実践事例5
  子どもの学びの視点に立った教育課程経営
  結城市立城西小学校
 教育課程経営の重点
   本校は,結城市の西端に位置し,今年で創立19年目を迎える。地域の人々は,本校に対して「我らがつくった学校」という意識が強く,教育に対する関心は高い。児童数は295人,12学級の規模の学校である。本校は,教育目標として「豊かな心をもち自ら考え行動できる心身ともにたくましい子どもの育成」を掲げ,各教科,道徳,特別活動と総合的な学習の時間を関連させた指導を重視したバランスのとれた教育課程経営を目指すべく,特に,「子どもの学びの視点に立った教育課程経営」を研究主題に掲げ,次の3つの内容について重点的に研究実践を進めている。
 
 教育課程経営の評価結果を生かした教育課程の編成と実施
 「関連」を重視した授業づくり
 クォーター制の実施と改善
 教育課程経営の実際
  (1)  教育課程経営の評価結果を生かした教育課程の編成
    @  教育課程の評価の流れ図の活用
       本校では,学校評価の中に教育課程の評価を位置づけている。

資料1 教育課程の評価の流れ図(一部)

 よりよい教育課程の経営のために,評価の流れ図を作成した。評価計画の中に評価の実施・集計・考察を位置づけ,改善のための見通しや手順を年度初めに明確にしておくようにした。全職員の参加のもとに評価結果を考察し,改善策を立てて次の学期につなげていくことが重要である。
    A  教師による評価
       本校では,重点事項と具現化の視点,教科経営,校内研修について評価を行っている。特に,重点事項と具現化の視点は,教育課程実施状況,基礎基本の確実な定着及び確かな学力の向上,心の教育の充実,生徒指導の充実など7つの評価項目になっている。教師は,各項目について評価し考察を実施している。そして,どのように取り組んだらよいか意見を出し合い,それを次の学期に生かせるようにしている。
    B  児童による評価
       学級経営計画の中の「つけたい力」を児童向けに書き直して文章化し,それを児童に評価させている。この結果を生かして各担任は考察を行い,次の学期の経営の努力したい点を押さえている。
    C  保護者による評価
       保護者にも学校に関するアンケート調査を実施し,保護者の目から児童の姿を通して本校の教育方針や重視している教育活動について評価してもらっている。本校の教育方針や重視している教育活動について,保護者に尋ねることによって,学校についての理解・啓発を図ることができた。
 これらのアンケート調査から得られた保護者の意見や要望を教育課程経営に生かす資料にしている。

資料2 学校に関するアンケート調査用紙(一部)
    D  教育課程の編成
       本校では,学校経営方針の一つに,学校経営の全領域に かかわってPDSサイクルを活用して学校経営を行い,教育目標の具現化を図っていくことをあげている。各種行事等の後に児童,保護者,教師による振り返りを行い,改善すべき点を明確にして次年度の教育課程の編成に生かすようにしている。例えば,学校行事においては,児童の積極性や自主性を育てるために,各種行事が児童主体となって運営できるように計画の段階から児童が参加できるようにした。また,PTA行事を含めた行事の精選を図り,効率的で児童が楽しめる内容になるように配慮した。各教科等の指導においても,単元レベルで年間指導計画の見直しを図りながら,授業の改善を行い,指導と評価の一体化を目指して努力している。
 このように教育課程の編成にあたっては,PDSサイクルを活用して全職員でかかわるようにし,よりよい教育課程の編成を目指している。
    E  学校経営計画を活用した教育課程経営の編成と実施
       本校では,知徳体のバランスのとれた教育課程の編成と実践を目指し,年間の見通しに立った教育課程経営が実施できるように「経営計画」を作成し,これを活用している。また,学校経営の全領域にわたってPDSのサイクルを弾力的に活用できるように,「経営計画」の中に評価の欄を設けている。「経営計画」の内容は,次の通りである。
 学校概要
 学校経営(教育目標,経営方針,重点事項と具現化の視点)
 教育課程(教育課程の編成,授業日数,学校行事時数一覧,曜日別学年別授業時数)
 学年経営(学年目標,経営方針,自信を引き出す場・いかす場・力をつける場)
 学習指導(各教科経営,道徳教育,特別活動,総合的な学習の時間,各種教育)
 生徒指導(生徒指導年間計画,教育相談,長欠・いじめ,看護当番)
 学校保健安全教育(保健安全教育,生活安全教育,交通安全教育,給食指導,清掃美化指導)
 校内研修(重点事項,その他の研修,年間研修計画)
 危機管理(学校安全管理及び責任者,緊急事態発生時の体制)
 施設設備等の充実
 保護者・地域等との連携
 その他(学校評議員設置・運営要項)

 この学校経営計画を有効に活用することで,教育課程経営が円滑に行われるようにしている。例えば,校内研修については,研修計画に沿って実施責任者が中心となり事前に計画を提示し,校務会において全職員共通理解のもと実施している。実施後は,評価を行い次年度の計画改善に生かしている。
  (2)  「関連」を重視した授業づくり
    @  「関連」を重視した授業事例
       子どもの学びにあわせた柔軟な教育課程を編成するため,各教科,道徳,特別活動と総合的な学習の時間を関連させた授業づくりに努めている。
 「関連」とは,ねらいや性格が異なる教科であっても,さらに学習効果を上げるために, そこに含まれるいくつかの内容を関連させて組織することである。
 子どもにとっては学ぶということを教科ごとに区別して行っているわけではない。特に, 「総合的な学習の時間」では,その学習課題の設定や課題解決の方法等,他教科で学んだことを関連させて実施していくことが大切である。例えば,3年生の理科では,チョウの代わりに地域の素材であるカイコガを使い,ケゴを育てて繭を作った。社会の地域の伝統工芸や国語の伝え合う力を育てる教材と関連させたり,繭を使って様々なものを作ったりして活動が広がった。また,5年生では,総合的な学習の時間の「稲作り」を社会科の米作りのさかんな庄内平野,日本の農産物と耕地,理科の植物の成長,家庭科の収穫した米や野菜を使った料理等との関連を図って実施した。収穫米は,城西まつりでのバザー販売,収穫祭の実施等と学習活動に広がりをもたらした。
 このように,各学年で関連を図った授業を組み立てることによって,教材研究も深まり,相互に協力し合いながら授業を進めることができるようになってきた。
    A  指導と評価
       関連を重視した授業づくりにおいては,「振り返りの時間」を重視し,自己評価・相互評価を充実させることにより,児童が自らの学びを振り返ることが何よりも重要になってくる。振り返りの時間を重視したのは,学習の連続性を大切にしたためである。1時間の授業や単元の中で振り返りの時間を設定し,自らの学びを振り返り,新たな課題を発見する時間を設ける。例えば,1年生の生活科の授業では,作品をもとにグループ内で秋の虫への思いや気づきを報告し合うことで,自分と友達のとらえ方や関わり方の違い,よさを感じ合うことができる振り返りができた。学習内容の定着とともに自信とやる気がでて,新たな課題の追究への意欲が高まった。
  (3)  クォーター制の実施と改善
     教師の指導観を変え,子どもの学ぶ観点に立った柔軟な教育課程を編成するための核となるのが,クォーター制の導入である。
 クォーター制とは,1単位時間を15分として,学習内容や子どもの実態にあわせて柔軟に日課表を編成する方法である。学習内容や子どもの実態に合わせて,15分(1クォーター)から90分(6クォーター)の時間をとることができる。また,クォーター制を有効に生かすために,日課表を工夫し1校時と2校時の間の休み時間を5分間としてノーチャイムとし,また,3校時と4校時の間も同様とした。
 クォーター制を生かした取り組みとして,例えば,体育で子どもたちが意欲を見せるゲームの時間を1クォーター増やして実施するように年間計画に位置づけている。また,逆に,3クォーターの算数の授業で,単元によっては子どもの定着度を考慮して,2クォーターで実施し,それによって生じた時間を発展問題や個別指導の時間に充てるように計画している。さらに,社会科でインターネットなどを使った調べ学習や理科の観察・実験などは,時間をかけて実施した方が定着すると考え, 連続して6クォーター実施する場合もある。また,理科の植物の観察や国語の漢字,算数の計算練習など毎日少しずつ実施した方が効果が上がる場合は,1クォーターずつ決まった時間に毎日実施する方法もある。クォーター制の導入により子どもの学びに合わせた柔軟な教育課程の編成が可能である。
 以上のように,子どもたちの実態と学習内容から考えて,事前にクォーターを年間指導計画に位置づけるように改善することで,子どもの学びに合わせた柔軟な教育課程の編成が可能となっている。
 今後の課題
  (1)  教科経営の評価については,各単元ごとに行い,年度ごとに重点教科を決めて年間計画の見直しを図っていく。
  (2)  学校評議員制の活用を図り,地域・保護者の声を学校教育の中に反映する。


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