4.授業研究

 研究主題に基づき,児童生徒がいろいろな材料の形や色の特徴から新たなことを思い付いて試したり,いろいろな表現方法を駆使して,かき加えたり付け加えたりするような活動ができる題材の提示や展開の仕方を工夫しながら授業研究をした。
【授業研究1】  小学校第6学年「霞ヶ浦ドリームランド(つくりたいものをつくる)」における
児童一人一人のよさや可能性が生きる主体的な学習の在り方
(1)  授業研究のねらい
 図画工作科の「つくりたいものをつくる」の学習は,「創造的なデザインや工作の能力を育てること」をねらいとするものである。そして,このねらいを達成するためには,児童一人一人のよさや可能性が生きる主体的な学習を展開する必要がある。この「よさや可能性が生きる主体的な学習」とは,児童自らが表現や創造の意欲をもち,一人一人が自分のもっている様々なよさや可能性を発揮しながら,自分の思いによる造形表現を主体的に楽しみ,自分らしい造形的な表現の仕方や能力を自ら獲得していこうとする学習活動のことである。
 そこで,この一人一人のよさや可能性が生きる主体的な学習を展開するために,題材の提示や展開の仕方,材料とのかかわり方,及び支援の仕方をどのようにすればよいか,小学校第6学年「霞ヶ浦ドリームランド」の授業を通して究明する。
(2)  一人一人のよさや可能性が生きる学習のための手だて
 発想や構想をひろげられるように,題材の提示や展開の仕方を工夫する。
(ア)  出島村が町政施行により霞ヶ浦町になった。霞ヶ浦との関係が深まる中,未来に向けて,霞ヶ浦の浄化と町の発展を考え,「きれいな霞ヶ浦にこんな施設があったらいいな」という夢や希望を作品にする。
(イ)  題材名をもとに,児童自身がそれぞれ表現したいものの副題を設定することにより,自分らしい表現ができるようにする。
 表現のひろがりにつなげるための学び合いの学習の場を工夫する。
(ア)  材料や用具,表現方法を紹介し合う時間を確保する。
(イ)  製作の途中に作品の鑑賞の時間を設けて,友達同士のお互いのよさを発見し,そのよさを自分の表現に生かすことができるようにする。
 一人一人の発想や構想,試みなどを大切にしながら,共感を中心とした支援的な指導に努める。
(ア)  材料を切ったり,つなげたり,組み合わせたりするなど,いろいろな表現を繰り返しながら自分の思いを表現に生かすことができるようにする。
(イ)  学習カードを活用し,児童一人一人の題材に対する考え方や表現のつまずきに対して,共感と支援をする。
(ウ)  これまでの学習の様子をもとに,個人ファイルを作成することにより,一人一人に合った支援に努める。
(3)  授業の実践
学習の主題  「きれいな霞ヶ浦にこんな施設があったらいいなという夢や希望をいろいろな材料を用いて,楽しく表現する。」
題材  『霞ヶ浦ドリームランド(つくりたいものをつくる)』
     ー スリル満点しびれる遊園地 ー
     ー 南国の島が霞ヶ浦に ー
     ー 霞ヶ浦水中公園 ー
 目   標
目   標 評 価 の 観 点
関・意・態 発想・構想 創造・技能 鑑賞
 身近な材料を使い,いろいな表現を試みながら,自分なりのドリームランドをつくろうとする。
   
 材料の特徴を生かし,新たな発想や構想をしながら,表現の幅をひろげることができる。
   
 材料や用具などの特性を考え,表現方法を工夫しながら,つくるものの形や色,丈夫な組立て方を工夫して製作することができる。
   
 お互いの活動や作品から,よさを感じ取ったり,味わったりすることができる。
   
 題材について
 この学年の児童たちは,構想を練ってから製作を始めたり,見通しをもって計画的に製作したりできるようになる。この時期に,自分で材料を集め,用具を自ら選択し,自分なりの表し方で表現することは,主体的,総合的な造形能力を高めるために意義のあるものである。
 この題材は,児童たちにとってかかわりが深く,身近にある霞ヶ浦に「こんな施設があったらいいな」という夢や希望を,身近な材料をもとに,自分らしい発想や表現の仕方で具現化していく学習である。この学習活動を通して,児童たちは,身近にある材料を作品に生かすために,形や色などの特徴のおもしろさを効果的に使い,さらに,切ったり,付けたり,彩色したりするなど,材料を操作する活動を繰り返しながら,つくりたいもののイメージを確かなものにして,自分らしい作品をつくり上げていくことができるであろう。こうして児童自らが材料と主体的にかかわり,これまでの学習経験を生かして,表現していくことにより,総合的な造形能力が高まることを目指したい。
 学習の流れと授業の記録(14時間扱い)
学習の流れと授業の記録
(4)  授業の分析と考察
 活動状況から
 身近にある霞ヶ浦を題材にして,自分の思いを自由に表現できるということから,材料を集める段階から意欲的な活動がみられた。しかし,学習が進むにつれて集めてきた材料が思うように使えないなど,児童たちにとっては難しさを伴うものであった。だが,自分の思いを具現化するために,使いたい材料の特徴を作品に何とか生かそうと,試行錯誤を繰り返し,最初の発想をひろげたり深めたりしながら表現するなど,主体的な学習活動が展開できた。
 作品から
 児童がつくった作品は,遊園地,プール,コンサートホール,レストランなど様々であり,使われた材料も表1のように多種にわたっていた。
レストラン 霞ヶ浦ドリームランド
  図2 レストラン   図3 霞ヶ浦ドリームランド
コンサートホール
  図4 コンサートホール

 表1 児童が準備した材料
ペットボトル,発泡スチロール,空き缶,ビー玉,ストロー,紙粘土,ビニルテープ,針金, カップ麺の容器,ダンボール箱,スズランテープ,園芸用肥料容器,ラップ,綿,透明ビニルホース,アルミホイル,透明ビニル板,プラスチック容器,モール,ビーズ,アルミ缶,フェルト,色画用紙,割箸,釣り糸,網袋,竹串,ひも,小枝,砂,小石
 活動後の意識調査から
 学習のまとめにアンケート調査を実施したところ,「とても楽しかった。」と答えた児童が多い。その理由として,「自分で集めた材料の他に,友達同士,材料を紹介し合ったり,つくり方を聞いたりすることで,自分の作品に使えそうなおもしろい材料を集めることができた。」,「友達と意見を交換しながら活動したことで,自分では思い付かなかった発想が生まれたり,材料を工夫したりすることができた。」,「自分で思うような作品ができた。」などであった。製作途中に意図的に児童同士の学び合いの場を設定することで,児童は友達のよさを知り,自分のものとし,さらに新しいその児童のよさにつながっていくことが分かった。また,児童が新しい材料と出会ったりするなど,材料とのかかわりが,学習活動にとって大切であることを再認識させられた。
(5)  授業研究の成果
 題材名をもとに,児童自身,それぞれ表現したいものを明確にするために副題を設定した。つまずいている児童には副題をもとに話し合うことで,一人一人の思いや発想,構想,及びイメージなどを確かなものにするきっかけにすることができた。表2は児童が考えた副題である。
 表2 児童の考えた副題
すごく楽しい公園,浮かぶ野菜カラオケルーム,かめのアスレチック,きよたかランド,霞ヶ浦復活プールランド,迫力満点!楽しみワールド,魚と友達わくわく水族館,霞ヶ浦に大スター歌手がやってきた!!,スーパーウルトラ超迫力満点遊園地,湖の上の夢の遊園地,バネバネ遊園地,楽しさあふれるウルトラ満点プール,かにの旅,たこのカラオケルーム,南の島の超巨大ビル,出現!巨大迷路,観覧車レストラン
 アイデア・スケッチの後,製作に入る前に,児童が集めてきた材料や表現方法を紹介し合う時間を確保した。このことにより,自分の表現意図に合った材料を新たに見付け,より多くの材料を準備することができ,主体的な表現活動につなげることができた。アイデア・スケッチの時に,児童が今までに使ったことがないと思われる,身近な材料を教師が提示し,紹介したことも,たくさんの材料を集めることができた要因になった。また,教師が児童の様子や学習カードから,豊かな表現につながるような材料を準備することにより表現が多様になった。さらに,製作の途中に作品の鑑賞の時間を設けたことで,友達の作品のよさを見付け,自分の表現に効果的に生かすことができた。
 学習カードを活用することにより,児童は自分の学習を振り返り,次時の活動の見通しをもつことができた。また,授業中の様子からつかみきれない児童の思いやつまずきを,つかむことができ,その後の支援の手だてにすることができた。また,学習の展開を検討する資料にすることもできた。
 一人一人に対応するために,観察,アンケートなどにより,興味・関心,発想力,構想力,表現力の観点で個人ファイルをつくった。このことにより,児童一人一人のよさや表現の傾向をつかむことができたとともに,つまずきを予想した支援の重点化も図ることができた。
(6)  今後の課題
 児童一人一人の表現に対する思いをとらえ,児童のもっているよさや可能性を十分発揮させながら,豊かなひろがりのある活動を展開していくことができるような学習の在り方の研究を深めていく。

図画工作・美術目次に戻る