授業及び単元における教育課程経営
   授業及び単元における教育課程経営での「評価・対応」「改善」「計画」「実践」の取り組みのポイントを示す。
 
@  評価・対応
   児童生徒の学習状況と成長の把握のための評価
   指導計画・指導内容等の改善のための評価
   評価をもとにした児童生徒への適切な対応
A  改善
   実践した授業及び単元の指導計画・指導内容等の改善
   次時の授業及び次単元の指導計画・指導内容等の改善
B  計画
   次時の授業及び次単元の指導計画の確認,立案
   教材と教具の準備・開発
   評価計画の改善
C  実践
   指導計画に基づいた実践
   教材と教具の保管
  (1)  授業における教育課程経営
     授業は,教育課程経営の最小単位である。よって,この教育課程経営が基本となり,決して疎かにすることはできない。日々の1単位時間の授業の積み重ねが1単元の教育課程経営, そして,学期及び年間における教育課程経営につながっていくのである。
    @  評価・対応
       誰評価を行うためには,校内で「何のために(目的)」「誰が(主体)」「何を(対象)」「いつ(時期)」「どのように(方法)」について共通理解を図っておく必要がある。
 1単位時間の授業における評価の目的は,「児童生徒の学習状況と成長の把握」及び「指導計画・指導内容等の改善」の二つがあげられる。児童生徒に序列をつけたり,ランクづけしたりするのが,ここでの評価の目的ではない。ここに示した評価の目的を達成するためには,指導目標の明確化,適切な評価規準,評価方法の明確化,実際の教師の見取り,児童生徒の自己評価が特に重要になっている。【実践事例1参照】
 次に,評価の目的,主体,時期に応じた評価の在り方をまとめたものを示す。
       児童生徒の学習状況と成長の把握のための評価
       
主体 授業者 児童生徒
時期 授業中
  • 目標に準拠した評価
  • 個人内評価
  • 目標にとらわれない評価
  • 自己評価
  • 相互評価
授業後
  • 目標に準拠した評価
  • 個人内評価
  • 目標にとらわれない評価
  • 補助簿への記入
 
       指導計画・指導内容等の改善のための評価
       
主体 授業者 参観者 児童生徒
時期 授業中
  • 児童生徒の学習状況と成長の把握をもとにした評価
  • 指導計画(指導案)に基づいた評価
 
授業後
  • 児童生徒の学習状況と成長の把握をもとにした評価
  • 授業記録をもとにした評価
  • 指導計画(指導案)に基づいた評価結果と授業記録による授業批評
  • 授業意見票による評価
 「授業意見票」とは,授業改善に役立たせるために,児童生徒が意見を記入する用紙である。授業改善に役立たせるものとするためには,授業意見票に記入する内容を明確にしておく必要がある。具体的には,次のような内容があげられる。
 今日の授業の課題や教材に興味がもてたか。
 授業の流れで分からなかったことはないか。
 時間は十分であったか。
 学習形態は自分に合っていたか。
       評価をもとにした児童生徒への適切な対応
         対応とは,評価から得られた情報をもとに,即児童生徒へ適切な指導を行うことである。
 指導計画または評価計画の中に予想される対応を明確にしておくことが必要となる。特に,目標に準拠した評価で十分満足できる状況まで実現していない児童生徒への対応を具体的に明記しておくとよい。対応策の具体例としては,補助資料の提示,補充問題や発展問題を使った指導があげられる。この対応は,1単位時間の授業の中で,そして,授業後も行われる。
    A  改善
       1単位時間の授業における改善として,次のような内容があげられる。
       実践した授業の指導計画・指導内容等の改善
         本時の評価と対応の結果をもとに,実施した授業の指導計画,指導内容,指導方法,評価方法等の改善策を明確にし,指導計画,評価計画,週計画に朱書したりする。
       次時の授業の指導計画・指導内容等の改善
         本時の評価と対応の結果をもとに,次時の導入や展開,評価等についての改善策を明確にし,指導計画や評価計画等に朱書したりする。
    B  計画
       次時の授業の指導計画の確認,立案
         ここでは,改善された指導計画を確認したり,新たに指導計画を立案したりする。
       教材と教具の準備・開発
         指導計画に基づいて,教材や教具を準備・開発することも,この計画に含まれる。
       評価計画の改善
         改善された指導計画に基づいて,評価計画も改善する。
    C  実践
       指導計画に基づいた実践
         前時の改善によって得られた情報を踏まえ,指導計画に基づいて指導する。
       教材と教具の保管
         1単位時間の授業で使った教材と教具について,コメントを記入してカリキュラムセンター等に保管し,他の学級で活用できるようにしておく。また,次年度も活用できるようにし,教材と教具の共有化に努める。
  (2)  単元における教育課程経営
    @  評価・対応
       1単元を実践しての評価では,1単位時間の授業の評価と同様,評価の目的として,「児童生徒の学習状況と成長の把握」と「指導計画・指導内容等の改善」の二つがあげられる。
       児童生徒の学習状況と成長の把握のための評価
         ここでは,基礎的・基本的な内容の確実な定着を図る観点からも,単元の目標に対する児童生徒の実現状況を把握しなければならない。この方法としては,目標に準拠した評価があげられる。その他,児童生徒個々の成長を把握する個人内評価や児童生徒の結果として学んだこと,即ち目標にとらわれない評価も重視していかなければならない。
       指導計画・指導内容等の改善のための評価
         ここでは,次の各項目について評価し,指導計画や指導内容等の改善のための情報を得る必要がある。
指導目標 指導内容 教材 配当時数 指導学年・月 指導形態
指導方法・指導技術 評価規準 評価方法 予算 施設・設備
 これらの評価項目には,経営を意識したものが含まれている。1単元の授業における評価では,経営を意識し,効率性,効果性を踏まえて評価することも必要となる。
 また,これらの項目を確実に評価できるようにするためには,ここに示した項目を含めた次頁のようなチェック用紙を作成し,活用することも有効である。
 単元の指導計画や指導内容等の改善を図るためには,児童生徒の学習状況,即ち目標に準拠した評価結果を客観的データとして活用していくことが求められる。具体的には,目標に準拠した評価を実施し,観点別に十分達成した児童生徒の割合とおおむね達成した児童生徒の割合をそれぞれ求め,それらを踏まえて上記の項目について評価し,指導計画や指導内容等を振り返っていくようにする。

(教科等名    ) ( 学年   月) (単元等名        )    (記載者氏名       )
項目 評価・課題 改善策 改善の結果
指導目標      
指導内容      
教材      
配当時数      
指導学年・月      
指導形態      
指導方法・指導技術      
評価規準      
評価方法      
予算      
施設・設備      
       評価をもとにした児童生徒への適切な対応
         対応としては,児童生徒の学習状況に応じた指導があげられる。特に,努力を要すると評価された児童生徒への個別指導を充実させていかなければならない。
    A  改善
       単元における改善として,次のような内容があげられる。
       実践した本単元の指導計画・指導内容等の改善
         本単元の評価と対応の結果をもとに,実施した単元の指導計画,指導内容,指導方法,評価方法等の改善策を明確にし,先に示したチェック用紙に記入したり,指導計画や評価計画等に朱書したりしておく。
 特に,重点的に指導すべき内容や他の教科等の単元との関連の必要性については,詳しく記載しておくようにする。
       次単元の指導計画・指導内容等の改善
         本単元の評価と対応の結果から,次単元の指導計画や評価計画等を確認し,改善の必要がある場合には,指導計画や評価計画等に改善策を朱書しておく。
    B  計画
       次単元の指導計画の確認,立案
         ここでは,1単位時間の授業における教育課程経営と同様に,改善された指導計画や評価計画を確認したり,新たに立案したりする。
 この単元の指導計画の確認,立案は特に重視しなければならない。単元を一つのサイクルとして展開し,諸能力の育成を目指す教科等が多いからである。また,基礎的・基本的な内容の確実な定着と個に応じた指導の充実の観点から,次のことについて,十分留意する必要がある。
        (ア)  少人数指導
           少人数指導は,個に応じたきめ細かい指導を行い,基礎的・基本的な内容の確実な定着を目的とする。まず,このことを押さえた単元の指導計画を立てることが肝心である。
 具体的には,児童生徒の学習状況の評価を行い,きめ細かく把握し,児童生徒の実態に応じた単元の指導目標,指導内容,指導法等を細かく設定した指導計画を作成しなければならない。この少人数指導には,当然習熟度別学習が含まれる。【実践事例1,2,8参照】
        (イ)  発展的な学習
           発展的な学習とは,学習指導要領に示す内容を身に付けている児童生徒に対して,学習指導要領に示す内容の理解をより深める学習を行ったり,さらに進んだ内容についての学習を行ったりする等の学習指導である。
 単元の指導計画を立てる際にも,年間指導計画に基づき,児童生徒の理解や習熟の状況等に応じ,発展的な学習を取り入れていく必要がある。
        (ウ)  補充的な学習
           補充的な学習とは,児童生徒の理解や習熟の状況等に応じ,学習指導要領に示す内容の確実な定着を図るために行う学習指導である。このため,個別指導やグループ別指導,繰り返し指導,ティーム・ティーチングなど様々な指導方法や指導体制の工夫改善を進め,当該学年で学習する内容の確実な定着を図らなければならない。
 このような少人数指導,発展的な学習,補充的な学習を展開していくためには,これらを指導計画の中に明確に示していくこと及び授業者同士の綿密な打ち合わせが必要になってくる。
       教材と教具の準備・開発
         単元における計画では,特に児童生徒の実態に応じた教材と教具の準備・開発が望まれる。教師個人で行うことはもちろんのこと,学年会や教科等部会で共同で準備・開発していくことが,学年及び全校児童生徒の学力の向上につながる。
       評価計画の改善
         単元においても,改善された指導計画に基づいて,評価計画を改善しなければならない。
    C  実践
       指導計画に基づいた実践
         単元における教育課程経営の実践は,1単位時間ごとの授業における教育課程経営を意味する。
       教材と教具の保管
         単元における教育課程経営においても,授業で使った教材と教具について,コメントを記入してカリキュラムセンター等に保管し,他の学級でも活用できるようにしておく。また,次年度も活用できるようにし,教材と教具の共有化に努める。
 単元ごとに,教材と教具の保管を行っておくことによって,効果的,効率的に授業実践が行えるようになる。よって,学年会,教科等部会で協力し合いながらそれらの保管に努めていかなければならない。


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