考えられる。
  (2)  研究テーマと評価
     研究活動が,「自らの問題解決の力」,「生き方への振り返りも含めた学び方」をねらいとするものであるから,テ−マは,ねらいの実現を目指すものでなければならない。生徒の興味・関心にのみ任せるテ−マは,安易な方向に流れかねない。テ−マの設定には,以下に示すような教師側の意図や視点が必要と考えられる。
  • 興味・関心を引き出し,問題意識にまで高める体験や意識づけをどのように行うか。
  • 教科の発展や関連から,自らのテ−マを見つける糸口はないか。
  • 自ら設定したテ−マの解決に向けて見通しが持てたり,評価ができるか。
  • 研究する過程において,目指す力が身につく,あるいはその可能性があるか。
  • 生徒の意欲が持続するような具体的活動や多様な調査方法・表現方法が盛り込めるか。
  (3)  改善への視点
     研究活動を実施していくなかで,浮上してきている今後に向けての改善点には,以下に示すようなことがある。
  • 現在設定されていない国際理解や環境,さらに福祉や健康に関するテ−マを,商業科目と他教科との関連において設定すること。そのために,教科の枠を越えた教師の理解と協力体制の確立が不可欠であること。
  • 生徒の多様な興味・関心に少しでも応じることのできる施設・設備面等の教育環境の整備と充実が必要であること。
  • 保護者や同窓会に対して,研究活動のねらいを周知し,理解を求め,協力を仰ぐための効果的な方法を考え,そのような場を設定すること。また,地域の人材を発掘し,外部講師として迎え入れる等,研究活動の活性化を図ること。
  • 問題や目的意識の低い生徒が,研究活動に対する意識を高め,主体的に活動しやすくするような工夫や手引き書の作成等,支援体制の確立が必要であること。

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