4.授業研究

 授業研究は,研究の基本的な考えと実態調査の結果を踏まえ,子供の自由な発想と夢を生かし,表現力を育てるために,教師の支援,活動計画づくり,場の設定及び学習環境を視点とした。

【授業研究1】 小学校第1学年「はなのまわりで」における創造性を培う支援の在り方

(1)  授業研究のねらい
 本単元における子供の創造性は,開花した花のまわりで一人一人が育てた花への思いをもって花・葉・種を素材にして自分なりの表現方法で遊ぶ活動や,また友達と助け合ったり教え合ったりする活動を通して創造性が育成されると考える。そこで,これまでの花を育ててきた思いを大切にして,子供一人一人が自由な発想や夢をふくらませて自分なりに表現できるための具体的な支援の方法について研究をする。
(2)  子供の自由な発想と夢を生かし表現力を育てるための手だて
 子供の発想や夢を大切にした活動計画
(ア)  表現場面のある小単元を設定し,自由な発想や夢を表現できる場とする。
(イ)  子供にとって身近な人々の協力を得て,学習が展開できるようにする。
(ウ)  子供の思いや願いを,話合いやつぶやき・会話などから的確に把握し,それらを大切にして活動計画を作成していく。
 活動意欲が高まるような場の設定と学習環境の構成
(ア)  豊富な素材・用具を提示し,自由な発想や夢を具体的に実現できるようにする。
(イ)  活動スペースを広げた活動室の環境を構成し,活動意欲を高めるようにする。
(ウ)  振り返りの時間を設定し,友達の活動のよさや工夫している点を認め合い,励まし合う場を設定する。
(エ)  つくっては改良し,遊び方やルールも考えられるよう試行錯誤しながら活動する時間を確保する。
 一人一人の思いや願いに応じた教師の支援
 T・Tを取り入れ,グループや個に応じた適切な支援をし,子供の思いや願いが実現できるようにする。
(3)  授業の実践
 単元  はなのまわりで
 単元について
 4月から継続している栽培活動のフィナーレとなる単元である。花を育てた喜びや種ができた驚きを,花・葉・種を素材にして自由な発想で身近な人に知らせ合う表現活動から創造性を育てることができると思われる。「こんなふうにしてみたいな」という子供の思いをふくらませ,具体的に子供の発想や夢を実現できるような支援をしていきたい。
 そして,「花を育ててよかったな」「また育ててみたい」という植物への親しみや思いをさらに深めることができるようにしたい。
 単元の目標
<関心・意欲・態度>  花の咲いた喜びを体いっぱいに表して,花を使ってプレゼントを作ったり,花に語りかけたりすることができる。
 育てた花への愛情をもとに,製作活動では自分で必要な材料を選び,活動に没頭している。
<思考・表現>  その子なりの方法で,花を育てた喜びを絵,言葉,動作,劇化などを用いて表現できる。
<気付き>  植物が成長するためには,いろいろな世話が必要であることや花のあとに多数の実ができることに気付く。
 友達のよさや工夫しているところに気付く。
 活動計画(8時間)
活動計画
 本時の活動
(ア)  目標  自分が育ててきた花が咲いた喜びを,身近な人に知らせたいという思いを大切にしながら,自分なりの方法で「フラワーパーティー」の準備ができる。
(イ)  支援  本時では,「パーティーでしてみたいこと」を友達と協力して試行錯誤しながらの活動が予想される。また,試し遊びをしながら,もっと楽しくするには,ルールはどうするかなど友達と教え合ったり助け合ったりする場面も見られるであろう。そこで学級担任と担任外でT・Tを組み,子供の思いを十分に汲み取って個やグループに応じた支援をしていく。
  (場の支援)
   自由な発想や夢が実現できるように多様な素材・用具を準備する。
   つくっては改良し,遊び方やルールも考えられるよう時間を確保する。
   試し遊びの場を設定し,広いスペースでのびのび遊べるようにする。
  (思いへの支援)
   教師2人によるT・Tにより,一人一人の思いに応じた支援をしていく。
   友達のよさや他グループの工夫している点に気付いたり,認めたりする時間を確保し,活動に対する満足感や充実感を味わえるようにする。
(ウ)  評価
場 面 評 価 の 観 点 求める子供の姿
活 動 中 関心・意欲・態度 ・自分で必要な材料を選び,活動に没頭している。
・友達と教え合ったり助け合ったりしている。
思 考・表 現 ・その子供なりの発想や工夫をしている。
・遊び方やルールを説明している。
気 付 き ・友達の表現活動のよさや工夫している点に気付く。
(エ)  展開
展開
 教師の支援と子供たちの活動
 「明日,お家の人や上級生がパーティーに来てくれるから完成させよう。」という気持ちでどの子供も自分の思いを実現させることに専念していた。2人の教師によるT・Tで支援をしていったので,子供の活動の様子を十分に見取ることができた。教師も子供と一緒になって遊び,共感し,認め,励まし,適切な助言をしていく余裕があった。それによって子供たちは一人一人が自分の発想で活動していた。さらに,友達の作品のよさや教師の助言を参考にして自分なりに工夫を加え,自分の活動を深めていった。経験を生かし,友達と協力して活動しながら集団としての磨き合いが見られ,集団として高まっていった。ここで,1人の子供と1グループ6人の子供たちの活動の様子と教師の支援について述べる。
教師の支援と子供たちの活動
◎子供の活動   ■教師の支援
(4)  授業の分析と考察
 子供の発想や夢を大切にした活動
 第三次では,2人の教師が子供の思いや願いを十分聞き,相談にのれる時間をとった。そのため,多様な活動にも子供の発想を実現できるような具体的な支援をすることが可能となったと考えられる。
 また,「フラワーパーティー」では,家の人や上級生,幼稚園児の参加協力を得ることができ,子供たちは思い通りの表現活動を展開することができた。この小単元を計画したことにより,子供たちは自分なりの表現活動への満足感を味わうことができたと考えられる。
図3 種のまとあて

図3 種のまとあて
 場の設定や学習環境の構成
 活動室に多様な素材や用具を豊富に準備したので,素材を見ながらアイデアが浮かんだり, 活動中に不足した素材を選ぶことができたりした。また,パーティー会場を花畑の横に設定し,子供たちが育てている植木鉢を並べた。さらに,作業机とビーチパラソルなどもグループごとにセットし,楽しい会場になるようにした。そして,毎時間ごとに振り返りの時間を設定した。教師が子供たちの活動のよさを紹介したり,子供たちが自分で工夫した点を発表したりした。この振り返りの時間は,子供たちのお互いのよさや工夫している点を認め合い,励まし合う場になった。これらの支援により子供たちの活動意欲は高まり,パーティーでは,体全体で表現し楽しむことができたと考えられる。これらの場の設定や学習環境は,子供たちの集団としての目的・調和的な創造的能力を育てることにつながったと考えられる。
 子供たちの多様な思いを実現できるような支援
 パーティーの準備は,2人の教師で支援した。各グループを見て回りながら,準備の進み具合や活動の様子を見取り,工夫している点を認めたり励ましたりした。教師も子供と一緒に試し遊びをしたり,活動が停滞している子供にはその思いを汲み取りながら適切な助言をしたりすることができた。また,2人の教師が授業をする前に,各グループの支援の方法について十分話し合い,教師相互のアイデアを交換することができた。このようなT・Tをすることにより,子供たちの多様な思いに対応した支援ができたと考えられる
(5)  授業研究の成果
 生活科学習において子供の創造性を培っていくには,以下のような総合的な取り組みが有効な手だてであることを明らかにすることができた。
 子供たちの発想や夢を大切にして,ゆとりある活動計画を立てる。
 子供たちが「やりたくてたまらなくなる」,「よさや工夫を認められてうれしくなる」場の設定や学習環境を構成する。
 子供たちの多様な発想や夢に対応できるように複数の教師により一人一人に応じた適切な支援をする。
(6)  今後の課題
 子供の創造的能力をさらに伸長していく支援の在り方について研究を深める。
 集団としての創造的能力を高めるための支援について研究を深める。

生活目次に戻る