基礎的・基本的な内容の定着を目指した総合的な学習の展開
―田園工業都市にあり,児童減少の傾向にあるS小学校の事例―
 研究のねらい
   豊かな心を持ち,活力に満ちた児童の育成をめざし,地域の教育力を生かした総合的な学習の時間の在り方を追究する。
  (1)  教科,道徳,特別活動の学習内容と地域を生かした「総合的な学習の時間」の学習内容との関連性,系統性を明確にする。
  (2)  総合的な学習の裏付けとなる学び方などの基礎的・基本的な内容の定着を目指した教育課程の編成について検討する。
   
 基本的な考え方
  (1)  基礎的・基本的事項の確実な習得を図るとともに,「総合的な学習の時間」を生み出すために現行の教育内容を精選し,子どもがゆとりをもって意欲的に学習に取り組めるような教育課程の編成に努力する。
  (2)  「総合的な学習の時間」では,子どもたちが地域との関わりに関心をもち,自らの興味・ 関心に基づく問題解決や探究活動を通して,よりよい生活を築いていこうとする態 度や能力の育成を図ることを目指していく。
  (3)  体験活動や問題解決学習を取り入れた授業の展開を目指し,さらに,地域に開かれた 学校づくりに努める。
   
 学校・地域の実態
   児童数391人,教職員21人の中規模校。児童数は減少の傾向にあり,最近5年間で101人が減少している。児童は意欲的で明るく活発である。また,男女の仲もよく,学校行事等における活動状況は,協力的で積極的である。反面,経験不足のため知識偏重の傾向にある。
 学区は,西に工業地,住宅地,商業地,東に自然豊かな農村地という特色がある。地域の特産物としては,ミヤコカボチャが有名である。学区内を宮戸川が流れ,近隣に公民館,運動公園,企業等がある。地域の方々の学校への協力体制もできつつある。
   
 具体的な工夫
  (1)  地域人材を活用した総合的な学習の展開
     人材活用に当たっての取り組み
       人材の確保に努める。(地域の商店や農家,伝統工芸の職人,郷土芸能後継者,公共機関,企業,昔遊び等で協力・活用を考慮していく。)
       移行期は,各教科の内容と取り扱い時数について検討し,年間計画の修正を行い,「総合的な学習の時間」,他の学習における体験的な活動に充てる時間を検討する。さらに,各教科・領域の基礎・基本的な事項の明確化を図る。
       日課表,時間割の工夫により時数を確保する。(授業時間のモジュールの工夫)
       時間割は分散型か集中型か継続型かは弾力的に扱う。地域人材の効果的な活用について検討する。(どの単元で,どんな内容で,どんな方法で)
     全体目標・重点目標の設定
       全校的視野に立った全体目標及び実践における重点目標及び発達段階を配慮した学目標を明確にし,意欲的に取り組むことで,ねらいとする基礎・基本の定着を図る。
     生活科,道徳,特別活動等との関連 (例)
生活科,道徳,特別活動等との関連
     地域人材の活用
       保護者の理解や協力を得ながら,地域の自然・人・施設などの教育資源を有効に活用するとともに,活動を通して地域が子どもの学びの場となるようにする。
 S小祭りの活動では,竹馬・竹鉄砲,竹とんぼ,昔の遊び(ベーゴマ・メンコ・ビー玉・おはじき・お手玉),餅つき,小刀体験等において,お年寄りや地域の方々の協力を得た。また,道徳の(創意工夫・進取)の授業では,夢に向かって自己実現を図った俳優の近隣の中学生を迎え,触れ合いを重視した授業を展開した。
 また,活動内容によっては,T・T方式をとったりして有効な支援が得られた。児童のお手紙や手作りのお土産等を手渡すことにより,心のおもてなしをした。
   
 評価の工夫
   毎時間毎の児童の活動の様子や学習カード,ワークシート,作文,発表や話合いの様子,ファイル等をもとに評価に当たる。さらに,地域の方との触れ合いを通し,個人の成長や高まりについて観察法,面接法,質問紙法等により評価する。
   
 成果と今後の課題
  (1)  基礎的・基本的内容の定着のためにT・Tの活用や児童主体の授業に心がけ,さらに,地域の人材等の活用に努めたため,生き生きとした児童の姿が見られた。
  (2)  移行期の週時程表,日課表を検討し,教科・道徳・特別活動・「総合的な学習の時間」の確保を図る。


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