第1 研究の経過
 研究の趣旨
 各学校がゆとりある教育活動を展開し,豊かな人間性や創造性をはぐくむ教育を進めていくため,教育課程の課題を探ることで,これからの教育の在り方を研究する。
 
 研究期間
 平成10年度から平成11年度の2か年とする。
 
 研究の方法
 小・中学校及び高等学校の教育課程の研究を進めるに当たって,それぞれの校種毎に研究協力員を委嘱し,研究協議会を開催して研究を進めることとした。
 第1年次(平成10年度)の取り組み
(1)  研究協力員の委嘱
 小学校,中学校については各教育事務所毎に各1人ずつ,高等学校については学校の特色に応じて3人の研究協力員を委嘱した。合計13人。
(2)  研究協議会(第1回)の開催
 研究協議会(第1回)の開催
 期日:平成10年9月4日(金)
 講義:講義題「21世紀の学校と教育課程創造の方策」
 講師:筑波大学教授(教育学系長) 山口 満 氏
 講義内容
@  「総合的な学習の時間」の考え方について,その創設の趣旨や活動内容及び時間編成の方法などを示した。
A  21世紀に向けた学校の課題として,国際化と教育,情報化と教育,科学技術の 発展と教育,環境問題と教育の4点を挙げ,これからのあるべき学校像とその実 現の方策等を提示した。
B  教育課程基準の改訂を巡る動向を踏まえ,完全学校週5日制での教育課程の編 成の課題を整理した。
C  「生きる力」を育む教育課程について,学習の意味の主体化の問題,共生人間 関係の場としての学校の在り方,知の統合の課題を提示した。
D  学校のカリキュラム開発の仕組みを変える課題について,カリキュラムのユー ザーからメーカーへ,コンセプトの転換,開発の3つのモデルなど教師の専門性 向上の必要性を強調した。
 研究協議
 中央教育審議会答申,教育課程審議会答申等教育改革の方向について,学校・家庭・地域社会との連携,心の教育,福祉教育,情報教育の視点などから分析し研究していく。そして,各研究協力員勤務校での,教育課程の工夫・改善に関する研究テーマを確認する。研究の方向として,「総合的な学習の時間」の導入と「学校・家庭・地域との連携」の視点に立って見直していくこと。
(3)  研究協議会(第2回)の開催
 期日:平成10年12月8日(火)
 研究協議(小学校部会)
 教育課程の現状について,学校裁量の時間を利用し学校行事等を活用して総合的な学習の時間に向けた取り組みが進む。内容も,地域の特性を生かしたり,季節の行事を取り入れたりと様々に工夫している。今後は各教科や領域の基礎的・基本的事項を見直し,体験活動を系統性・発展性のある内容の研究が求められる。
 研究協議(中学校部会)
 総合的な学習の実践に向けた「選択履修」の研究報告が出され,T・T授業の在り方や生徒会行事での総合的な学習の工夫,環境問題に目を向けた地域学習と総合的な学習との関連など新教育課程編成への課題を詰めていくことを確認した。
 研究協議(高等学校部会)
 専門高校など学科の特徴が明瞭な高校と,普通科高校の問題が話題になる。普通科の高校がどう学校の独自性を出していくか,また地域の特徴を掴み「総合的な学習の時間」にどのように生かしていくか,さらに総合コース制を敷いて学校を活性化するなどの意見が出された。
 
(4)  研究協議(第3回)の開催
 期日:平成11年3月11日(木)
 研究協議(全体会)
@  平成10年度の研究経過報告
A  平成11年度の計画案検討
 本庁指導課(現在の義務教育課,高校教育課)と保健体育課と日程の調整をする。4月早々に研究協議会の期日調整をすること。
B  本庁指導課より平成11年度新規事業「新しい時代を拓く学校教育支援事業」の概略説明があり本研修センターの教育課程研究と提携して進む予定である。
C  意見交換
 参加者は本庁指導課と保健体育課及び本研修センター各課指導主事である。健康・安全,情報を中心にした「総合的な学習の時間」の開発の課題や教科学習の基礎・基本と「総合的な学習の時間」との関連,あるいは教育課程の研究には実践評価の課題が横たわること,選択教科と総合的な学習の区別の必要性などが出される。
(5)  先進校視察
 これからの教育課程の在り方の課題を探る目的で,全国の教育課程研究の実践校を視察し,その研究内容の特徴を整理した。視察校は次の通りである。
【小学校】
横浜市立青木小学校(神奈川県)
特色ある「青木単元」を生かした学校改善
横浜市立大岡小学校(神奈川県)
学校と地域を結ぶ総合的な単元を開発して開かれた学校づくり
秦野市立上小学校(神奈川県)
地域に愛着を持つ子を育てる環境教育の実践
高山村立高山小学校(群馬県)
コミュニケーション能力の向上を目指す英会話活動
目黒区立東山小学校(東京都)
英語に親しむ活動を通して国際社会に生きる子どもの育成
文京区立誠之小学校(東京都)
コミュニケーション能力の育成を目指した国際科での英語学習
福井市立円山小学校(福井県)
メデイアを活用したコミュニケーション活動
福井市立湊小学校(福井県)
英語科を導入したコミュニケーションを楽しむ子どもの育成
【中学校】
宮城教育大学附属中学校(宮城県)
選択教科「総合科」での課題追究学習
仙台市立第一中学校(宮城県)
特別活動の活性化を目指す自主的活動の育成
川島市立川島中学校(神奈川県)
教育機器を利用した情報活用能力を高める指導
長野市立柳町中学校(長野県)
自分探しの学習システムづくり
道志村立道志中学校(山梨県)
体験的活動を生かした道徳性を高める実践研究
駒ヶ根市立赤穂中学校(長野県)
「白鈴の時間」に学級独自のテーマで総合的な学習の実践
津久井町立鳥屋中学校(福井県)
鳥屋の自然を守る環境ボランティアの実践
綾瀬市立春日台中学校(神奈川県)
地域美化活動による勤労・奉仕活動の実践
【高等学校】
埼玉県立川越総合高等学校
農業高校から総合学科の高校に移行して新しい学校づくり
埼玉県立春日部東高等学校
「総合的な学習の時間」の研究開発校として生徒の課題研究に取り組む
千葉県立八街高等学校
総合学科に移行して国際教育等を導入した学校づくり
千葉県立幕張総合高等学校
三校統合した普通科の高校で総合選択制の学校づくり
筑波大学附属坂戸高等学校(埼玉県)
専門学科に総合学科を導入した新しい学校づくり
静岡県立森高等学校
隣接の専門高校と相互補完する学校間連携の成果
静岡県立掛川西高等学校
進学指導での地域拠点校の学校づくり
静岡県立小笠高等学校
農業高校の伝統を総合学科に移行した新しい学校づくり
(6)  中間報告
 平成11年3月26日(金)茨城県教育研修センター研究発表会で,第1年次の取り組みの中間まとめの報告をした。内容は次の通り。
ア 平成10年度研究の中間まとめ
イ 実践報告(小学校,中学校,高等学校の現状と課題)
ウ 茨城県内の小・中学校教育課程実施上の課題
エ 研究先進校報告
オ 教育課程の方向をどう考えるか
 
 第2年次(平成11年度)の取り組み
(1)  第2年次(平成11年度)は,これからの教育課程の在り方に関する研究の完結年度になり,茨城県教育研修センターが開催する研究発表会で報告し,研究報告書を刊行する予定で,次のような研究計画で進めた。
平成11年度の研究(研究完結)
(2)  研究協力員の委嘱
 小学校7人,中学校7人,高等学校については学校の特色に応じて4人の研究協力員を委嘱した。合計18人。
(3)  研究協議会(第1回)
 期日:平成11年5月18日(火)
 理論研究:講義記録は別掲
 研究協議
 新学習指導要領に従って,小・中学校と高等学校の教育課程編成の基本的課題を整理,各教科・領域と「総合的な学習の時間」の編成の具体的課題に取り組むことを確認する。
(4)  研究協議会(第2回)
 期日:平成11年9月7日(火)
 講義:講義題「『総合的な学習の時間』の展開と課題」
 講師 茨城大学助教授 新井 孝喜 氏
 講義内容
(ア)  新教育課程の移行期が近づいているので少しずつでも実践したいが,総合的な学習では教科に収まらない内容を取り扱うこと。
(イ)  地域に根ざした学校,生涯学習と連携する人材バンクなどで将来の市民育成の観点から学校を捉えたい。これからの学校は健全な納税者育成である。
(ウ)  高校の教科学習は総合を意識しなくてもとの思いがあるが,性,薬物や安全教育などは「総合的な学習の時間」の課題である。
(エ)  「総合的な学習の時間」の試みに,小・中学校を舞台に「ふるさとの総合学習」中学校での「いのちの総合学習」の実践,自己実現のための「学び」の仕上げに「わたしの総合学習」の3つを提唱している。
(オ)  学ぶ楽しさを求め,具体的なものから抽象へと教育の在り方を考えたい。
 研究協議
 研究協力員と取り組んでいる教育課程に係るテーマは次の通りである。
【小学校の教育課程】
 「生きる力」を育む創意ある教育課程の編成の工夫
 夏の集会を水・環境問題をテーマに縦割り班活動や委員会活動,各教科との関 連付けを図り総合単元にする工夫と実践をする。
 児童の夢と「生きる力」を育む総合的な学習の研究
 総合的な学習の単元構成。「夏の○○集会」,秋の集会,お正月,冬の集会と学 校行事と関連付け時数配分等短期集中型の研究をする。
 「総合的な学習の時間」の趣旨を生かした授業展開
 資料収集と「いのち」をテーマとする各学年の単元開発をして2学期に授業実践 をする。
 基礎・基本と「総合的な学習の時間」の設定
 各教科の単元での基礎・基本の内容を抽出,総合的な学習と各教科間の内容の構造を図式化する試みを進める。
 進んで課題解決に取り組む児童の育成
不思議発見の部屋を起点に環境教育を進める。/TD>
 地域の教育力を生かした取り組みの工夫
 地域人材活用の在り方や開かれた学校の在り方,効果的なT・Tの在り方を探る。人材バンクを整備し,「地域の先生」の活用を研究する。
【中校の教育課程】
 地域・学校の特色ある学習課題の設定と,「総合的な学習の時間」の単元作成
 「総合的な学習の時間」の学期単位型での進行と時間割・日課表編成の工夫
 自己の生き方を高めるための「総合的な学習の時間」の編成と運営
 行事企画案づくり,学習環境開発の調査,時間割編成の工夫を行う。
地域の環境を生かした「総合的な学習の時間」の在り方
 身近な環境を見つめ,課題を解決しようとすることで個性を伸ばす研究。
一人一人のよさを生かす教育活動の展開
 教師一人一人が主体的に授業改善を図り,個人テーマを設定し研究を進める。
「生きる力」を育む総合的な学習の創造
 学校裁量の時間で,単元構成を工夫して実践する。第1学年/基礎T(情報環境),第2学年/基礎U(国際理解),第3学年/応用(総合)のテーマ。
「選択学習」と「総合的な学習の時間」の在り方
 選択学習と「総合的な学習の時間」を通して,それぞれの課題を明確にする。
【高等学校の教育課程】
 「総合的な学習の時間」と特別活動の関連を踏まえた教育課程の在り方
 特色ある学校行事を選び,総合学習ノートによる課題研究を進め,「私の高校時代」の卒業研究へ発展させる。
 「創意ある教育課程の編成の在り方
 漁業組合の協力を得たり,地元企業の体験活動を取り入れたりしながら,海や  沼,原子力・科学・観光等の立地を生かした教育課程の研究を進める。
 地域の特色を生かす教育課程の編成の在り方
 専門学科を越えた科目選択の研究,新しい学校づくりを検討する
 「総合的な学習の時間」と進路指導との関連を踏まえた教育課程の在り方
 将来への目的意識を生徒にはぐくみ,個に応じた進路選択を進める教育課程の在り方を研究する。
(5)  研究協議会(第3回)
 期日:平成11年12月13日(月)
 協議内容
(ア)  各実践事例の検討
(イ)  研究報告書案作り
(ウ)  義務教育課,高校教育課との連携
(6)  理論研究
 講義 「学校の特色と教育課程の工夫について」
 講師 筑波大学教授(教育学系長) 山口 満 氏
 教育課程の基準の改善と学校教育の課題   特別活動の目標の問題
(ア)  特別活動について,昭和43年学習指導要領の改訂以来「望ましい集団活動を通して・・・」を目標に掲げてきたが,「集団活動や体験的な活動を通して・・・」と目標を変更すべきの議論をしてきたところである。高校生のアルバイトや就業体験などは進路指導の面から考えると個別的な体験であるし,ボランテイア活動などは非集団的な個人的体験であるから, 特別活動の指導の在り方も考え直していく必要があるとの議論である。小学校の関係者から,「体験的」は集団活動に包含されるとの異論が出た。小学校と中学校,高等学校の特別活動に関する比較は興味深い問題である。
(イ)  好ましい人間関係と学級づくりの問題
 担任と児童生徒は親子関係のような,そして,学級内の子ども同士は兄弟のような人間関係をねらいに,擬似家族関係構築を目標に学級づくりを進めてきたのが日本の教育であった。そういう学級王国の取り組みが問題になっている。学級内で「仲良しを強制」する前に,自分を見つめ個を確立することが先行すべきという議論である。個の確立が集団関係を作っていく発想である。伝統的な共同体社会から人間生活の基盤が変化し,学級生活の在り方も変わって来た。学級生活での個の確立,各人のコスモスを作ってから,好ましい人間関係に結びつける在り方も大事にしたい。
(ウ)  学校と地域の役割分担
 学習指導要領解説が9月に出るが,「部活動」の文言は表記されない。「生徒会の諸活動」と表現しただけに終わった。保健体育科にはある程度記述されると想定される。ただ,地域と連携して学校教育を考えることは大切で,小学校教育にクラブ活動が残った意義は大きい。個性の発見や生きる力の育成などにつながるクラブ活動は大切にしたい。学校はどこまで責任を持つかの問題について,部活動を社会体験に位置付けるか,学校の教育活動内で捉えるか,学校と地域の役割分担を考え直していく必要がある。
(エ)  特色ある学校づくり
 学校教育は生徒の実態,地域の実情,学校の実態を取り入れるのは当然のことであるのに,改めて特色ある学校づくりの文言を入れざるを得ないことは,それまで特色ある学校になっていなかった証明ではないか。教育行政も地方や地域学校へ比重が移される時代になった。規制緩和が進むということ。県立学校において,校長の判断で設置できる科目が登場することも前進である。教育課程はコアと選択の2つの要素がある。昭和50年代からできるだけ選択を多く取り入れる動きから「学校裁量の時間」も登場した。各学校は,なるべくコアの分を狭めて,自由に教育課程を組み,教育課程編成と評価を一体として進める必要がある。
(オ)  評価とカリキュラム開発
 評価の場合,子どもの変化に即して評価するばかりでなく,自らの教育課程に対する自己評価や教師側の自己評価が必要であろう。カリキュラムのユーザーよりメーカーへの時代である。今までは決められた教育課程で運営しているだけであったがこれからはそうはいかない。例えば,「総合的な学習の時間」はその名称から学習内容,指導,評価をどうするかの問題が生じる。今までは,いい学校は指導方法の開発に熱心に取り組んできたが,これからは何を教えるかのカリキュラム開発の時代である。ミクロ的指導方法の研究よりも「何を」の時代。特活,道徳,各教科と総合的な学習をどう関係付けるかは模範解答はない。その学校独自の取り組みで生み出していくものである。そう考えると,その学校にとって何が必要で何をすればいいか,各学校の取り組みを通して,結果として学校の特色が出てくると考える。 昭和20年代に地域に根差した地域の教育の時代もあったが,これからは一人一人の中で総合化し,それをどう生かすかの時代である。
 日本の教育は基礎・基本がしっかりしていると中教審では議論しているが,理工学部系大学の半数で補習授業をせざるを得ないほど基礎学力低下の問題がある。生徒の実態を把握する調査研究が必要である。
 学校に基礎をおくカリキュラム開発(School Based Curriculum Development)
(ア)  ニーズ・ベースドデベロップメントは生徒のニーズに基礎をおくカリキュラムである。学校に基礎をおくカリキュラム開発SBCDは生徒のニーズである。子どもが時間管理できない。タイムマネージメントの教育も必要である。大学での議論であるが,学生が学問への意欲がないことが問題である。大学へ入学して終り,論理的な思考力や自己表現力がつかない。個々の知識よりも,意欲や関心がない問題をどうすればいいか小・中学校の教育にも関係する問題である。
(イ)  地域をどう生かすか。
 地域の客観的な知識よりも,地域の自然や地域との関わりをどう生かすのかを考えることが必要である。地域に生まれ地域に育つことから各自の生き方を見付けさせていくことである。中学校第1学年は地域とのふれあい,中学校第2学年は自分に目を向けた啓発的体験,そして中学校第3学年は修学旅行などの広い視野から地域を知る体験が位置付けられる。小学校でも学年毎にねらいを定めた教育から低中高学年教育の時代へ入ってきた。また中学校においても基礎,発展,個別化された教育へと系統的に学習を進めたい。
(ウ)  総合的な学習は小学校3,中学校2から4,高校は3から6単位時間の学習であるが,小・中学校や高等学校で同じことが繰り返されると魅力を失ってしまう。従って小学校から高校まで一貫した考え方が必要である。
 小学校での英語学習の問題点や学期まとめ取りの教育課程の問題なども整理していきたい。
(エ)  総合的な学習は子どもの中からの総合なのか,教育の中の総合なのか双方から捉えるべきであろう。子どもの中で総合化してまとめるだけではなく,ある程度教師からの働きかけが必要である。
 総合的な学習は知的に活動する。出店の金魚すくいだけの活動でなく,知の総合化へ向かうべきである。レベルの高い教師の構造的な枠組みが必要である。総合的な学習は遊びの学習では駄目である。総合的な学習を通して何をねらうかを大事にしたい。
(オ)  高校の課題研究もある。SBCDカリキュラムは学校がつくるという発想である。70年代に提唱され昭和50年代のゆとりの教育も出てきた。学校や教室に基礎を置いてカリキュラムを開発する。カリキュラムは,教師の側のものと子どもを動かしているカリキュラムとのズレ,不登校や低学力などの問題が出て分かってきた。
 従って子どもの目の高さに合わせたカリキュラムを作る。今までは教育課程はフォーマルで,学校の意図したものであると考えられてきたが,実際には教育課程は生きて働いて教室で動いているものである。計画レベルのカリキュラムから機能するカリキュラムへの考え方の転換を図り,計画と実践と評価が一体となったカリキュラムを考える。評価も年間単位でなく,学期毎から進んで単元毎にカリキュラムを評価改善を図る努力をする。
(カ)  学校の子どもたちの経験のすべてをカリキュラムとし,隠れたカリキュラムとして把握していく。学校は生活として捉える。学校行事は楽しいものになる,学校行事というよりも生徒行事として子どもを主人公に生活を作っていく。その上で学習が成立すると考えたい。
(キ)  子どもの意見をカリキュラムへ生かす能力や識見を教師側が持つことが必要である。それでも地域の意見を学校が取り入れる場合には学校がしっかりと視点を定めること,むやみに左右されないことが大切である。
 カリキュラム開発の3つのモデルについて
(ア)  目標分析モデル
 日本の学校の多くのスタイル。形成的評価を取り入れるモデルである。
(イ)  ゴールフリーモデル
 子どもが自由に課題を見付け,その実態に即してカリキュラムをつくる。大きな目標は指導計画に入れておき,「子どもを自由に泳がせる」教育である。総合的な学習のスタイルは,単なる遊びではなくレベルの高い学習である。
(ウ)  相互作用・状況分析モデル
 自分の授業,自分のクラスを外から見て評価する中で進めていく。教師が状況分析して作っていく。
 意思決定するために客観的状況を見て進める。学校教育は同じことを同じように繰り返していく。その課題克服をどう学んでいくか。過去の実践に学んでいく。記録に残していく。科学的に検証する。千葉県の北条小学校には,過去何十年分の教育課程とその実践の記録が残されている。
(エ)  学校のカリキュラムは学校がやりやすい形で開発したい。
(オ)  地域社会をどう生かすか。子どもの実態をどう把握するか。教員の特色,施設設 備の特色をどう生かすか。環境,国際理解,情報,福祉健康の課題にどう応えるか。「総合的な学習の時間」のカリキュラム開発について,ねらいと内容構成,教育課程上の位置付け,開発の方法などを整理する必要がある。


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