実践事例9
  学校の教育目標の具現化を目指した教育課程経営
  つくば市立手代木中学校
 教育課程経営の重点
   本校は,つくば研究学園都市の中心部に位置し,周囲には様々な研究機関がある。また,公園も多く,緑豊かな環境である。生徒数は453人,13学級。本年で創立22年目を迎えた。学校の教育目標「未来を志向し,今をひたむきに生きるたくましい生徒の育成」達成のための重点課題の一つに,「確かな学力の定着と評価」をあげている。これを受け,教育課程経営では,「学校の教育目標の具現化を目指した教育課程経営」を研究主題に掲げ,次の内容について特に重点的に研究実践を進めている。
 
 カリキュラム管理と評価システムの改善
 教育課程経営の実際
  (1)  カリキュラム管理
     学校の経営方針,学年・学級の目標,教科等の年間指導計画,学習指導案,生徒の自己評価カード,学習プリント等教育活動に関するものを一箇所に集中管理し,整理・充実させることにより,全ての職員が随時活用できるようにしている。本校の場合は,コンピュータのサーバ上で管理をし,第一画面から各項目へリンクできるようにしている。以下は,その具体的な内容である。
    @  カリキュラム管理のねらい
       生徒の教育活動を支援し,多面的な評価を実現するために,また,指導と評価の一体化を図るために,その資料となるものを管理し,いつでも活用し改善できるようにすること。
    A  カリキュラム管理の方法
       カリキュラムをコンピュータのサーバ上で管理する。
       校務分掌の中に担当者(教務部とCAI担当)を位置づける。
 担当者は学校教育目標を受け,前年度と変更しなければならない箇所がないかを検討する。リンクの順序や内容については随時見直しが必要である。また,全職員で進めるために,転入職員にその趣旨や方法等を説明することも大事な役目である。
       作成したファイルは,作成者自身が必ずサーバに保存する。
 本校では,職員会議を全員がノートパソコンを使いペーパーレスで行っているので,起案者はファイルをサーバに入れなければならない状況にある。
    B  カリキュラム管理の実際
       管理している項目
         項目およびその内容の一覧は次の通りである。
       
教育目標 ━━  県・市・学校の教育目標,二期制,目指す生徒像,12の資質
評価 ━━  基本的な考え方,評価規準,評価基準,観点別項目,
 テスト問題,自作教材,学校評価
教育課程編成 ━━  基本方針,週時程,必修教科,時数,時間割,行事
学校管理環境 ━━  情報,花壇整備,設備
学校評議員 ━━  評議員制度
       保管されている内容の活用と改善
        (ア)  評価の実際と改善について
           評価の基本的な考え方,各教科ごとの評価基準,観点別項目,各教科のテスト問題や自作教材等を管理している。
 生徒には,単元末や学期末に自己評価をさせているが,その自己評価表も,サーバに保管されているので,一つの学年を複数の教師が担当する場合でも同様に実施することができる。各教科担当が作成した生徒の評価表を用いて,授業する側も学習する側も相互に習得の度合いが確認できるとともに,指導の改善にも生かすことができる。
 生徒のポートフォリオはディジタルポートフォリオとして保管し,主に総合的な学習の時間の記録を積み上げたり,成果を評価する際の手だてとして活用している。
        (イ)  習熟度別コース学習(少人数指導)
           教育目標の重点課題の一つである「確かな学力の定着を図る」ための手だてとして,数学と英語で習熟度別コース学習を実施している。年間指導計画,単元計画,名簿,学習指導案,コース一覧などがサーバ上に記録されている。特に基礎・基本の充実のために行っている内容についてディレクトリを作り,リンクできるようにしている。
 実施にあたっては,生徒の目標達成度が明確になる必要があるので,以下のような流れでコンピュータに保管している。
 今年度前期終了時でその成果の確認を行った。生徒の中には得点の伸びが大きく,途中で発展的な内容のコースへ移った生徒もいる。教師からの助言は,データをもとにしたものと普段の観察記録から裏付ける資料をきちんとそろえて実施することができる。それぞれのコースごとに生徒の感想を求めたり,実力テストの得点状況をコンピュータで分析し,分布の変化を比較したデータを作成したりして,個々の評価や教育相談の資料に活用している。
        (ウ)  ティーム・ティーチングによる授業
           今年度,理科と英語で実施している。複数の教師が授業にあたり評価するという点では,生徒のデータや単元ごとの学習計画などの管理が非常に重要である。たとえば,生徒のよさや可能性を多方面から把握し共有できるようにすること,教材・教具の工夫をすること,教師の役割分担を明確にしておくこと,単元や指導時期に配慮して評価をすること等は,ティーム・ティーチング実施上重要な点であるので,それらにかかわるデータを,今後もできる限り保管し,活用していく予定である。
        (エ)  選択教科
           選択教科の学習は,第1学年で1コース(週1時間),第2学年で2コース(週2時間),第3学年で3コース(週4時間)設定されている。開設コースの決定から生徒の履修コース決定までを前年度中に完了し,コンピュータに保存しておく。担当教員が転勤しても生徒の記録はそのまま引き継がれる。ガイダンスのための資料は教科担当者と学年職員との相談で作成し,新学年になって新たに決定したことを加えていけるようになっている。
 選択教科にかかわるフォルダには,選択コース名,名簿,学習指導案,指導の成果,自作教材等が保管されている。例えば,同じ内容の授業でも前期と後期で別の教師が担当する計画の場合,前期の状況から,「制作に時間がかかるので,生徒に進度を速めるように」等,入力されているデータをもとに助言することが可能である。
        (オ)  単位時間の弾力化
           各教科の25分,50分,75分等の授業計画や時間割,実施した成果の記録などがある。75分の授業内容については,年間指導計画を見直し,生徒の活動(体験)を中心に計画的に実施する。時間割上では,第1学年では英語と国語の組合せを1週間に2回設定しておき,75分で実施したい単元が計画されている教科を優先に,別の教科は25分で実施するという形をとっている。
 時数の計算のためには教科担任からの正確な連絡が必要であるが,新教育課程の実施により,ただ単に35週をかけるだけの計算では生み出せない数を,25分を1モジュールとして設定し,更に時間割を前期・後期各2種類作成して対応している。実施時数は,各教科担当者によってコンピュータのサーバに前期,後期とも半分まで終了した時点で入力され,週毎,月毎に集計している。
        (カ)  総合的な学習の時間
           学習指導案,年間指導計画,教科・領域との関連図,外部講師(ゲストティーチャー)の連絡先,調べ学習用のインターネットのアドレス,自作資料,全生徒の課題一覧,各テーマおよび分科会ごとの名簿,日ごろの実践記録,3年生が作成する卒業論文,1・2年生が作る「学ぶ楽しさ体験記」を記録している。ただし,生徒個人ではグループウェア(スタディノート)やフロッピーディスクに保存していて,教師用のサーバとは別になっている。家庭への活動内容の連絡としても生徒が記録したワークシートをポートフォリオとして保存しておき,提示することができる。
 また,体験活動の一つとしての研究機関等の訪問時に,教師指導用としてよく用いられるのは,訪問先の職員の方との約束の仕方や電話のかけ方などをまとめたものである。
  (2)  カリキュラム評価システムの改善
     カリキュラムを適切に実施していくためには,手順が明確に示されていることが重要である。評価の組織と年間の評価の流れ図は全職員周知を図っている。まず,評価資料を十分収集すること。検討する時間を確保すること。続いて整理した問題点を検討し,その原因や背景を分析すること。その上で改善案を作成し実施することである。評価は改善に活用されることに意義があるので,組織的・計画的に改善案の作成を進めていくことが重要となる。評価の在り方を,保護者・地域にも公開していくことは,これからの学校経営上,非常に大切である。さまざまな機会を捉えて趣旨を十分説明し,学校の実態に応じて実施していかなければならない。
    @  学校自己評価
       学校で行っているあらゆる教育活動に関する内容について,学校評価表<教職員用>を使って全職員で自己評価を実施してきた。評価の項目は,「教育目標がどれだけ具現化されたか」,「学習指導(必修教科,選択教科,道徳,特別活動,総合的な学習の時間)や生徒指導,進路指導,保健安全指導の内容は十分であったか」,「学校行事や日課表,校内研修などの教育課題解決に向けてどれだけ取り組むことができたか」に大別される。それらに対しての具体的な質問に4段階で評価をし,さらに,自由記述方式も取り入れて行っている。
 たとえば,選択教科の履修幅が広がったことで教師の持ち時間が増えたという声が多くあった。時数のデータからも,教科ごとに何時間増えているのかが集計されたのでそれを参考にして後期の時数配分を変えた。前期には教員1人が1コースを担当していたが,後期は同一教科の2コースをまとめて1コースにした。2人の教師が配置されてはいるが,その内容によって1人で授業をするか,ティームで行うか,内容によって決められるようにした。
    A  外部評価導入の必要性
       学校評議員会議のメンバーは,PTAをはじめとする地域から5人,学校から4人の合計9人である。学期に1度,定例会を開き,学校運営全体について話をする。その際,学校評価表<保護者・地域用>を提示して,メンバーに感想や意見を求めている。普段の保護者等の声の取り入れについては,保護者会,学校のWebページ,学校・学年便りにより情報提供を積極的に行うとともに,授業参観を数日にわたって実施している。また,学校評議員会議の外部メンバーは,それぞれの立場から生徒の取り組みの様子を見て,問題点や改善点を指摘する。カリキュラム評価に関してもネットワークによる交流学習の意義,その成果と課題に関しては,教師と子どもの自己満足に終わらないためにも外部評価が重要になる。つまり,独創的な内容に取り組むほど,その妥当性を検証するシステムの必要性が高いと考えられる。
 今年度,外部評価により見直しの方向に向かっているのは部活動の加入について,PTA行事のもち方について,小・中学校の連携を図る方法について等である。今後も話し合う機会を継続してもち,改善に努める予定である。
 今後の課題
  (1)  サーバ上カリキュラム管理の組織化と活用の充実
     職員会議の議事内容については,全職員が入力・検索できるようになっているが,より活用が図られるような構成上の工夫や実質的な改善につなげる工夫をすること。
  (2)  カリキュラム評価の視点の再考
     学校としてポイントを絞った評価の試みを模索したい。
  (3)  コンピュータのサーバ上に収集されたデータの有効な使い方
     数々のデータが実際の授業改善にどのように活用されたのかを,年度末には具体的に検討し改善につなげる。
  (4)  カリキュラム管理上の情報公開の限度
     カリキュラムに関する情報公開について,学校としての制限をどのように設定するか,具体的に検討しておくことが必要である。
 
   ホームページ http://www.tsukuba-ibk.ed.jp/~s-teshirogi-j/


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