地域の特色を生かした「総合的な学習の時間」の在り方の研究
−地域との連携をもとに体験活動を展開しているI中学校の取り組み−
 研究のねらい
   本校では,学校課題研究として取り組んできた「自己学習能力を育てるための指導法の研 究」という内容の発展的な研究として,新教育課程の実施を見込んだ本校におけるこれから の「総合的な学習の時間」についての編成と運営の在り方について研究することとした。
 研究の内容として,その一つに「総合的な学習の時間」の中で,生徒が体験を取り入れた学習活動をすることにより,今日的課題である「自ら学び自ら考える力」すなわち「問題解決能力」を育成する「知の総合化」を目指す。
また,二つめに本研究を通して,地域の歴史や自然環境に恵まれた本校の特性を生かし特色ある活動を取り入れ,現在行われているハマギク移植やボランティア活動等をさらに発展させ,地域と共に生徒を育てる学校教育の推進を目指し研究主題を設定した。
   
 基本的な考え方
  (1)  生徒の興味・関心や期待,保護者や地域の人々の意向や意見を把握する。
  (2)  教育課程の編成において,「総合的な学習の時間」の具体的な指導計画や,時間割の編成を行う。
  (3)  「総合的な学習の時間」では,学び方・調べ方・まとめ方・発表までの学習活動をする ことで, 自ら学ぶ力を育てることを目標とした学習の進め方を行なう。学び方の学習につ  いてはガイダンスで行い,授業を含め年間を通して継続的に進める。
学習の進め方
   
 学校・地域の実態
   本校は,生徒数 630人の中規模校で,市の南部に位置し,東には水木浜から臨む太平洋,西は阿武隈山地を仰ぐ環境にある。近くには1200年の歴史をもつ「泉が森神社」があり,その神社には「泉が森」という湧水もある。最近その湧水池近くに天然記念物の魚である「陸封イトヨ」が発見された。
 また,日立市には「いきいき百年塾」の制度があり,地域の人材が登録され,必要なとき に要請し協力を得られる体制にある。
 生徒は,ハマギクの里づくりや職場体験学習など,「生きる力」を育むための行事に積極的に取り組んでいる。
 これら地域の自然環境・人的環境を「総合的な学習の時間」に有効に導入し活用することを研究中である。
   
 具体的な工夫
   学校をとりまく豊かな環境と生徒の実態を踏まえ,「総合的な学習の時間」の中で自分の住んでいる地域を見なおし,郷土を愛する心を育てるために,以下のような構想を立て,実践に取り組んだ。
「総合的な学習」の計画と実践
   
 評価の工夫
   授業毎の自己評価と,発表会等での相互評価を行なった。課題設定の段階での相互評価ができると,課題を進めるための掘り下げに大いに役立つ。
   
 成果と今後の課題
  (1)  本年度は,「総合的な学習の時間」の実施にあたり,今まで行われていた学校行事等を 見直したり,新たなテーマを設けて活動できるか試みた。
テーマ・内容 方法 成    果 課   題

「心ゆたかな体験学習」
個人の課題をもとに1泊2日の体験学習
5〜1月
30時間
課題を自分で設定でき,自主学習ができた。
ゲストティーチャーの活用
課題設定の方法
学び方の学習の充実
調べる時間の確保

職場体験学習」
職業を通して,地域社会の理解,進路の学習
6〜12月
12時間
スクールボランティアの活用が得られた。
生徒による事前打合せ
特別活動との関連
年間を通しての取り組みの中の位置付け

福祉体験学習」
思いやりや助け合う心 をはぐくむ
9〜11月
10時間
体験を通し理解が深まった
ゲストティーチャーの活用
福祉への意識が高まった。
生徒の意見を取り入れた
課題の選定
他の教科との関連
     各学年とも,まず体験する事から始めた。現行の教育課程の中で行なうため,学校行事や裁量の時間を活用した。ゲストティーチャーも積極的に導入され,活動を通して,生徒から「自分の計画で自由に学習ができて楽しい。」という喜びの声が聞かれた。
  (2)  平成12年度の取り組み
  テ ー マ 内     容
1 年 地域を知る 過 去:身近な地域の歴史・自然環境等を調べる体験学習
2 年 現在の生活を見つめる 現 在:自己を見つめ,社会の問題点を探る体験学習
3 年 中学校からの発信 未 来:自己の将来を見つめ社会に広げていく活動
     授業はローテーション方式と10,15,10週に分けた時間割を作成し,週の中に「総合的な学習の時間」を位置付けると同時に,まとめ取りの方法を使って実践する予定である。


[研究報告書35号目次へ]