【授業研究2】 中学校第1学年「光の性質」における思考を深める話合い活動の在り方

(1)  授業研究のねらい  生徒が創造的に観察・実験に取り組むためには,一連の問題解決活動の中で,意欲的にさまざまな発想をしたり,その発想を生かして調べたり,また,友達と考えを出し合い深め合ったりすることが大切だと考える。
 今までの学習の中で,観察・実験の機会を多く与え,問題を解決していくよう支援してきた。しかし,十分な話合いの場がもてず,生徒が疑問に思ったことを出し合って問題を明確化したり,調べたことから自分の考えを出し合ったりすることが少なかった。それは,観察・実験の時間を十分に確保することで,生徒一人一人の発想を引き出し,観察・実験に取り組めるようになる反面,話合いをする時間があまりもてず,考えを深め合うことができなかった。そこで生徒の発想を生かし,さらにお互いの考えを出し合うことによって創造的に思考する能力や態度を身に付けられるような授業展開を工夫することが大切だと考える。
 今回の授業では,いろいろな光の現象に親しみながら,光の性質について興味や疑問がもてるように授業展開を工夫し,さらに観察・実験のねらいをつかませることで,問題を明確化する。そして,得られた情報の処理や結果の考察ができるように,話合いの活動の場の設定やワ−クシ−ト等の効果的な活用により,思考を深めることができるようにしたい。
(2)  創造的に取り組むようにするための手だて
 生徒の発想を生かした観察・実験
 光の現象は日常生活とのかかわりが極めて深いものでありながら,演示実験で終わってしまうことが多い。生徒一人一人が実験の方法を考えたり装置を組み立てたりして,各自の発想を生かした実験を計画できるように支援し,「自分の考えた実験」という意識をもつことにをよって話合いの活性化を図る手だてとしたい。
 話合いの場の工夫
 自分の考えを明確にすることは,話合い活動の活性化につながる。さらに,友達の考えを知り,比較したり,体系化することによって考えを深めるこができると考える。そこで,話合いの場を活発にする次のような手だてを考え,実践することにする。
(ア)  実験中の話合いの場の確保
 この単元の学習では,光を観察するため教室を暗くしてしまうので,話合いや記録が十分にできないことが多い。準備室(又は空き教室)をミーティングルームとして活用することにした。これは,実験中でも話合いの場所を確保することによって話合いの雰囲気作りをするとともに,資料を掲示して友達の考えと比較したり,考えをまとめたりすることで実験中に考えを深められるようにしたい。

図1 理科室とミ−ティングル−ムの配置

図1 理科室とミ−ティングル−ムの配置
(イ)  TPシ−トの活用
 結果の共通点や相違点が全員に分かるように,他の班のTPシ−トを重ね合わせてお互いの考えを発表することで,自分の考えを明確にし,気付き,修正することができると考える。
 多様なワ−クシ−トの活用
 ワークシートを効率的に活用し,光の現象を観察し,疑問に感じたことを出し合い,調べたいことを整理して,学習計画を生徒自身が立てていくようにする。そして,学習課題を解決していくための実験方法や操作順序も,生徒の発想を生かしながら進められるようにする。また,ワ−クシ−トを互いに見ることで,考えを修正することができるようにする。
 そのためには,ミーティングルームに計画表・実験結果を掲示し,他の友達の実験の様子を比較できるようにする。
(3)  授業の実践
 単元  光の性質
 学習計画(8時間扱い)
学習計画
 本時の活動
(ア)  目標  実験結果をもとに話し合うことを通して,入射角と屈折角についての規則性を見いだすことができる。
(イ)  展開
展開1
展開2
(4)  授業の結果と考察
 生徒の発想を生かした観察・実験
 目的別に班を編成し,実験計画を立てて実験を行った。実験を計画する段階では他の班の実験方法を参考にしたり,教科書や資料を参考にしたりして発想を出し合って計画を立てることができた。表1は3つ班の活動の様子をまとめたものである。屈折を観察するためにガラスや水,食塩水,砂糖水など,身の回りにある材料を利用して実験するよう計画を立てられた。また,記録の仕方もTPシートに直接光の道筋を記録する班やピンで印をつけて記録する班など,工夫して実験計画が立てられた。実験の材料もできるだけ自分たちで用意するようにした。自分たちで実験を計画したため,実験方法を一人一人の生徒がよく理解しており,実験の準備がスムーズにできた。また,実験の途中で方法を変えたり,さらに結果が分かりやすくなるよう工夫するなど話合いが行われていた。
表1 生徒の実験計画と実際の活動
表1 生徒の実験計画と実際の活動
 
 話合いの場の工夫
 班の活動の様子を見ると,A班では光はガラスの中で屈折すると考えていた。しかし,結果がよく分からないため,話合いをしながら光の道筋が見やすくなるよう光源を工夫することによって,ガラスと空気の境界で屈折することに気付くことができた。また,他にも反対側に物を置いて屈折することを確かめる実験も行った。B・C班では,水面に垂直に光が当たったときの進み方について,実験をしながら話し合われた。そして実験を何回か繰り返すうちに入射角より屈折角のほうが小さくなることに気付くことができた。実験がうまくいかない場合に互いに考えを出し合い,他の方法を考え実験していた。
 このように,実験中に話合いが活発に行われたことによって,実験方法を工夫したり,繰り返し実験を行い,考えを深めていくことができた。
 ミーティングルームでも,B・C班で「垂直に光が当たったとき,光が屈折するか。」について話合いが活発に行われていた。そして,もう一度実験を行い自分たちで結論を導くことができた。一方,A班は物質に光が垂直に当たったとき,光が直進することに気付いており,教師がほかの班の結果と比較するよう助言すれば,さらに話合いが活発になったと考える。
 多様なワ−クシ−トの活用について
 実験計画表をあらかじめ教師が目を通しておくことによって,それぞれの班に必要な器具を用意しておくなど,実験中にどのような支援をしたらよいか見通しをつけることができた。また,ミーティングルームに計画表を掲示することで,他の班の実験と比較できるようにした。実験中はミーティングルームで自分なりの考えをまとめることができた。
 また,記録用紙にTPシ−トを活用し重ね合わせて実験結果を比較検討しやすくした結果,ガラスや水で内側に屈折していることに気付くことができたなど効果的であった。
図3 生徒の実験計画と実験記録

図3 生徒の実験計画と実験記録
 生徒の感想文から
 授業後の生徒の感想文を見ると,22人の生徒が友達の考えを取り入れて学習を進めている。「実験結果を自分でまとめることができた。」と感じている生徒が19人いる。生徒の記録を見ると全員が実験結果をまとめていた。また,「ガラスと水では曲がる角度がどう違うのか詳しく調べたい,水と油の間でも屈折するのか」などの新しい問題に気付いた生徒が5人いる。このことから,生徒が発想を出し合って観察・実験に取り組むことができたと考える。また,この授業から光の規則性といった知識面だけではなく,友達の実験方法のよさに気付いた生徒が多く,実験中の話合いが大切であると考える。しかし,10人の生徒は「もっと実験がしたかった。もっと時間が欲しかった。 」という感想を述べていた。生徒の活動の様子からも,もっと実験の時間があればさらに話合いが活発になり,より多くのことに気付くことができたと考える。

調査日 平成9年9月26日 男16人,女12人,計28人
図4 授業後のアンケ−ト

図4 授業後のアンケ−ト
(5)  授業研究の成果
 生徒一人一人が実検方法を考えたり装置を組み立てりして,各自の発想を生かした実験を行うことにより,繰り返し,創意工夫しながら活動することができることが分かった。
 実験計画カードのような資料を活用することにより,生徒の発想を生かした活動ができることが分かった。
 話合いを活発に行えるよう支援することによって,生徒は問題を明確にし,その問題を解決できるよう自ら工夫し,思考を深めることができることが分かった。
(6)  今後の課題
 生徒の思考の過程をさらに明確に深めるには,どのような支援をすればよいか考えていきたい。
 他の友達の考えと比較検討する場,自分の考えを出し合える場をどのように設定すればよいかさらに考えていきたい。

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