1.研究のねらい

 県内の小学校,中学校の社会科担当教師,高等学校の地理歴史・公民科担当教師及び児童生徒を対象として,社会科学習指導に関する実態調査を行い,研究主題にかかわる社会科学習指導上の問題点を明らかにする。そして,実態調査の結果を踏まえ,豊かな表現力やコミュニケーション能力を育てる社会科学習の指導の在り方を究明する。

2.研究主題に関する基本的な考え方

 豊かな表現力やコミュニケーション能力は,社会的事象の意味や働きを考え,自分の意見を分かりやすく述べるのに必要な資質である。
 豊かな表現力とは,情報や考えを様々な方法で的確に表現する力ととらえた。コミュニケーション能力とは,情報や考えを伝えたり,相手が伝えようとする情報や考えを理解する力ととらえた。本研究においては,児童生徒一人一人の情報を発信することに焦点をあてた表現力と双方向性のあるコミュニケーション能力に分けて,研究を進めることにした。
 豊かな表現力は,様々な表現活動を通して育成されるものであり,学習の過程で考えたことや活動したことについて表現することも含むものと考える。そして,それは様々な表現活動を行いながら,社会的事象の意味や働きを考え,第三者に,学習で得た結論とその結論が導き出された過程を,分かりやすく効果的に示す力を意味する。表現活動には,言語,文字,地図,年表,映像,ものづくり,コンピュータ,構成活動などがあげられる。
 コミュニケーション能力を育てる学習は,伝える側の知識を再構成する営みであると考える。また,相手に分かってもらおうとするために,伝えるべき内容を構造化したり,問題意識を明確化したり,事実と意見を明確に区別したりする必要が生じる。これらのことが生徒の学習理解を深めることに役立つと考える。
 豊かな表現力やコミュニケーション能力を育成するためには,様々な表現活動を取り入れるとともに,調べたことをもとに自分の考えを述べたり他者の考えを聞いたりするコミュニケーションの場を設定することが大切である。

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