研究のまとめ
   英語科では「生徒の興味・関心を高め,実践的コミュニケーション能力を育てる学習指導の在り方」という研究主題のもとに,2か年の研究を行った。生徒一人一人がもつ,背景知識(スキーマ)の活用をコミュニケーション活動の拠りどころとし,実態調査の結果,研究主題に迫るために効果的であると思われる手だての有効性を追究した。
 中学校では,1年目は,生徒にとって身近な自分の夢や希望などのテーマの中から一つを選択させ,既習の言語材料を用いながら伝えたい内容を英文でまとめ,グループごとの発表を行った。2年目は,生徒が見覚えや聞き覚えのあるTopicを用意し,「ニュースを正確に報道しよう。」という課題のもとに,英語で正しく情報を伝達するという場を設定した。
 高等学校では,1年目は,扱った教材との関連から,数はコミュニケーションを行う上で欠かせないものであるという視点から,生徒は,自分の興味・関心に基づいてテーマを選び,数を表す表現やデータを用いて選んだテーマに関する英文のレポートを作成し,発表するというコミュニケーション活動を行った。2年目は,来日したばかりの新しいALTに日本文化について紹介をするという機会を設定し,他国・自国の文化について興味・関心を高め,発信するという場を共有した。その結果,以下のことが明らかになった。
 教科書の内容の理解を図り,言語材料の指導を十分に行った上で,生徒一人一人の背景知識(スキーマ)を活用したコミュニケーション活動を行うことは,言語能力が不足している部分を,背景知識(スキーマ)が補い,自分の考えや気持ちを文法的に正確に伝えようとするコミュニケーション能力と,その場で,自分の考えや気持ちを発展的に表現したり,反対に,意志疎通が困難な事態に直面しても,別の表現で言い換えたりすることで,コミュニケーションを継続しようとするコミュニケーション能力を育てることに有効であった。
 教科書の題材や生徒の発達段階,学習段階に応じて,ペアワークやグループワークを取り入れ,生徒一人一人がそれぞれの役割を分担し,自ら考えた英語を用いて発表者やリーダー等の役割を果たすことは,生徒に達成感を与え,英語で自己表現することに対する興味・関心を高めること,また,インターネットなどを用いて,コミュニケーション活動のための情報や資料の収集をすることは,新しい事実の発見や,理解の深まりの過程で,英語を「読む」,英語で「話す」ことに対する興味・関心を高めることに有効であった。
 コミュニケーション能力の評価に関しては,コミュニケーション活動での取り組みの様子を最も重視しながら,その前後で,到達目標を明確にした適切な評価の場面を設定したことが,次の活動への生徒の意欲を生み,英語に対する興味・関心を高める上で有効であった。これからの英語科の学習指導においては,実践的コミュニケーション能力の育成を目指し,授業における,教科書,コミュニケーション活動,評価の有機的な関連付けが求められる。
 これら三つの関連付けを強める一つの視点として,生徒一人一人がもつ背景知識(スキーマ)の活用が有効であることがわかった。今後も,本研究を踏まえ,教師中心から学習者中心の指導法,学習形態,及び評価に関してのさらなる実践研究を進めていきたい。
 
参考文献
中学校学習指導要領(平成10年12月)解説−外国語編− 平成11年9月 文部省
高等学校学習指導要領解説 外国語編英語編 平成11年12月 文部省
VIVIAN COOK 1996. SECOND LANGUAGE LEARNING AND LANGUAGE TEACHING - SECOND EDITION -


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