(14)  公民科「政治経済」(高校3年)での実践
   自己主張を促すディベートによる授業
学習計画
@  単元  法の下の平等
A  単元について
   明治憲法では平等の原則が不十分であったが,日本国憲法の第14条では明確に「法の下の平等」を規定している。しかし,現実には個人の尊厳を無視した偏見や差別が見られる。そこで,その解決が迫られていることを考えさせる。
B  児童の実態(男子13人 女子27人 計40人)
   本HRでの進路希望は,大半は大学・短大進学が8割,専門学校進学が2割で学習意欲の比較的高い生徒が多い。男女の比率は3:7で,女子が多い。
C  学習形態
   くじで機械的に分けた9人組のグループ(肯定側3人,否定側3人,審判3人)で,構成的グループ・エンカウンターを応用した「ディベート」を行う。議長役は教師が務める。
 
結果と考察
@  結果
   「振り返りアンケート」結果から,級友と助け合って勉強できたが92.5%(「はい」と「まあまあ」の合計),級友に親しみを感じたが97.5%,級友に自己主張できたが77.5%,もっと勉強したいが90%,意欲的に取り組めたが70%と,高い割合であった。
 また,自由記述では,「助けてくれたのでとても助かった」「とても親しみが持てたと思う」「級友との仲も深まったような気がします」「すごく楽しくて熱くなってました。自分の意見をちゃんと言えました」「『夫婦別姓』の問題は改めて難しい問題なんだと思った」「みんな頑張っているのが感じられた」と,級友関係,自己主張,学習意欲について多く書かれた。さらに,授業参観をした教師たちは,「生徒がリラックスして自由に発言できるもので良かった」「生徒が生き生きしていた」「全く参加していない生徒が“ゼロ”だったのはすごいと思う」と高く評価している。
A  考察と課題―4種類のサポートの視点から―
   以上のことから,本授業は生徒相互に自己主張し協力し合い,そして親密感を高め,豊かな人間関係を築いたものと考えられる。さらに夫婦別姓から男女平等について考え,興味関心を高め,問題意識をもち,そして学習意欲を高めたものと考えられる。
 また,ジャンケンによる明るい雰囲気作り,「ありがとう」「ご苦労さん」の言葉かけなどの情緒的・評価的サポートをより多く行った。発言時間が短く欲求不満をもつ生徒もいたが,以後,「先生,またディベートやろうよ」と自己開示する生徒が多く,教師・生徒間の人間関係づくりを促進させたものと考えられる。
 今後,グループ学習やSGE応用の授業を実施する際には,日常的に生徒間および教師・生徒間の人間関係づくりをしておく必要がある。また,特別に個別的な援助を必要とする生徒の参加には慎重な配慮が求められる。
 
本時の学習
@  目標
   夫婦別姓をめぐる討論から,男女の実質的平等や女性差別の現状を理解し,問題意識をもつ。
   自己主張およびプレゼンテーションの能力を身につけ,集団の中で豊かな人間関係をつくれる。
A  準備・資料
   ワークシート(「資料調べ」「判定表」「アンケート」)
B  展開
  展開
   
資料1 生徒の作成した「資料調べ」
資料1 生徒の作成した「資料調べ」
 
資料2 生徒の記述した「ディベート判定表」
資料2 生徒の記述した「ディベート判定表」


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