3 本音で付き合える集団を育てる   小学校全学年向け

テレパシー


ねらい  相手の動作を見て,コメントの内容を推測し,合っているか誤っているか発表して,当てる楽しみを味わう。また,声を発しないで意志を伝えることの難しさを体験する中で,聾唖者の立場を理解し,ボランティア意識の高揚を図る。
時 間
  • 学級活動(45分)(学級で行う場合)
  • 全校ゆとりの時間(縦割り班活動の場合)
準 備
  1. メッセージを書いた紙片(全員分)(異年齢集団で行う際は,低学年・中学年・高学年用の難易度を変えたメッセージを準備する。)
  2. 読みとったメッセージを書き取るための用紙(人数分)
  3. 筆記用具
進め方
  1. 簡単なウォーミングアップのゲームや活動を事前に行っておく。
    (歩行者天国)(1分)
    • 声を出さずに胸をはって自由に歩き回りながら,どんな子たちといっしょのグループになったのか確かめましょう。
    (○人組)(5分)
    • 笛を吹いた数と同じ人数で集まり手をつないですわって下さい。
      「ハイ」をつけたらその動作をし,つけなかったらその動作をしないというルールで,教師からの合図で行う。

  2. テレパシーゲームの手順
    @ メッセージを青いた紙片と書き取るための用紙を児童に配布する。
    A 各自は,受け取ったメッセージをだれにも見られないようにして,パートナーに伝える。
    B すべての児童は,パートナーができるだけ遠く離れているのを確かめてから,自分のメッセージを動作で見せる。
    C 相手は,観察しながら意味を推測し,そのメッセージを紙に書き取る。同じように交替してやる。
    D 両方終わったら,パートナーといっしょに座り,そのメッセージが何だったか伝える。それから正しいメッセージを読み上げる。
    E 用紙を集め,パートナーを変えて,別のメッセージになるよう配り直して繰り返す。

  3. 《メッセージの例》
    あなたのズボンは,おしりのところにあながあいていますよ。
    高い木にたこがひっかかってしまった。
    この大きなケーキを三人で食べましょう。
    やきいもを二つ食べたら,おならが出ちゃった。
    かいだんをおりようとしたら,すべっておしりをうっちゃった。
    せの高い人とひくい人が手をつないでいたよ。
    きのうテレビを見て,大声でわらっちゃったよ。
    本を読んでかなしくてないてしまいました。
    ケーキにろうそくを8本立てて,ふいてけしたよ。
    いっしょうけんめいはしっていたら、あつくなってようふくをぬいだ。
    なわとびで,にじゅうとびが三回とべた。
    こうていで,みんなでサッカーをしてあそんだよ。

  4. 振り返り表に記入する。
  5. 今日の演習について感想を発表させ合う。
留意事項
  • ただのゲームとしても楽しくできるが,聾唖者の立場になっての疑似体験の意味もあるので,ゲームの後の反省の際,教師の話の中で取り入れたい。
  • メッセージは,人数分用意するのがむずかしければ,十前後あればそれを交互に使う形で対応できる。
  • 全員が一つめを終わらせるまで待ち,相手とメッセージを交換して二回目・三回目が行えるようにする。
  • 全校の異年齢集団で行う場合は,工夫して教室で行わざるを得ないが,学級で行う場合は,体育館のバレーコートなどの線を利用して行ったり,運動場で二本の線を引いて,等間隔に離れたその線上で行うなどの方法が効果的である。
  • 一生懸命やっても相手が何も書いてくれない場合や,相手が動作をしてくれず,ほとんど立ったままなので何も書けなかったなどの反応もあるので,早く終わった児童に援助にまわらせるなど,臨機応変の指導・援助が必要である。(そうした反応が,いじめの要因になるようなことも予想されるので,こうした活動がどうしても苦手な子に無理をさせないことや,そうした児童がパートナーになった児童に,相手に対する寛容さを持つよう指導していく必要もあろう。)
子どもの反応
  • 少しむずかしかったけど,今までのゲームで一番おもしろかった。
  • はなれたところにいる相手に言葉を使わないでメッセージを伝えるのはとてもむずかしい。耳が聞こえない人の気持ちがわかったような気がする。
  • テレパシーは伝わらなかったけど,ほとんど同じにできた。
  • 一生懸命やっても相手が何も書いてくれなかった。
  • 相手が動作をしてくれず,はとんど立ったままなので何も書けなかった。
成 果
  • ほとんどの児童は,「とてもおもしろかった」という感想を発表しており,児童相互の人間関係を深めたり,高めたりする作用がある。
  • 「耳が聞こえない人の気持ちや苦労がわかったような気がする。」という反応も多く聞かれ,身障者への配慮や弱い人を助ける優しさを身につける訓練にもなったようである。
  • 表現のしかたがわからずに困っている低学年の児童を高学年の児童が援助する場面も見られ,人間関係を深める有意義な相互作用が期待できる。

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