6.研究の成果

(1)  小・中・高等学校における授業研究を通して,次のようなことが分かった。
 小学校では,児童が,学習全体の見通しをもって問題解決に取り組むことができるよう学習の手引きを作成し,活用したことで,一人一人が,自分の課題や追究方法を明確化することができ,豊かな表現力が身に付いた。学習過程に,発表内容や方法を振り返り,検討する場として,意見交換会や発表会を意図的に設定したことで,児童は,再考,再調査などの必要性に迫られ,コミュニケーションの活動が活発になった。
 中学校では,学習の見通しをもって追究するために,自分の考えの根拠となる資料を整理できる学習の手引きを活用したことは,各時間の学習内容・目的が明確になり,的確な表現力を育てるのに役に立った。コミュニケーションは,相互のかかわり合いであるから,テーマや場の設定を工夫したことは,コミュニケーションを活発にさせる上で重要であった。授業では,模擬県議会を取り入れ,質問側と答弁側の立場で,自分の立場を明確にすることで話し合いが活発になり,表現力を育てることができた。
 高等学校では,ディベートを取り入れた学習において,生徒が互いに論じ合い,他者の意見を聞くことで,これまでの自分の考えや思いを見つめ直し,より高い思考力・判断力を深めることができた。また,日本史ニュースを作成,発表する学習では,準備段階で他の生徒・教師との意見交換が活発に行われた。調べたことをもとに,コンピュータを使用し相互に発表することで,他者に自己の考えを明確に伝える方法や技術を身に付けることができた。このことは,豊かな表現力やコミュニケーション能力を育てるために効果的な学習であった。
(2)  2年間にわたり研究を進めてきた結果,次のようなことが明らかになった。
 児童生徒が,学習の手引きを活用することで,自分の考えの根拠となる資料を準備・整理できた。児童生徒が表現の見通しをもつことができ,社会的事象を様々な視点から多面的・多角的にとらえられた。教師からの働きかけや内発的な動機づけによって,一人一人が主体的・創造的な表現活動を行い,表現力を育てることができた。
 児童生徒が,表現内容,表現方法,表現手段などについて,自己選択(決定)できるような検討の場を設定し,相互に話し合うことで表現力が育ち,コミュニケーション活動が活発に行われた。
 交流する場を設定することによって,それまでの自分の考えが深まり,相手に分かりやすく伝えようと努力するようになった。継続的な指導により,コミュニケーション能力が育てられると考えられる。

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