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研究主題に迫るための手だて |
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実態調査の結果を踏まえ,生徒の背景知識(スキーマ)を活用した指導方法を工夫して,主に,以下に示すような手だてを考える。 |
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○ |
教科書の内容の理解を図り,言語材料の指導を十分に行った上で,生徒一人一人の背景知識(スキーマ)を活用したコミュニケーション活動を行う。 |
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・ |
コミュニケーション活動の具体的な形態として,教科書の題材や生徒の発達段階,学習段階に応じて,ペアワークやグループワーク,および,視聴覚教材やコンピュータの活用を取り入れる。 |
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・ |
コミュニケーション能力の評価として,コミュニケーション活動での取り組みの様子を最も重視しながら,その前後で,適切な評価の場面を設定する。 |
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5 |
授業研究 |
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研究主題に関する基本的な考え方と実態調査の結果を踏まえ,研究主題に迫るための手だてを講じ,2年間にわたり,中学校,高等学校で授業研究を行った。 |
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(1) |
中学校における授業研究 |
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中学校における1年目の授業研究は,第2学年において,生徒の一人一人の背景知識(スキーマ)を英文のレポート作成や,作成したレポートのグループ発表会の場で活用し,生徒の興味・関心を高め,実践的コミュニケーション能力を育てる学習指導の在り方を究明した。 |
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@ |
授業の構想(Unit 5 A Park or a Parking Area? (NEW HORIZON English Course Book 2)) |
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本単元においては,「身の回りの事実や状況を伝える」ことを発展させ,「自分の思いや考えを伝え合う」ことを目標とした。学習する言語材料が,不定詞や接続詞を含んだ複文や重文などに進み,これらを用い,「自分の思いや考えを伝え合う」ことができる段階にあると判断したためである。生徒は,各自英語でスピーチを書き,それをもとに,六つのグループに分かれ,発表会を行う。「書く」活動を,「読む」,「話す」,「聞く」活動とスピーチの発表という場で有機的に関連づけ,さらに,スピーチをする側と聞く側の間で,双方向的な活動のできるコミュニケーション活動を設定した。 |
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A |
授業の手だて及び考察 |
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ア |
生徒一人一人の背景知識(スキーマ)を活用したコミュニケーション活動の工夫 |
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スピーチの主題を決定する際,単に「自由なテーマで書いてみよう。」と投げかけても,書き出すことができない生徒が多い。これをつまずきの一つとしてとらえ,教科書で取り上げた話題や自分の夢や希望など,生徒にとって身近で,背景知識(スキーマ)のあるテーマを提示し,その中から各自のテーマを選択させたことにより,生徒は,相手に伝えたいこと,または伝えるべき内容をもつことができた。また,原稿作成にあたっては,休み時間や放課後を使ってALTとチームを組み,自分の思いが表現できるように,丁寧に指導したことが,発表会での意欲的な態度につながった。記録カード(自己評価表)によると,97%の生徒が,「原稿を作る時に,友達や先生にアドバイスをもらってよかった。」と回答し,共に学び合うことの喜びが感じられる。 |
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イ |
コミュニケーション活動の形態の工夫 |
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(ア) |
グループごとのスピーチ発表会 |
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発表会をグループ活動にしたことにより,生徒一人一人の言語活動場面や英語の使用量を増やすことができ,少人数の中で緊張感を和らげることもできた。また,英語の運用能力が高い生徒への配慮として,司会者として活躍の場を設けたところ,それぞれのグループで,発表者の紹介をしたり,コメントや質問をする場面で意欲的に取り組むことができた。さらに,発表の内容によっては,自分自身の関連する背景知識(スキーマ)を活性化させて,発表者に質問をしている生徒の姿も見受けられた。 |
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(イ) |
視聴覚機器の活用 |
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視聴覚機器の活用にはあらためて注目したい。自分の発音や話し方を視聴して学ぶ効果は大きい。ある生徒は,テープに録音して,発表会に向けて練習している場面で,wantを[went]と発音していることを他の生徒から指摘され,再度聞き直して,発音の違いに気付くことができた。教師が単に誤りを正すよりも,今後の発音の学習に向けて貴重な経験をすることができたと考えられる。 |
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ウ |
コミュニケーション能力の評価の工夫 |
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(ア) |
具体的な音声指導の工夫として,グループでの発表会の練習時に,テープレコーダーとビデオカメラを用いたが,生徒は,自分の音声や表情などをその場で視聴することができ,自己評価しながら学習活動ができた。また,その際,友達からも助言をしてもらうようにした。生徒が,相互に他からの評価を自分に生かしている様子がうかがえ,発表会への自信につながる有意義な活動であった。 |
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(イ) |
本単元において実施したスピーチ活動を,2学期末のオーラルテストとして取り上げるようにした。授業での反省を生かし,再度練習を重ねて行うことで,より深まりのある音声によるコミュニケーション活動が可能になるのではと期待したからである。生徒の取り組みは大変よく,堂々とした態度で行うことができていた。 |
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B |
まとめと今後の課題 |
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生徒も教師も到達すべき目標を明確にして,何をどのように行っていくか具体的な見通しをもつ活動であれば,生徒は意欲的に取り組むことができる。その過程で,予想される生徒のつまずきや実態に即した個への援助をどれだけ準備できるかが重要なことである。本題材では,これらのことを踏まえ,生徒の背景知識(スキーマ)をコミュニケーション活動の拠り所とし,生徒の学習への意欲的な取り組みを引き出すことには効果があった。実践的コミュニケーション能力の育成に向けて,平易ではあるが,より洗練された英語を使ったり,スピーチの質疑応答や感想発表などがより活発にできるなど,活動の「質」を高めていくことが今後の課題である。
中学校における2年目の授業研究は,次の通りである。 |