2.教科別研究主題に関する基本的な考え方

 今後は,社会がますます価値の多様化に向かうことが予想される中で,自らの可能性を実現するための創造的な生き方が求められる。職業教育においては,新しい科目である「課題研究」の学習を通して,生徒が主体的に自らの課題を見いだし,課題を解決していくための見通しを立てて継続して学習していくことにより,生徒の創造性の育成を図ることが大切であると思われる。
(1)  創造性について
 創造性は,個性と密接な関係をもっており,個性が生かされてこそ真の創造性が育つものである。また,豊かで多様な個性は,基礎的・基本的な知識の理解の上に初めて築き上げられるものと思われる。
 学習指導要領では「児童生徒一人一人が主体的に生きる資質や能力を育成すること」が示されており,自ら進んで考え,判断し,自信をもって表現したり行動できる資質や能力を育成することが求められている。学校教育で培いたい創造性は自己実現の創造性であり,「どうしてだろう」という自分の問題意識をもって問題解決に取り組み,「できた」「なるほど,そうだったのか」と自己実現の喜びを体験することにより,生徒は,創造性が培われていくものと考える。この自己実現としての創造性は,人間らしい生き方をしていく上で必要な創造性であり,だれにでも資質として備わっており育まれるものとしての創造性である。
(2)  これからの教育の目指すもの
 これからの教育は,「覚えさせる授業」から「考えさせる授業」への転換を図ることが必要である。そのためには,教える側に立った教育から学習する側に立った教育へ,すなわち,教師主導から生徒中心の授業へと転換しなければならない。
 これは,教師の指導観だけでなく,同時に生徒の学習観の転換も伴うことになる。生徒がよりよく生きたい,よりよい自分でありたいという希望を,学ぶ意志・意欲として目覚めさせることが大切である。言い換えれば,自己教育力の育成であり,学ぶ姿勢が生涯学習につながっていく教育の一つである。生徒が自ら学ぶ意欲をもって,主体的な学習者へと変容していくことも大切であると考える。
(3)  授業研究を効果的に進めるための手だて
 授業研究を効果的に進めるためには,次のア〜オのような手だてが考えられる。
 「課題研究」の学習においては,導入の段階で,生徒が課題意識をもち学習のねらいや進め方,学習上の心構え等について意欲的に学習に取り組めるようにする。
 テーマの設定においては,生徒の興味・関心のある事項や希望するテーマについて事前に調査し,生徒とのコミュニケーションを十分に行う。
 生徒が年間を通して,意欲的に取り組めるような学習計画を立案し,テーマに即した多彩な学習活動が展開できるようにする。
 評価については,学習内容(報告書,完成した作品等)のみではなく,そこへ到達するまでの学習の過程においての主体性,計画性,企画力,学習意欲等をも重視する。
 生徒の習熟度に応じた学習活動が展開できるような教材を開発する。

農業・工業・商業目次に戻る