第9 実践研究/中学校の事例 |
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総合的な学習におけるテーマ設定の工夫
―水戸城址に建つN中学校の事例― |
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研究のねらい |
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平成14年度実施の新学習指導要領へ向けた,移行期間における総合的な学習の実施の方向性を探る。 |
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(1) |
教育課程編成の工夫と改善を図る。 |
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(2) |
「総合的な学習の時間」の学習活動の在り方を見い出す。 |
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(3) |
平成12年度の総合的な学習の実施計画を作成する。 |
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基本的な考え方 |
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新学習指導要領の趣旨を生かした教育課程の編成を具現化しながら,「総合的な学習の時間」を教育課程の中に位置付け,移行期間での実践を積み重ね,平成14年度の完全実施へ向けて準備を進める。
教育課程の編成においては,完全実施を円滑に行うために,平成12年度からの2年間の移行期間に,学校の創意と工夫を生かした総合的な学習の実施へ向けた学習づくりが必要である。各教科の授業時数を明確にし,どのように「総合的な学習の時間」を生み出すかを検討する。
「総合的な学習の時間」の取り組みについては,学校や地域の特色を生かした活動プランを作成し,実施へ向けた計画づくりに取り組む。 |
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3 |
学校・地域の実態 |
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(1) |
県庁所在地水戸の旧県庁近くに位置し,近くには国立公立の小学校が2校,県立高校2校が点在する文教の地である。本校は,水戸城跡の「二の丸」に位置し,周囲に残る土塁や大手橋等が昔の面影を留めている。また,近くには,旧藩校弘道館があり大日本史編纂や水戸学発祥の地として,歴史と伝統に支えられ「文武不岐」の精神が脈々と醸成されてきた風土である。 |
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(2) |
現在14学級,生徒数503人の中規模校である。平成11年度は創立51周年を迎えた。生徒会活動のひとつである早朝の「大手橋周辺の清掃活動」は20年以上続き,本校の特色の一つである。 |
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(3) |
保護者や地域の教育に関する関心は,極めて高く,学校への協力体制も整っており,PTA活動も盛んである。 |
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4 |
具体的な工夫 |
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(1) |
総合的な学習の実施計画作成の手順 |
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ア |
学校づくりの視点で「総合的な学習の時間」で身に付けさせる力を明確にする。 |
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イ |
アンケート調査を実施し,地域や学校の実態を明らかにし,総合的な学習で取り上げるテーマや課題を設定する。 |
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(2) |
研究の概要 |
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生徒や保護者,地域の実態を知るためのアンケート調査を行うことにより,総合的な
学習を実施するための方向性を探る。 |
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ア |
学校全体の課題(大テーマ)の設定 |
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学校全体の課題(大テーマ)を捉えるために,生徒と保護者へのアンケート調査を実施した。アンケートは記述式とし,生徒へは,「二中の自慢」「地域の自慢」「地域の未来像」,保護者へは,「二中の特色」「二中を取り巻く地域」「二中学区の支 援者となる人材」「生徒に取り組ませたい課題」とした。調査結果をもとに「時代を生きる〜過去・現在・未来の探求を通して〜」を大テーマとした。 |
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イ |
学年別課題(中テーマ)の設定 |
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大テーマの『時代を生きる〜過去・現在・未来の探究を通して〜』を受けてより具体的な課題づくりの入り口を,学年の発達段階や学年行事等を考慮し,1学年は「過去を探り自分を見つめる」2学年は「現代を見つめる」3学年は「未来への提言」という学年別課題(中テーマ)を設定した。 |
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ウ |
学級等の課題(小テーマ)の設定 |
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新学習指導要領の総則に示されている三つの課題を踏まえ,本校では「地域や学校の特色に応じた課題」を糸口として取り組むが,「生徒の興味・関心に基づく課題」を十分意識して,学級やグループの課題(小テーマ)づくりを行う。 |
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エ |
生徒が追究する個人の問題づくり |
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第1学年は,共通の小テーマに基づくいくつかの問題の中から,興味・関心のある課題を選択して問題解決学習を行う複数問題選択型とし,第2学年は共通の小テーマに基づいて問題を解決していくが,個人の問題は,提示された中から選択するのではなく,生徒自身が学習相談を繰り返しながら自ら作り出す個別問題設定型とする。3学年は学年別課題から小テーマを自力で決定し,問題解決を進める自力発見型とする。 |
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5 |
評価の工夫 |
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今後実践する総合的な学習の具体的な評価の方法を次の視点から考えていく。 |
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(1) |
「総合的な学習の時間」で生徒に身に付けたい力が,どのように育成されているか。 |
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(2) |
問題づくりから問題解決までの学習過程における具体的な評価の観点と方法を考える。 |
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6 |
成果と今後の課題 |
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地域や学校の特色を生かした総合的な学習の実施へ向けた学習づくりの視点を明らかにすることができた。
今後は,実践へ向けての教材開発と教育課程の編成を工夫する。 |