【授業研究1】
  小学校第3学年
古内のお茶づくり」における調べ活動・表現活動を重視した学習指導の在り方
(1) 授業の構想
   自ら問題を見付け,問題解決に主体的に取り組む社会科学習の指導の在り方」という研究主題に迫るためには,子どもが社会的事象と深くかかわり,問題意識が高まることを通して学習問題を見付け,見通しをもってねばり強く追究し,自分なりに表現活動ができるようにすることが大切である。
 本実践では,単元の学習前に学校の茶畑の世話を定期的に行い,お茶とのかかわりを多くもてるようにする。また,古内茶をどのくらいの人が知っているかについてのアンケート調査を子どもたちの手で行う。この調査結果から,子どもたちは古内茶があまり知られていな いということに気付くであろうと予想される。調査結果を基に,学習問題「どうすれば古内茶をみんなに知ってもらえるだろう。」をつくり,子どもたちでみんなに知ってもらうための方法(のぼりやパンフレットなど)を考えるようにする。
 同じような方法を考えた子ども同士でグループをつくり,発表までの学習計画を立て, 自分たちの考えた方法を実現させるために調べ活動を行う。そして,調べたことを基にグループごとにのぼりやパンフレットなどの作品に仕上げていく。作品づくりの過程でお茶づくりについて疑問に思うことが生じた場合は,グループ間で情報交換をしたり,電話などで再び調べたりして解決する。さらに,かかわりのある方をゲストティーチャーとして招き,調べたことを生かした作品の発表会を行う。発表後,それぞれのグループに対する感想や意見をいただくようにする。
 これらの活動を通して,子どもたちは,「古内のお茶づくり」の特色についての理解を深め,地域に根ざした生産活動に対する見方や考え方を身に付けることができると考える。
(2) 指導の手だて
  単元を通して追究していく学習問題をつくるための工夫
    (ア)  お茶とのかかわりをもつ活動
 図工の時間に,お茶づくり農家から借りた茶畑で,お茶の葉や枝を利用して人の顔や動物を組み立てる活動をする。また,ゆとりの時間を活用して,茶畑の継続的な害虫駆除やお茶工場で新茶ができるまでの見学を行う。学校行事としてのお茶摘みやお茶集会に参加する。これらのことを通して,お茶とのかかわりをもつ機会を多くする。
    (イ)  古内茶への問題意識をもつためのアンケート調査
 調べ方ガイド」を使ってインタビューやアンケート調査の仕方を学習し,古内の地域以外へ買い物などに出かけた際,お茶に関するアンケート調査を行う。「@お茶といえばどこが思いうかびますか。A茨城でお茶の産地といえばどこですか。B古内茶を知っていますか。」 という項目を設定し調査する。 この調査を棒グラフで表すことで,子どもたちは古内茶があまり知られていないことに気付くと考えられる。この調査結果を基に,古内茶があまり知られていないことに対する悲しみの気持ちを,「どうすれば古内茶をみんなに知ってもらえるだろう。」という問題意識につなげていきたい。
  問題解決の見通しをもち,追究活動ができるようにするための工夫
    (ア)  表現活動の複線化
 単元を通して追究していく「どうすれば古内茶をみんなに知ってもらえるだろう。」という学習問題に対し,子どもたち一人一人が古内茶をみんなに知ってもらえるようにするための方法を考える。子どもが考えた方法を類型化し,紙芝居やパンフレット,のぼりなどの方法ごとにグループを設定する。各グループごとに,それぞれの方法を具体化するために,古内茶の生産や販売の工夫,他地域とのつながりなど調べる内容や方法,調査のための質問事項を考える。
    (イ)  調べる内容に合わせた追究活動
 調査のための質問事項は多岐にわたると考えられる。子どもたちの質問事項は整理して,事前に調べる場所に送付し,各グループの調べ活動が円滑にできるようにする。調べる場所の選択については,質問の内容を考慮して助言する。その中で,歴史に関する事項については,古内茶の発祥の地ともいえる清音寺,お茶の生産や販売の工夫などについては,学校に近いお茶園,販売における宣伝の仕方については,学校に近いA店などがあることに気付くことができるようにする。
  追究の成果を作品に表し,学習の満足感が味わえる発表の場の工夫
  • ゲストティーチャーを招聘しての発表の場の設定
    お世話になったお茶園経営者と商店経営者を招聘して,各グループごとに調べたことや作品の特徴を発表する場を設定する。子どもたちは,他のグループの作品について分からないところがあれば質問をしたり,良い点はほめ合ったりすることを通して,お互いに学び合えるようにする。さらに,ゲストティーチャーからそれぞれのグループの作品に対する賞賛の言葉をいただくことで,子どもたちは,学習してきたことへの満足感や成就感を味わうことができると思われる。
    これらの学習過程を経ることにより,子どもたちは,地域の産業である「古内のお茶づくり」の特色についての理解を深め,それにかかわる地域の人々の工夫や努力に対する見方や考え方を身に付けることができると考える。
(3) 学習計画(20時間)
学習計画
(4) 本時の学習
  目 標
    調べたことを生かし、自分たちが考えた「古内茶をみんなに知ってもらうための方法」を発表することができる。
  展 開
学習計画
(5) 授業の考察
  単元を通して追究していく学習問題をつくるための工夫
    (ア) 茶 摘 み お茶とのかかわりをもつ活動
 4月末から9月まで週1回の割合で,茶畑の害虫の駆除を行った。また,全校児童によるお茶摘み(5月26日),お茶工場の見学(5月29日),全校児童で今年自分たちの手で摘んだお茶を飲む「お茶集会」(6月24日)を行った。本単元の学習の導入時で,お茶づくりに対する児童の様々な意見や感想が出されたのも,これらの直接的なかかわりが学習への意欲付けにつながったと考える。  子どもたちは,多くの体験活動を通して,お茶とのかかわりをもつことができた。
    (イ) 資料1 A男の感想 古内茶への問題意識をもつためのアンケート調査
 単元が始まる前に子どもたちの手で,「お茶に関するアンケート調査」を行った。それを調査地点ごとに集計し,分かりやすいように棒グラフで表した。資料1は,アンケート調査を見てのA子の感想である。古内茶があまり知られていないことに対する悔しい気持ちがうかがえる。クラス全体の感想を見ても悲しい,残念,悔しいという気持ちを書いている子どもが多数見られた。このような気持ちが,「どうすれば知らない人が古内茶をわかってくれるか。」という問題意識を喚起し,単元を通した学習問題の設定につながったと考える。
  問題解決に見通しをもち,追究活動ができるようにするための工夫
    (ア) 表現活動の複線化
 子ども一人一人が学習問題の解決方法を考え,方法別に三つのグループに分かれた。一つは,ポスターやのぼりなど絵と文字を使って知らせようとするグループ。二つ目は,写真と地図で知らせようとするグループ。三つ目は,パンフレットを作って知らせようとするグループ。自分たちの選んだ方法で思い思いにまとめ表現できることや作る目的や活動の見通しが明確であることなどが,作品作りから発表会に至るまでの意欲的な取り組みに表れたと考える。
    (イ) 調べる内容に合わせた追究活動
 子ども一人一人の質問事項を整理し,各グループごとの質問シートを作った。子どもたちは質問内容に合わせて調べる場所をどこにしたらよいか教師の助言を基に考え,グループごとに調べる場所や日程を決めた。そして子どもたちは,本校で作った「調べ方ガイド」に従い,質問の仕方や相手の都合を聞く電話連絡についての練習をした。その後,歴史に興味をもったグループは清音寺に行って調べた。生産や販売について知りたいグループは学校付近のお茶園に行って調べた。また,のぼりの作り方について調べるグループは,A店を見学して調べた。
 調べていく中で,古内茶について新たに発見したことや自分たちにしか得られない情報を  得ることによって,作品を作ったり,他の人に伝えたりしようとする意欲が強まった。
  追究の成果を作品に表し,学習の満足感が味わえる発表の場の工夫
 ○ ゲストティーチャーを招聘しての発表の場の設定
    発表会  ポスターやのぼりのグループは,自分たちが作品に入れた言葉の意味を説明した。また雨が降っても耐えられるようにシールで表面を覆う工夫も見られた。地図・写真グループは,古内の場所を地図で分かりやすく表すとともに自分たちで撮ってきたお茶工場の写真を貼り,古内茶の歴史,古内茶を買いに来る人たちの住んでいる所などについて調べたものを模造紙に表した。さらにその縮小版をコンピュータを活用して表し,リーフレットを作った。パンフレットグループは,コンピュータを活用してお茶の歴史,作り方,古内でお茶づくりがさかんな理由,おいしいお茶の入れ方,お茶の効能などを分かりやすく表した。古内茶をみんなに知ってもらいたいという熱意と自分たちの目で確かめ,聞き取りをしてまとめたという確かな自信が,子どもたちのアイデアを生かした多様な表現方法や発表内容,堂々とした発表態度に表れたのではないかと思われる。
 写真は,お茶園経営者と商店経営者の方の感想を聞いているところである。「古内茶には,このような宣伝が足りなかったのでみんなの作品を生かしたい。」「このような手作りのものがよい。」などの話から,発表や自分たちの作品への自信をさらに深めたり,学習への満足感を味わったりすることができた。
 資料2を見ると,キーワード数が14から49となり,子どものお茶を軸としたイメージが広がったことが分かる。資料3からは,子どもが学習への満足感を感じていることとこれからの自分の生活を通して古内茶を見ていこうとする態度がうかがえる。このように,自分たちの住んでいる地域の事象とかかわり,その中から問題意識を高め,自分たちの思いを生かしながら解決方法を考え,追究していくことによって,社会的な見方や考え方,自分たちの住んでいる地域により深くかかわっていこうとする態度を育成できたと考える。
A男のイメージマップ
資料3 B子の作文の一部

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