「普通科における創意ある教育課程の編成の在り方」
−地域の特色を生かした授業を目指すO高等学校の事例−
 研究のねらい
   生徒減少期のなかで,魅力ある学校づくりを目指し,地域の特色を生かした教育課程の編成を行い,本校生徒の「生きる力」を地域との連携のもとにはぐくみ,さらに入学志願者の増加に役立てる。
   
 基本的な考え方
  (1)  教育課程編成上の配慮事項
     新しい時代を拓く学校教育支援事業県指定校(平成11年度から3年間)としての研究趣旨:「新しい教育課程の実施上の課題に的確に対応するとともに,地域や産業界の教育力を積極的に学校に取り込むことによって,生徒の能力・適性・興味・関心, 進路希望等に応じて創意工夫した学校づくりを図る。」
  (2)  新学習指導要領の学校設定教科・科目を視野に入れ,生徒の履修する教科・科目の選択幅を拡大し,創意ある教育課程の編成につなげる。
  (3)  地域や企業の人材を活用した授業や職場体験学習を取り入れた授業などの創意ある教育課程を編成することにより魅力ある学校づくりを図る。
   
 学校・地域の実態
  (1)  地域の実態
     大洗町はフェリーの本数の増加により観光と流通産業の発展が見込まれ,観光リゾート都市としての活性化を図るための保養施設等の充実にも力を入れている。また大洗原研や核燃料サイクル開発機構等の研究施設がある。大洗町も本校の教育には大変協力的であり,町の教育委員会,地元中学校及び本校の三者で連絡協議会を結成し,地域に開かれた学校作りを目指している。最近の本校入学生の地元中学生の占める割合は約15%であったが,本年度は約27%に増加していることからも,本校に対する地元の期待が高まっていると思われる。
  (2)  学校の実態
     昭和49年度に地元大洗町の強い要望により設立された普通科高校である。平成12年度に各学年普通科3クラス,音楽コース1クラスの編成となる。生徒数の全定員は480人と比較的少人数の学校であるため,教師と生徒の好ましい心のふれあいを通して相互理解を図ることが出来る。卒業生の進路は,進学者が約4割で就職者が約6割である。普通科3クラスの内,1クラスを進学クラスとし,平成10年度の進学については,4年制大進学者が16人,短大進学者が16人と共に増加し効果を上げている。部活動等に関しては,野球専用運動場や400メートルのトラック等の恵まれた環境・施設を活用しその活性化を図っている。本年度の主な実績は,陸上部が関東高校駅伝大会に初出場を果たし,マーチングバンド部は,二度の日本一を目指し全国大会に出場した。
   
 具体的な工夫
  (1)  研究の経過
     平成9年度
      (ア)  O高校の21世紀にあるべき姿を想定し,今後取るべき道ついて,短期的,長期展望に立ち検討する必要があった。特に本校志願者の減少には危機感を持ち,緊急性の高い課題と判断し,今後のO高校について既成の概念に捉われず審議や検討をして行くための実践研究委員会『はばたく無限の可能性をめざし,21世紀に生きる姿を創る会』(Organization of Creating the Visions in the 21st century looking for infinite great possibilities.)略して「O.C.X.21」という実践研究委員会を結成し活動を開始した。委員は,本校在職4年以内の職員9人,教務1名及び教頭の計11人とし,特別委員会組織として校務分掌中に位置づけた。その主な実践内容は以下の7点である。
     
@ 履修と習得について 区別する。
A 教育課程について 選択授業を取り入れる検討を開始する。
B 学校間連携 検討して行く。
C 学校行事 修学旅行を見直す。
D 校務分掌 8分掌を4分掌にスリム化する。
E 原付通学について 取り入れる方向で検討する。
F 県外優良校視察 県外の総合学科,コース制等の9校の視察を実施する。
      (イ)  大洗町の漁業協同組合の婦人部の指導による魚食の授業を第1学年の1クラスで実施した。
     平成10年度
      (ア)  魚食の授業を前年度に倣い1年の全クラスで実施した。
      (イ)  文化祭には各PTA支部とOBの代表も参加し、特に地元の核燃料サイクル開発機構と大洗原研による展示説明会を実施した。
     平成11年度
      (ア)  学校教育支援事業の『普通科における創意ある教育課程の編成』についての県の研究指定校として研究実践を進めている。(平成11年度〜13年度まで)本年度は特色ある授業の展開について地域の人材や企業等との連携により研究を進めている。実践研究委員会のメンバーは教頭,各教科から1人づつ,教務部1名合計12人で構成した。
      (イ)  学校教育支援事業実践研究委員会の活動
         平成12年度以降の教育課程の編成を行い,特に「総合的な学習の時間」の取扱いに ついての検討を行った。
  (りんわせい)
平成11年度の「特色ある授業の展開
教科名 計画の概要 実施期日 授業のねらい 指導者名
国 語 漢字の歴史と漢詩 1年2組,3年4組 10月26日(火) 漢字の歴史を学ぶことにより,日本語の理解をさらに深め,生徒の興味関心を喚起する。 林和生氏
(りんわせい)
漢字の歴史と漢詩 1年3組,3年2組 10月29日(金)
特 別
授 業
中国の歴史と文化 1年2組 1月17日(水)
12月15日(水)
国際的な視野及び関心を持つ。
地・歴
公 民
1 「だいだらぼー」とは何を表しているのか
2 「大洗磯前神社」の縁起等,信仰心とは
3 「千々乱風」(ちぢらんぷう)とは事実か
4 大洗町の漁業の変遷 (2年3組)
11月18日(木)

11月25日(木)

12月 7日(火)

12月 9日(木)
郷土の歴史に関心をもち,その流れの中に生徒自身の存在を見いだす。 佐藤次男氏
理 科 原子力エネルギーについて(1年生) 12月10日(金)
2月中旬予定
地元の原子力機関の理解及びエネルギーの理解 核燃料サイクル機構職員(シュガーズ)
特 別
授 業
サンマの調理実習(3年1組)
(3年2組)(3年3,5組)
12月13日(月)
12月15日(水)
12月16日(木)
地元の漁業の理解と魚の料理の楽しさの体験。 大洗町漁業組合婦人部
  (2)  今後の研究実践計画
     平成12年度
     
地域及び企業等の人材を活かした特色ある授業を展開する。
地域や学校の実態,生徒の特性,進路等を考慮し,パートナーシップの検討を行い,生徒の活動の場を広げる。
先進優良校等の視察による資料の収集と教育課程の比較検討をする。
上記の特色ある授業の「ねらい」の評価をもとに選択授業,学校設定科目等の内容について検討を開始する。
     平成13年度
     
地域及び企業等の人材を活かした特色ある授業を継続して展開する。
パートナーシップを実現するための検討を継続する。
平成12年度の検討結果に基づき,平成15年度からの教育課程編成の骨子を組み立て,創意ある教育課程の実現に向けその基礎を作る。
   
 評価の工夫
  (1)  特別授業に生徒が積極的に参加し,その「ねらい」が達成できたかを評価する。
  (2)  生徒及び学校にとって特別授業の社会人講師が適切であるかを評価する。
  (3)  学校教育支援事業において全教職員の認識度や共通理解が図られたかを評価する。
   
 成果と今後の課題
  (1)  成果
     平成11年度の学校教育支援事業で実施した地域・企業等の人材活用による特色ある授業は全教職員の共通理解のもとに進めることができた。生徒にとっては,この授業が地域理解を深め,今後の学習における興味関心の喚起につながった。
     実践研究委員会を中心に全職員が教育課程等の問題に積極的に取り組むようになり学校活性化の基礎作りになった。
  (2)  課題
     特色ある授業展開拡大のための地域・企業等の実態把握と連携の在り方を工夫する。地域の特性を活かしたマリンスポーツ,ライフセービング,調理,ホテル・旅館業,海洋(漁業),原子力,歴史等のテーマから,生徒自身が地域を見直し地域に根ざした生き方を学べるようにする。
     特色ある授業の実施では,実施クラスに偏りが生じたので,授業時間の枠取りを工夫して是正する。また,実施授業数を増やすことで,生徒自身が興味のある授業を選択できるように工夫する。
     選択教科や学校設定教科・科目を設けるため,指導者側の状況や生徒の興味・関心等を把握し創意工夫に努める。


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