5 | 授業研究 | |||
研究の基本的な考えと実態調査の結果を踏まえ,手だてを講じ,生徒一人一人の興味・関心を生かした学習指導の在り方を究明するため,二年間にわたり農業・工業・商業科の各教科において授業研究を行った。 | ||||
(1) | 農業科における授業研究 | |||
一年目の授業研究は,科目「総合実習」において「サツマイモ栽培」を単元として扱い,生徒が主体的に取り組めることを基本に,積極的に農業機械に触れ,自らが収穫実習に参加できる授業を展開した。限られた時間内に成果(収穫量,簡単な選別,掘取機の操作,サツマイモの運搬,けがの防止)を出すことを基本として指導をした。また,生徒にとって「慣れ」が重大な事故や思いもよらない大きな事故につながることもあるので,特にけがの防止については重点を置き,指導した。 その結果,次のことが明らかになった。 農業では,生徒たちが農業経営者になれるように,授業に対する目的意識を「学んだことを将来に役立てること」として重点を置いて取り組ませた。そのための手だてとして,「分かりやすい授業」を行うために,「グループ学習」を取り入れ,個に応じた学習指導を実践することができた。生徒一人一人は,実習をともなう「総合実習」において,それぞれの分担した仕事に主体的に取り組むことができ,農業機械の操作や収穫の作業を通して,技術・技能を体で覚えることができ,教師は個に応じた授業展開を推進することができた。また,授業の過程においては,生徒と言葉がけをしながら,生徒たちは自分から教師に対して,満足できたという意思表示をして,それを教師は自己評価として,受け止めることができた。 |
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(2) | 工業科における授業研究 | |||
一年目の授業研究は,科目「課題研究」において,生徒が特に興味・関心をもったり,将来の進路において必要だと思われる内容を研究テーマとして設定し,教師の指導助言を受けながら,自転車用車輪キャリヤ,円盤型飛行物体,電気自動車,サッカーゴール,ゴーカートの作品製作を通して,問題の解決を図る授業を展開した。このとき一つの班の人数は,テーマの内容等を考慮しながら10人以下となるように調整し,生徒に責任をもたせるとともに,学習意欲が高められるようにした。 その結果,次のことが明らかになった。 工業では,生徒たちに身に付けさせた知識・技能が発揮できるよう目的をもたせ,より「分かりやすい授業」を行うことを目標にした。そのためには実践的な実習を取り入れ,生徒に興味・関心をもたせることが大切であると考え,手だてとして「課題研究」の授業において,「グループ学習」を中心とした少人数による授業展開を実践した。さらに,生徒が自ら考え,調べ,相談する場面を想定して,問題解決的な学習を取り入れ,結果として,生徒に積極性が身に付いた。「課題研究」でむずかしいのは,テーマ設定と評価である。テーマ設定においては,自分たちがどこまでできるかわからないものや,どういう形につくっていくのかを,生徒自身で考えさせ,目標をもたせるように留意した。そのことにより,生徒自身が問題を解決する力や自発的,創造的な力を養い,最終的には,「ものづくり」の大切さが実感できた。また,評価においては「授業態度や意欲」「出席状況」を考慮しながら,「自己評価」や「生徒同士の相互評価」を取り入れ,それを分析することにより,個に応じた学習指導における評価の在り方を考えることができた。 |
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(3) | 商業科における授業研究 | |||
一年目の授業研究は,科目「会計」において,財務諸表の作成を単元として扱い,決算整理から財務諸表である2区分の損益計算書,貸借対照表の内容と作成の手順を問題演習を通しながら理解させた。このとき,理解度が同じ程度の生徒を同じクラスにするという習熟度別のクラスに編成した。これにより生徒に合った学習内容や進度,少人数化による授業機会の増加をすることができた。また,生徒の自己評価の導入により生徒自身と教師が理解度を把握することを手だてとして考え,授業を展開した。 その結果,次のことが明らかになった。 商業では,授業に対する目的意識を資格を取得することに重点を置いて,生徒が主体的に取り組むための目標としてとらえ,その目標を達成するために,「内容がよく理解できる授業」に努めた。そのための手だてとして,特色ある学習形態の導入を図り,「会計」における理解度によって2学級を3クラスに分割した。そうすることにより,1クラスあたりの人数を少なくし,個に応じた授業展開を推進し,一人一人の生徒にかかわりながら,理解度の向上をめざした。ある程度,理解度の近い者同士が集まったことにより,教師が全員に問いを投げかけ,授業展開が困難だったクラスでも生徒とのコミュニケーションを図り,生徒のやる気を引き出すことができた。 また,「資格の取得」に重点を置いているため,評価の重点項目として,目標に到達することが理想であるが,日ごろの授業における評価も大切に扱っていきたいと考える。 なお,二年目の研究となる農業・工業・商業科における授業研究については次の通りである。 |
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資料1 サツマイモ収穫作業 |
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資料2 生徒の自己評価表 |