実践事例3
  外部との連携を重視した教育課程経営
  潮来市立日の出小学校
 教育課程経営の重点
   本校は,潮来市の南に位置し,創立21年目を迎える。児童数519人,19学級である。本校では,学校の教育目標「情操豊かで,創造力のある,たくましい子どもの育成」達成のための重点課題の一つに「開かれた学校」をあげている。教育課程経営では,それを受けて「外部との連携を重視した教育課程経営」を研究主題に掲げ,次の3つの内容について特に重点的に研究実践を進めている。
 
 積極的な情報公開の在り方
 内部評価と外部評価の工夫
 地域人材の活用
 教育課程経営の実際
  資料1 全体構想図
  (1)  全体構想の作成
     本校においては,新しい教育課程を主体的に受け止め,自校で推進する教育活動を全体としてどのようにプラニングするのか,特色ある教育課程と保護者地域との関連性を明確にしながら,全体構想を描いた。
  (2)  積極的な情報公開
     保護者や地域との連携を深めるためには,また,適切な評価を受けるためには,評価判断の基となるべく情報が伝えられていることが肝要である。本校では以下のような機会をとらえて情報を発信し,保護者や地域の声を教育課程経営に生かすようにしてきた。
    @  学校・学年・学級通信の発行
       学校通信は,本校の教育プランの実践記録であり,保護者と地域の人へ出している便りである。地域の人へは,区長を通して回覧の形で配付している。この便りには避難訓練,遠足,陸上記録会などの行事や総合的な学習の取り組み状況,PTA図書委員会の読み聞かせ,児童の作文など学校での児童の活動の様子を写真入りで詳しく載せている。
 学年・学級通信は,学年の児童の学習や生活の様子・行事予定・保護者への連絡とお願いや来週の学習予定を載せて配付し,保護者に学校経営,学年・学級経営への理解を深める資料を提供している。
    A  ホームページの更新
       ホームページは,教育活動を地域へも公開できる絶好の場である。本校では,「今日の日の出小ページ」を設け,児童の様子を知ることができるように更新している。視聴覚主任を中心に,低中高ブロック代表からなるホームページ委員会を設立し,毎月1回検討会を開いている。検討会では,委員会の運営に関すること・更新状況の課題に関すること等が話し合われている。さらに一方通行にならないように,掲示板を本年度から設け,地域からの意見や要望等を受信できるようにしている。
    B  自由参観の実施
       保護者の労働形態も共働きが増加傾向にある中,これまでの学期1回程度,1時間の授業参観では,なかなか児童の学校での様子を見る機会が得られない状況にある。今年度は,様々な活動時間を参観していただき, , 学校でのがんばりの様子を認めるよい機会にするために登校から下校まで自由な時間に参観できる日を月1回設定している。また,参観された方から回数や時期についての意見等を聞き,今後の参考にしている。
  (3)  内部評価と外部評価の工夫
    @  教職員の自己評価
       本年度の校内研修は,研究部の組織づくりから始まった。授業研究部は,基礎学力の向上を目指して各学年から1名ずつの推進委員で構成した。評価研究部は,昨年度からの継続課題である教科単元の評価規準や形成的評価を効果的に実施するための補助簿の作成,特別活動の評価等の研修を主に進めてきた。また,新しい通知表づくりと保護者への啓発活動も研究部が中心となって取り組んできた。この評価研究部は低中高のブロック代表で構成されている。
 2学期以降はまず適切な学校評価の作成と分析・検討に取り組んできた。ややもすると型にはまったトップダウン形式になりがちな傾向から脱却し,次学期や次年度の改善点を教職員一同で見据えていこうという風土を醸成したかったからである。次に,自己点検・自己評価の工夫を主眼において評価用紙の在り方の話し合いを重ねた。素直に自己の教育活動を振り返り,本校の改善点を鮮明にし,明日の教育活動が児童にとってさらに良くなるためにはどうすべきなのかを真摯に見つけるための足がかりとしたかったからである。結果的には,「これまでの3段階評価から5段階評価にすることによって曖昧な評価を避ける。」「評価の観点を1設問につき1事項とする」。」。「自己評価ができる表現記述にする「学期の教育活動の実態に沿った評価の観点を追加する。」などの改善点が出されそれらをもとに評価用紙を改善し,自己評価に取り組んだ。また,教育課程のP(計画)―D(実践) ―C(点検・評価)―A(更新)を年間のスパンでとらえ,改善点を全職員で練り合い検討を進め確認し合うことで次年度の意欲にもつながり,学校全体で児童を育てていこうとする共通認識が図られていった。教育課程委員会は,来年度の教育課程の編成の在り方を協議することを目的として開かれている。(構成メンバーは企画会と同じメンバーとし主に時間割の組み方週時程等)と行事の在り方について教育課程の編成について検討してきた。
    A  外部評価の実施
       児童・保護者は,学校で行われている教育活動についての説明を受け,理解し,自らの価値観に照らし合わせて意見を述べ,納得したいと望んでいる。教育課程の評価が,これまで学期末評価を中心に教職員によって行われてきたが,適切な反省と見通しを持ち信頼のおける評価を進める上で,今後は形成的な評価とともに児童や保護者にも教育課程経営に対する意見や評価を求め,教育課程の改善に生かしていく必要がある。自己評価は,厳しい評価を避ける傾向がある。そこで,評価の内容や方法を工夫しながら,信頼性や妥当性を高めるための方策としてこの自己評価を実施してきた。評価項目は,校内評価研究部で検討し,自己評価の結果については分析と検討を行い,教育課程委員会や職員会議で報告,提案をしながら次の学期や次年度に生かせるようにしてきた。
 従来,教育活動の見直しは,教職員の視点でなされることが多かった。本校では,児童の評価としては,3年生以上に学校の教育目標に関する具体的な項目について自己評価の機会を設け,児童自身が振り返り,支援する側の教師の参考にしている。そして,学期の校内評価におけるマイナス点を次の学期以降プラスにするためにはどうすればよいかをじっくり話し合う中で,原因を素直に見つめ,教師全員で改善策を練り合い提案してきた。
        資料2 保護者評価用紙(一部)
  (4)  地域人材の活用
     学校の諸活動のあらゆる場面で,幅広い経験や優れた知識・技能をもつ地域協力者による協力体制を進めることは,学力の向上のみならず児童が地域社会の一員としての自覚を高めることにもつながる。本校では,昨年度から体育(水泳),国語(書写)で,本年度は総合的な学習の時間(英語活動)においても地域人材を活用した学習支援事業を実施している。
 さらに,これまで社会科や生活科の学習,総合的な学習の時間で継続して活用してきた学校支援ボランティアとの共通理解を一層図り,児童にとって満足感のある学習と地域を愛する心の育成を進めている。その結果,支援者の学校理解が一層深まるとともに,教職員も支援者から刺激を受けたり,児童の指導に役立つものを得たりすることができた。
 次に,校外学習安全・登下校安全ボランティアと学校支援ボランティアの活動内容等について示す。
   
 今後の課題
   「学校を開く」時代の流れの中で,真に保護者・地域と連携を進めていく上で,最も求められているのが,私たち教職員の心を開くことであると考える。外部評価を実施してもそれが今後の教育課程経営の中で生かされ実践され評価されなければ,何の意味ももたない。形づくりから中身づくりへ教職員一丸となってさらに取り組んでいきたい。
 
   ホームページ http://www.edu.pref.ibaraki.jp/board/link/school/sc-index.htm
   参考文献
   初等教育資料 752 754 文部科学省
 新しい時代を拓く学校教育の展開V 茨城県教育委員会


[目次へ]