2 児童生徒の体力の現況と対応


(1) 調査結果の概要
 従来の「スポーツテスト」を本年度から「体力テスト」に改め,8項目により実施した。

  • ア 握力,50m走,ソフト・ハンドボール投げの結果
     昨年度まで行ってきた「スポーツテスト」と共通する項目を比較すると,一部向上傾向がみられるものの概ね低下傾向を示している。


    • (ア) 握力:小学校第5学年から高等学校第3学年まで男女共に前年度より向上している。
    • (イ) 50m走:小学校第5学年から高等学校第3学年まで男女共に前年度より低下している。
    • (ウ) ボール投げ:高等学校第2学年男子と小学校第5・6学年女子において前年度より向上したものの他のすべての学年で低下している。


  • イ 体力・運動能力の学年平均値の変化
     測定項目ごとに加齢に伴う体力・運動能力の変化をみると,男子においては発育急進期にあたる中学生期に平均値が大きく向上するが,高等学校第1学年において低下した後,再び向上する項目が多い。中学校第3学年後期からの運動量の減少などが一因と考えられる。
     女子においては,小学生期には男子と同様な向上傾向を示すが,中学生期には緩やかな向上傾向である。その後,高等学校第1学年において低下した後,停滞する項目が多い。同時に行った生活状況調査からも高校生期の運動量が最も少いことが伺える。


    • (ア) 握力
       男子においては加齢に伴う向上傾向がみられる。女子においては中学校第3学年までは,向上傾向を示し,その後停滞している。


    • (イ) 上体起こし
       男女ともに中学校第3学年まで向上傾向を示し,高等学校第1学年において低下するが,その後向上傾向を示す。女子は中学校第3学年がピーク時である


    • (ウ) 長座体前屈
       男女ともに中学校第3学年まで向上傾向を示し,高等学校第1学年において若干低下するが,その後向上傾向を示す。中学校までは男子より女子が優れているものの,高等学校においては僅差である。


    • (エ) 反復横とび
       男女ともに中学校第3学年まで向上傾向を示し,高等学校第1学年において低下するが,その後向上傾向を示す。女子は中学校第3学年がピーク時である。


    • (オ) 20mシャトルランテスト
       男子は,中学校第3学年がピーク時である。高等学校第1学年において低下するが,その後向上傾向を示す。女子は,中学校第3学年がピーク時となり,高等学校第1学年において低下した後,停滞している。


    • (カ) 50m走
       男子は加齢に伴う向上傾向を示しているが,高等学校第1学年において若干低下がみられる。女子は,中学校において緩やかな向上傾向を示し,中学校第3学年においてピーク時を示す。高等学校において低下した後,停滞している。


    • (キ) 立ち幅とび
       男子は,加齢に伴う向上傾向を示しているが,高等学校第1学年において若干低下がみられる。女子は,中学校第3学年がピーク時となり,高等学校第1学年において低下した後,停滞している。


    • (ク) ソフトボール投げ(小),ハンドボール投げ(中・高)
       小学校においては,男女ともに加齢に伴う向上傾向を示している。中・高等学校男子においては,向上傾向を示しているが,高等学校第1学年において停滞している。中・高等学校女子においては,緩やかな向上後,高等学校において停滞している。


  • ウ 児童生徒の生活状
     運動・スポーツの実施状況や朝食の摂取,睡眠時間,テレビの視聴時間等を調査した。


    • (ア) 運動部やスポーツクラブへの所属状況
       中学生においては高い参加率である。また,小学校高学年と高校生では同程度の参加率である。


    • (イ) 運動・スポーツの実施状況
       「ときたま(月1〜3日程度)」と「しない」が,高等学校男子では約4割,高等学校女子では約6割である。


    • (ウ) 1日の運動・スポーツの実施時間
       中学校第1・2学年男子においては,2時間以上が約6割である。高等学校女子では30分未満が約6割である。


    • (エ) 朝食の有無
       「全く食べない」が高校生に多く,男子で1割強,女子で1割弱である。


    • (オ) 1日の睡眠時間
       6時間未満は小学校中学年で数パーセントであるが,学年進行に伴い増加している。


    • (カ) 1日のテレビ(テレビゲームを含む)の視聴時間
       小学校高学年で2時間以上が約7割である。


※ 生活状況調査6項目すべてにおいて体力・運動能力の比較(クロス集計)を行ったが,本ホームページでは掲載しなかった。クロス集計の結果を要望される場合は,茨城県教育庁保健体育課学校体育係まで連絡願います。(рO29−301−5353)


(2) 体力向上のための対応策

努力事項 対 応 策
体育・保健体育の授業の充実
  • 運動の楽しさや喜びを十分に味わわせる授業の展開。
  • 体力の向上を直接のねらいとする体操領域の指導の充実。
  • 生徒の実態や学校の実情を踏まえた選択種目の設定。
  • 自発的・自主的に取り組み,運動の楽しさや喜びが一層深まる選択制授業の工夫。
  • 「学校体育研究推進校」「体力つくり推進校」「体育・スポーツ推進校」の研究成果の活用。
学校における体育・スポーツ活動の充実
  • 学校の教育活動全体を通じて行う体育・スポーツ活動の推進。
    • 業間運動等の計画的・継続的実践。
    • 児童生徒一人一人が運動・スポーツの楽しさや喜びを味わい,運動の習慣化が図れる体育的行事の工夫。
  • 運動部活動の充実
    • 指導体制の確立と指導計画の工夫改善。
児童生徒の体力向上への意識高揚
  • 体力テストの結果の活用。
  • 体力優良賞の授与。
  • 「本校の体力プロフィール」の活用。
学校・家庭・地域が一体となった体力向上の推進
  • 体力つくり推進委員会の設置と機能の充実。
  • 地域の体育的行事,スポーツクラブ,スポーツ少年団等の活動への積極的参加。
体力向上推進事業の充実 <小学校>
  • 「いきいき茨城っ子育成事業」(平成11〜14年度)
<中・高等学校>
  • 「中・高校生のスポーツアドバイザー活用事業」(平成10〜14年度)


(3) Tスコアによる体力テスト結果の活用
 測定単位が異なる記録の比較をするには,Tスコアを用いると比較しやすくなる。また,Tスコアを比較図(レーダーチャート)に表すことにより,児童生徒の体力のバランス・水準(学校や個人の体力プロフィール)を分かり易く表現できる。

  • ア Tスコアの計算方法
     (本校の平均値)−(本県の平均値) 
T =       (本県の標準偏差)     × 10+50

※ 50m走については、測定値が小さくなるほど記憶がよくなるため、平均値の差にマイナスを掛けて計算する。


☆Tスコアの計算例
種 目 本県平均値 本県標準偏差 本校平均値 Tスコア
握 力 40.94 6.10 43.61 54.4
50m走 8.35 0.88 8.48 48.5

       43.61 − 40.94
握力 T =       6.1     × 10+50=54.4

       −(8.48−8.35)
50m走 T =     0.88     × 10+50=54.4

  • イ Tスコア比較図(レーダーチャート)の作成と活用
    • 本県値を50(正9角形)で表示。
    • 種目ごとのTスコアをグラフに記入する。
    • 学校(個人)の値が9角形の外側の場合は,本県より優れており,内側の場合は,本県より劣っている。
    • 学校の体力プロフィールについては,児童生徒の目につく場所に掲示し,体力つくりへの意欲の高揚を図る。
    • 劣っている体力については,体操領域,各運動領域・体育的行事等で計画的・継続的に改善に取り組む。
レーダーチャート


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