4.授業研究

 研究主題に基づき,指導方法の改善や教材・教具の開発等の手だてを講じ,小・中学校,高等学校(物理・化学・生物・地学)で六つの授業研究を行った。

【授業研究1】 小学校第6学年「水よう液の性質」における児童の発想を生かした指導の工夫

(1)  授業研究のねらい
 児童が創造的に観察・実験に取り組むには,問題解決の過程において解決の方法を児童自ら考え,創意工夫しながら多様な方法で追究する活動を数多く取り入れることが大切であり,その積み重ねを通して児童の創造性が育っていくと考えた。
 本研究では,小学校第6学年単元「水よう液の性質」において,個に応じた問題解決の場を設定し,児童が自らの発想を生かすとともに,話合いを通して比較検討しながら自発的に解決しようとする理科学習の指導の在り方を究明する。
(2)  創造的に取り組むようにするための手だて
 事象提示の工夫
 導入での問題把握の場面において事象提示の方法を工夫し,児童が驚きや疑問をもち自分の問題としてとらえることができるようにするとともに,新たな疑問を見いだすために自由試行する場を設定する。
 問題解決の複線化
 児童一人一人が,既習の内容をもとに観察・実験の方法を考え,発想を生かして問題解決に取り組めるようにする。水溶液の性質の変化は,視覚的にとらえにくいため,解決の方法を児童自ら考えられるための支援として,次のような手だてを行う。
(ア)  同じ観察,実験の方法を選択した児童によるグループ編成を行う。
(イ)  実験プリントを用いて調べ方を考え,必要に応じて既習の内容に基づく実験の方法を参考にできるよう資料を工夫する。
(ウ)  観察や実験のための十分な時間を確保する。単位時間内に問題解決のすべての活動を行うという形式にとらわれず,新たな問題発見や検証に重点を置くなど柔軟な学習計画にする。
 情報交換の場の工夫
 観察・実験の方法を児童が選択して行った場合,他の児童が行っている方法やその結果を知り,話合いを通して考えを深めていくことが大切であり,次のような手だてにより場の工夫に努める。
(ア)  他のグループの方法や結果と比べることによって,自信をもって問題解決に取り組んだりまとめの段階で考えを補正したりできるよう,情報コーナーを設置し,自由に活用できるようにする。
(イ)  比較検討の場面で,グループごとに結果や考察を工夫して発表し,児童の司会によって話合いを行い,自由な話合いの中で考えを深め合うことができるようにする。
(3)  授業の実践
 単元名  水よう液の性質(小学校第6学年)
 学習計画(15時間)
第一次  金属をとかす水よう液 4時間
第二次  酸性・中性・アルカリ性 5時間
第三次  水よう液を調べる 2時間
第四次  酸性の水よう液とアルカリ性の水よう液の混ぜ合わせ 4時間
  学習計画 第四次 詳細
 本時の学習
(ア)  目標
 塩酸と水酸化ナトリウムの水溶液を混ぜた液体の性質について問題意識をもち,実験を通して,酸性の水溶液とアルカリ性の水溶液が混じると別の物ができることをとらえることができる。
(イ)  準備・資料
 試験管,顕微鏡,スライドガラス,ピペット,ピンセット,電熱器,豆電球,電源装置,塩酸,水酸化ナトリウム水溶液,ムラサキキャベツ液,リトマス紙,アルミニウム片
(ウ)  展開
展開
(4)  授業の結果と考察
 事象提示の工夫について
 25人の児童は,水酸化ナトリウムの水溶液と塩酸を等量混ぜ合わせるとアルミニウムの溶け方が激しくなると予想していたので,実験結果に驚いていた。調べ方を考える話合いでは,資料1のような解決の見通しが出された。「なぜだろう。」「不思議だ。」という疑問から,「混ぜた水よう液を調べてみたい。」という意欲に結び付いたようである。いずれの方法も既習の内容に関連していることから,知識や経験を生かして解決しようとする態度に結び付いていると考えられる。

資料1 話合いによる解決の見通し
  •  リトマス紙が赤色になるか青色になるかで性質を調べられる。
  •  ムラサキキャベツ液を入れてみればすぐ分かる。
  •  電気を通して豆電球がつくか調べたい。
    (塩酸の性質を調べるときに,選択して実験を行った。)
  •  アルミニウムが塩酸に溶けたときにあたたかくなった。今回も同じようにあたたかくなったのでくわしく調べたい。
  •  混ぜると量が少しちがったとき,アルミニウムにあわが付いていた。アルミニウムがとけるときもあるのか。
  •  塩酸とアンモニアの時のように,熱してかわかすと何か残るか調べたい。
(下線部 … 本時までに学習してきた内容)
 児童の発想による多様な実験
 児童が既習事項をもとに調べ方を考え,話し合い,興味に応じて選択した方法であるため,児童は,自分なりの発想を生かし,自らの力で解決しようと主体的に取り組むことができた。資料2は,実験Dを選択したグループの実験プリントである。

資料2 児童の実験プリント
資料2 児童の実験プリント
 情報交換の場の工夫
 情報コーナーを見て,他のグループの方法に興味をもち,自分もやってみたいと考える児童が多かった。さらに,実験結果を情報コーナーに記入しながら他のグループの結果を見て,自信をもって発表するきっかけになったようである。グループの発表では,視聴覚機器や実物を用いるなど工夫して取り組んでいた。また,表1から,混ぜた水溶液に別の物質ができたと判断する上で,多くの結果から必要な情報を選択して利用しており,まとめに生かそうとしていることが分かる。

図1 情報コーナーの利用
図1 情報コーナーの利用

表1 水溶液を混合して別の物質ができたと判断した理由
水溶液の中で別の物質ができたと考えたのはどんな理由からか。
(複数回答) 
 ア 熱したら正方形の(食塩の,四角形の)粒が残ったから。 20
 イ リトマス紙の色が(赤や青に)変わらなくなったから。 12
 ウ ムラサキキャベツ液の色が変わったから。 10
 エ 水よう液の温度が上がったから。  7
 オ 豆電球のつき方が変わったから。  2
 カ 混ぜる量によって泡の出方が違ったから。  2
 授業前後の意識調査の結果から

図2 授業前後の意識調査(平成9.10.22実施 第6学年1組33人)
図2 授業前後の意識調査(平成9.10.22実施 第6学年1組33人)

資料3 実験に関する感想
資料3 実験に関する感想
 調査項目の1,2から,自らめあてを見付け結果を予想して取り組んだと答えた児童が増加している。また,3から実験の方法を自分で工夫したと答えた児童が18人に増加している。児童が知識や経験をもとに自由に発想し主体的に観察・実験に取り組んでいることが分かる。さらに,実験結果を自分で考えてまとめたと答えた児童が21人おり,結果やまとめをグループで発表するときに視聴覚機器を用いるなど発表の工夫に結び付いていた。また,情報コーナーや話合いを通してよい点を参考にしている児童は17人と少しではあったが増加している。児童の司会による話合い活動を通して,他の人の考えのよい点を認め合い修正しようとする態度に結び付いていることが分かる。話合いによって,分かりやすくまとめやすかったという感想もあり,さらに活発で深まりのある話合いの展開に心掛けたい。
(5)  授業研究の成果
 児童の発想をもとに多様な方法で観察,実験を行うことによって,児童は調べ方を自ら考え創意工夫して取り組むようになる。
 実験方法や結果を交換する場を設けることにより,自分の考えと比較しながら必要な結果を利用するなど見方や考え方を広げることができるようになる。
 児童が中心となる話合い活動を取り入れることにより,児童は発表の仕方を工夫し,互いによい点を認めながら考えを深め合うことができるようになる。
(6)  今後の課題
 児童の発想を生かした多様な問題解決活動に対する支援の在り方について研究したい。
 児童相互の考えを交流し深め合う話合い活動における支援の在り方について研究したい。

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