研究の成果
  授業研究から
小・中・高等学校における授業研究を通して,次のようなことが分かった。
     小学校では,他教科・領域との関連を通して教材(お茶づくり)とのかかわり(全身・全心的なかかわり)を深め,児童の意識が覆されるような事実(アンケート結果と自分たちの古内茶への認識とのずれ)と出会う場を設定することによって,児童は切実性のある学習問題を設定できた。また,児童の思いや願い(古内茶を有名にしたい)が強いほど,それらを具体化する活動は,主体的になることが分かった。さらに,調べる方法やまとめ方,表現活動を複線化することによって,児童は,自分の興味や関心を生かして解決方法,調べる観点,表現方法を選択し,自分なりに学習活動をつくり組み立て,主体的に学習に取り組むことができることが分かった。このような学習によって,児童は地域 に生きる人々の努力(お茶づくりの工夫や努力)を理解し,地域を愛する心(古内という地域に自分たちが住んでいることへの誇り)をもつことができた。
     中学校では,事実認識の時間(身近な東南アジアの生活用品調べやVTRの視聴など)を確保し,地理的な事象とのかかわりを深めることによって,生徒は切実性のある学習問題を設定することができた。また,KJ法的手法の活用によって,学習内容の類型化や構造化がなされ,創造的な思考が組み立てられていくことが分かった。さらに,ゲストティーチャーからの生活に基づいた説得力のある意見や指摘によって,生徒の思考が揺さぶられ,それによって調べ直しや追究方法の見直しを迫られ,それが生徒の主体的な追究を促すことが分かった。このように問題の追究を通して,生徒は,東南アジアの地理的事象を成り立たせている背景や要因,地域の環境条件と人間の営みとのかかわり   について理解することができた。
     高等学校では,興味・関心を抱いたことや疑問に感じたことを主題として取り上げ,グループ毎に調査研究を行った。中間発表会を実施し,そこで出された生徒相互の評価や意見を生かして最終発表会に臨むようにした結果,生徒は,自分たちの抱いた主題をさらに深く追究することができた。また,「石けんづくり」という体験的学習は,環境問題をより身近なものとして考えさせることができ,将来にまでわたり問題意識をもたせる効果的な学習であった。
 
お わ り に
 研究主題に迫るため2年間にわたり継続的に授業研究を進めてきた結果,次のようなことが明らかになった。
  (1)  事実認識の時間を確保し,児童生徒が社会的事象と自分とのかかわりを深めるようにすれば,内面から問題意識が醸成され,切実性のある学習問題を見付けることができる。
  (2)  追究の結果やそれについての自分の考えを児童生徒同士交流したり,自分の考えを表現したりする場を設定することによって,それまでの自分の思考が揺さぶられ,新たな視点から社会的事象をとらえ直し,社会的な見方や考え方を身に付けることができる。
  (3)  追究の過程で,調べようとする内容や方法を自己選択(決定)できる場を設定すれば,児童は問題解決に向けて自分なりに方法や内容を選択し,主体的に問題解決に取り組むことができる。

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