研究の成果
   本研究では,理科における創造性に関する実態調査を実施し,その結果を踏まえて,個に応じた支援の工夫などの指導法の改善や思考の深まりを促すことができるような教材・教具の開発等の手だてを講じ,授業研究を行った。研究主題に迫るための手だての有効性については,それぞれの授業研究の中でまとめてあるが,特に効果の大きかった次の3つの手だてについて述べる
  (1) 教材・教具の工夫と活用
     自作の測定器接続ソケット・プラグ(中学校),気体の溶解度測定装置(高校化学),光の三原色説明器及びデジタル表示型簡易比色計(高校生物),自作ソーラークッカー(高校地学)などを工夫し開発した。それらは生徒の思考に応じて自由に操作したり,課題の解決のための検証実験としてすぐに用いることができる。また組立てや操作が簡単なため,その結果として,思考や話合いの時間を十分確保することができ,生徒は多様な予想や自由な発想が生まれ,思考力を高めることができた。
  (2) 観察・実験方法の工夫
     運動量保存の法則の学習においては,精度を要求する定量実験とせず,定性的に判断させるために検証実験として課題を提示し,生徒の自由な発想に合わせた10通りの実験方法をとらせた(高校物理)。限られた器具を用いて課題を解決するための実験方法を考え出させ,情報を交換したりして修正した方法で仮説を検証し,思考力を高めた(高校化学)。
  (3) 学習過程及び学習形態の工夫
     終末に発展的な学習活動を取り入れ,ブレインストーミングを取り入れた話合いやワークショップ形式の発表会を行うことにより,児童の自由な思考活動を促し思考の深まりを図ることができた(小学校)。課題別の小人数による実験班編成などの様々な工夫(中学校,高校地学),T・Tの活用による個に応じた支援を行うこと(小・中学校)で各自の発想を生かし,思考力を高めることができた。
 
お わ り に
 2年間にわたり,児童生徒の創造性の基礎を培うことをねらって,理論研究,調査研究,授業研究を行ってきた。児童生徒が,見通しをもって観察・実験に取り組み,自らの発想や考えを再検討することで,事象を多面的に考察し,問題解決能力や多面的・総合的な見方を養うことができ,創造性の基礎が培えると考えた。実態調査から,児童生徒に対して課題提示の方法などの工夫,観察・実験を多く取り入れたゆとりある学習計画,まとめの話合い活動などを積極的に取り入れていく必要があることがわかった。そこで,前述の4の(1)から(6)のような研究主題に迫るための手だてをもとに授業研究を行った。その結果,既有の知識や経験を生かして,自分なりの考えや解決の方法が見いだせるような教材・教具の工夫とその活用,児童生徒が自らの考えを深めたり新たな問題を見いだせるような話合い活動の場の設定,観察・実験の班編成の工夫やT・Tの活用などの個に応じた学習形態の工夫は児童生徒の発想を生かし,思考力を高め,創造性の基礎を培うのに有効であることがわかった。 教育改革の大きなねらいの一つである創造性の基礎を培うことは,決して容易ではないが,日々の授業の中で意識して行うことが重要である。我々は,一時間一時間の授業を今まで以上に大切にし,児童生徒に創造性の基礎を培う努力を継続していく必要がある。

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