実践事例8 | ||||||||||||
自ら追究する力の育成を目指した教育課程経営の工夫改善 | ||||||||||||
潮来市立日の出中学校 | ||||||||||||
1 | 教育課程経営の重点 | |||||||||||
本校は,潮来市の南に位置し,鹿島臨海工業地域の後背地としてニュータウン計画により生まれた住宅地にあり,潮来市立潮来第一中学校から分離新設した開校3年目の学校である。生徒数は245人,7学級の規模を有する。 本校では,創造性,国際性などを育み,21世紀を担う心豊かなたくましい人間の育成と特色ある学校(オンリーワンの学校)を目指して教育の実践に取り組んでいる。 保護者を含め地域の教育に対する関心は高く,PTAでは朝の挨拶運動や親子活動等に熱心に取り組み,さらに,地域の教育力を生かす「おやじプロジェクト」も発足し活動している。 そこで,教育課程経営では,上記の研究主題を掲げ,次の3つの内容について,特に重点的に研究実践を進めている。 |
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2 | 教育課程経営の実際 | |||||||||||
(1) | 創意を生かした教育課程の編成 | |||||||||||
@ | 教育課程の編成と効果的な経営のための調査 | |||||||||||
教育課程を編成するに当たっては,保護者の願いが生かされるように,前年度末に「親の願いアンケート」を実施した(資料1)。保護者の願いは,アンケートの結果から,多い順に「問題や困難にぶつかったとき,正しく解決できる。」(25%)「自分で目標をもって学習に取り組むことができる。」(23%)「他人に対して思いやりの気持ちをもつことができる。」(21%)であった。また,今年度当初,生徒が学習を自分のものとしてとらえ,学ぶ意欲をさらに高め自ら学習に取り組んでいけるように「生徒の意識・実態調査」を実施した(資料2)。保護者の意識や生徒の実態を明らかにし,本校の教育の重点項目や育てたい力などを明確にしたところ,教育の重点項目の一つとして「粘り強く,主体的に学び続ける力をもった生徒の育成」が導き出された。特に,育てたい力として「自ら追究する力」があげられた。 | ||||||||||||
資料1 親の願いアンケート用紙 資料2 生徒の意識・実態調査用紙 |
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A | 教育課程編成の創意工夫 | |||||||||||
「自ら追究する力」の育成のために,具体的な対応策が,各教科や選択教科,総合的な学習の時間等に,より具体化した力として指導計画に盛り込まれ,段階的・計画的に身に付けられるようにした。 | ||||||||||||
ア | 「まとめ取り」による弾力的な運用と授業時数の確保 | |||||||||||
指導者の創意を生かし,授業のより弾力的な運用ができるように「まとめ取り」の授業を計画した。時間割では「まとめ取り」をしない教科の授業時数を多く設定し,「まとめ取り」をする必要のある授業に,適切な時期に計画的に充てられるように工夫した。さらに授業時数をコンピュータで管理し各教科の時数の確保に努めた。 | ||||||||||||
イ | 選択教科や総合的な学習の時間の授業時数設定の工夫 | |||||||||||
選択教科においては, 資料3のように各学年において適切な時間を配置した。特に第3学年では,深化または発展的な学習は週連続2時間(前期・後期制)と週1時間(通年),補充的な学習1時間(3週ローテーション)を設定した。 総合的な学習の時間は,全学年週2時間実施し,残りの時間や確保できなかった時間を「まとめ取り」として,弾力的に運用できるようにした。 |
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資料3 授業時数の編成(平成14年度) |
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(2) | 「自ら追究する力」の育成を目指した指導方法や指導体制の工夫・改善 | |||||||||||
生徒一人一人の「自ら追究する力」が育まれるように,課題解決学習やコース別選択学習などを工夫したり,よりきめ細かな指導・支援ができるように,指導方法や指導体制に改善を加えながら次のように取り組んできた。 | ||||||||||||
@ | ティーム・ティーチング,少人数指導,個別指導等による指導方法・指導体制 | |||||||||||
A | 地域の教育力を生かした授業の指導体制 | |||||||||||
B | 情報通信ネットワークを活用した授業の指導体制 | |||||||||||
C | 学級担任二人制による総合的な指導体制 | |||||||||||
(3) | 教育課程の評価 | |||||||||||
@ | 教育課程における内部評価 | |||||||||||
各教科等においては,単元ごと,学期ごとに,自己点検・自己評価しながら授業を実施した。さらに,教科部やティーム・ティーチングを実施する教員同士も定期的に自己評価を実施し,指導計画の見直しや多様な指導方法,評価の在り方についての工夫改善に努めてきた。 学校行事等については終了後に全職員で反省を行い,次の学校行事に生かせるように改善に努めている。例えば,初めて実施した5月開催の体育祭については,練習時間,指導体制,生徒主体の進め方等について課題が出され,計画段階からの改善が図られた。文化祭においても体育祭と共通する課題を改善して実施し,成功させることができた。更に,学期末には,全職員で教育課程の反省を評価用紙に記入する方法で実施した。提出された課題については,対応策・改善策を全職員で話し合い,可能な範囲で速やかな改善に取り組んだ。残された課題は,次年度の教育課程の編成において改善していく予定である。 |
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A | 生徒や保護者,地域への説明と外部評価の工夫(対話型) | |||||||||||
教育課程の編成・実施に当たっては,生徒や保護者のアンケートをもとに,思いや願いを生かすように努めた。学校通信や学年・学級だより,保護者会,地区懇談会等において新教育課程の実施について説明し直接意見を聞くとともに,学年会や各教科部,校務会等で話し合いを持ち,改善に努めてきた。 このように教育課程の編成や評価に保護者や地域住民がアンケートや対話の形で加わる中で,保護者の意識やPTA活動に変化が現れてきている。PTA活動では,広報紙が月1回の割合で発行されるようになったり,親子事業は,今まで体験型の単発的なものであったのに対し,総合的な学習の時間との連携で実施するようになった。例えば,第1学年では前期に「潮来市について調べよう」という単元で追究活動を実施したが,その発展としてPTA親子事業で,隣接する鹿嶋市の鹿島神宮探索を実施し,総合的な学習の時間にレポートとしてまとめるなどの連携が図られるようになってきた。 地域の外部講師については,事前と事後に打ち合わせを持ち,効果的な指導ができるように工夫改善がなされてきた。例えば,技術科では,地域の大工さんに依頼したところ,カンナの刃を研いだり,そりを一台一台直したりしていただいた。さらに,使う場に応じたいろいろなカンナを用意してくれ,用途に応じて使い分けることなどを生徒が体験するような機会も得た。このように地域の講師の方々には,打ち合わせ等を利用して,積極的に学校への思いや授業へのアイディアを提案していただき,工夫改善につなげることができている。 外部評価については,地域の方々への学校公開の際に簡単なアンケートを依頼した。さらに,体育祭,文化祭等の学校行事や教育委員,民生委員の学校訪問の際に学校の様子を説明するとともに意見を聞き,教育課程の編成や授業改善に役立てている。 |
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3 | 今後の課題 | |||||||||||
「自ら追究する力」を育成するために,生徒一人一人に支援できる指導体制を構築するとともに,より客観性のある教育課程の評価を工夫し,地域との連携を深め,地域に根ざした学校として,地域住民とともに特色ある学校にしていきたい。 | ||||||||||||
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