【授業研究4】 高等学校第1学年 SCHOOL UNIFORMS(Oral communication  B)

1.授業の構想
 オーラル・コミュニケーションBの目標は,「話し手の意向などを聞き取る能力を養うとともに,積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度を育てる。」とあり,これは次の二つ要素から成り立っている。
(1)  話し手の意向などを聞き取る能力を養うこと。
(2)  積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度を育てること。
 これら二つの要素は,主として聞くことの言語活動に焦点を当てているのであるが,ただ相手の話すことを聞くだけでなく,相手の言おうとしていることの意味,すなわち相手の意向などを的確にとらえることを意味している。例えば,相手が話す内容に不明な箇所があった場合には,その不明な箇所について確認し,相手の本当の意向を聞き出すための手段,すなわち確認のための質問方法を身に付けたり,さらに,相手の考えや気持ちなどについて自分の感想や考えなどを述べる方法をも身に付けたり,積極的に活用しようという態度である。
 これらのことを踏まえて,積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度を育てるためには,英語でコミュニケーションできた喜びを味わうことが大切と考え,本時では,より多くの場面でより多くの人と英語を用いるよう,グループ活動やペアワークを中心とした話し合い活動をさせた。

2.指導の手だて
(1)  生徒の興味・関心を高め,生徒が主体的に学ぶようにするため,場面設定,学習形態,表現のさせ方,教師の支援のあり方等を工夫した。
(2)  Key sentences のカードを作り,繰り返し活用させた。(資料1)
(ほぼ同じ内容が,表と裏に,日本語と英語で表現してある。)
(3)  取り扱う話題を生徒が身近なものとして感じるように工夫した。
 近隣の学校の制服の写真
 事前のアンケートに基づき生徒の大まかな意見をグラフにして示した。
 他校生の制服に対する意見を英語で表現してもらいヒアリングした。
(4)  多様な活動の形態を取り入た。
(5)  ワークシートを用意した。
(6)  年度のはじめから,英語で日記を書くよう指導し,身近な事柄について考え考えたり,感じたことを英語を用いて表現したりできるようにした。

資料1 UsefuI Expressions
○ Expressions about school uniforms.

  1. [Agree]
    (1)  We don't have to spend too much time and money.
    (2)  We don't have to worry what to wear every day.
    (3)  When we are in uniform, we look neat.
    (4)  A school uniform is a good symbol of school.
    (5)  I feel we belong to the same school.
    (6)  I feel a bit formal in our school uniform.
    (7)  I feel a bit formal in stand-up collar.
    (8)  I think wearing private clothes to school looks too casual.
  2. [Disagree]
    (1)  Our school uniform is boring, or not fashionable.
    (2)  School uniforms are expensive.
    (3)  I can put on what I want.
  3. [Others]
    (1)  You look nice in DC brand uniform.
    (2)  A gray blazer is nice.
    (3)  I think a checked skirt becomes me.
    (4)  You look different in uniform.
    (5)  I am mistaken for a junior high school student.

3.学習指導案

(1)  Date: October 31, 1997
(2)  Class: 1-8
(3)  Text: Oral Communication B Sailing , Lesson 12 School Uniforms
(4)  Major aims:
Students can learn the use of the new words, phrases and structures describing school uniform.
Students can understand the conversation about school uniforms.
Students can exchange their opinions about school uniforms.
(5)  Allotment:
Period Parts and pages Main Activities
1st INTRODUCT10N 〜 ANSWER THE QUESTION PP.48〜49 Listening
2nd SOUND CHECK 〜 LISTENING DRILLS PP.50〜61 Listening & Dictation
3rd EXERCISES 1,2 P.51 Listening & Preparation for conversation
4th(This period) EXERCISES & Additional work P.51 Conversation
(6)  Aims of this period:
(1)  Students can exchange their opinions about school uniforms.
(2)  Students can enjoy communicating in English.
(7)  Teaching Procedure
Teaching Procedure

4.展開上の工夫
(1)  Exerciseの最後にあるペアワーク“Do you like your school uniform?”を基にコミュニケーション活動を図る実践の時間として発展させた。
(2)  取り扱う話題をいっそう身近なものとして感じるように工夫した。
 Warm-up では近隣の学校の制服の写真の拡大コピーを見せながら,簡単な英問英答を通して,英語の授業に臨む雰囲気をつくった。
 事前のアンケートに基づき,クラス全体の制服に対する大まかな意見をグラフにして示した。生徒の95%は,制服は必要だと思いながらも,70%の者は,自分たちの制服が好きではないという事実を提示し,二つの間にギャップがあることに気付かせ,話合いをする意欲を高めた。
 制服について話し合うために役に立つ表現を日本語と英語で書いたカードを用意し,既習事項の定着をはかるため,前時に引き続き,再度ペアーで問題を出し合う形で活用した。
 コミュニケーション活動のための2回のグループ活動において,最初の話合いでは,自分の意見を述べる部分を空欄に記入させるワークシートを用意した。(指導案の中のQ1),2回目の活動では,さらに発展させて,自分の考えを直接口頭で相手に伝えるようにさせた。(指導案の中のQ2),(資料2)

資料2 ワークシート(ペアワーク用)
資料2 ワークシート(ペアワーク用)
 他の学校(制服を着用しない学校1校,ブレザー着用の学校1)の生徒の意見をテープで聞かせ,その内容について,ヒアリノングシートを使い,正しい選択肢にチェックさせた。そして,最後に,教師と英問英答によるやりとりを通して,正しい情報を確認した。(資料3,資料4)
 ほとんど知らない学校の生徒の意見を正しく聞き取れた喜びを味わうことにより,英語学習に対する興味・関心を更に高めると同時に,制服に対する考えや感想を英語でどう表現するか定着を図った。
 この学習活動は,とりあげた内容が県内の同じ高校生の意見ということもあり,興味・関心が強く,真剣に取り組んでいた。

資料3 Tape Script 1(A high school)
A: Do you like your school uniform?
B: No,because I don't like the color.
A: Then what color do you like?
B: Dark blue.
A: I see.

資料4 Tape Script 3(B high school)
 Hello! I am a girl of the second grade at B high school.I give my opinion about school uniforms to you.
 My school doesn't have a school uniform. So I can go to school with my favorite clothes on.
 By the way,I like trousers better than skirts.So I very often wear trousers.It is my point.If my school had a school uniform,I could not wear trousers.
 I like my school that doesn't have a school uniform.
(3)  活動の形態を工夫した。
 活動を円滑にするため,グループ内で4人(男2人,女2人)に話し掛けるよう指示した。
 より多くの場面で,より多くの人とコミュニケーションを図るため多様な活動の形態を取り入れた。
 座席の隣の人とのペアワーク
 6〜7人の男女混合編成によるグループを編成し,グループ内でのペアワークと話合いをさせた。(ペアワークをする時は,机の周りに立たせ,自由に移動できるようにした。

ペアワークの様子
ペアワークの様子
(4)  生徒の実態に応じたワークシートを効果的に与えることにより,生徒の理解を助けるとともに,授業にリズム感を与え,活動を活発にした。
特に,ヒアリングシートは,答えを選択肢から選ばせ聞くことに専念できるようにした。
(5)  まとめと考察
 オーラル・コミュニケーションBは,主として聞くことの言語活動に重点をおいているが,ただ相手の話すことを聞くだけでなく,積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度を育てることも目標としている。具体的には,相手が話す内容に不明な箇所があった場合には,その不明な箇所について確認し,相手の本当の意向を聞き出すための手段,すなわち確認のための質問方法を身に付けたり,さらには,相手の考えや気持ちなどについて自分の感想や考えなどを述べる方法をも身に付けることである。
 これらのことを踏まえて,本時は,主としてペアグループで制服に対する考えや感想を話合う時間とした。積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度を育てるためには,より多くの場面で,より多くの人と英語を用いてコミュニケーションを図ることが大切であると考えたからである。
 そして,生徒の興味・関心を高め,生徒が意欲的に学んだり,英語を用いてコミュニケーションできた喜びを味わったりできるように,場面設定,学習形態,表現のさせ方,教師の支援のあり方等を工夫した。
 授業後に実施したアンケートによれば,70〜80%の生徒が「楽しかった。」「ためになった。」などと回答している。(資料7)
 生徒は今回の活動をこのように肯定的にとらえており,効果があったと判断できる。ただし,「また,このような活動をしたいですか。」という問いに対しては,「はい。」と,積極的に答えた生徒は65%であり,なお一層の工夫・改善が求められている。

資料5 授業後の感想 (単位%)
  質   問 はい いいえ どちらともいえない
あなたは積極的に話したり,聞いたりしましたか。 75 25
英語で話し合ったりする授業は楽しかったですか。 77 23
このような活動はためになりましたか。 87 13
また,このような授業をしたいですか。 65 32
これからも英語に興味が持てそうですか。 77 23


 最後に,英語科の研究テーマ「生きた英語を実感できる学習活動の在り方」は,「事物や事を多様な観点から素直に感じ受け止めながら,自己をより高め,より良いものにしていこうとする基になるカを育成すること」を踏まえている。そして,このカを育てる手だてを追求してきたわけであるが,上記の生徒の感想から,本時の学習によって,生徒は英語で意志の疎通が図れ,コミュニケーションできた喜びを感じるとともに,英語をより積極的に学ぼうする意欲をもつことができたと思われる。

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