【授業研究3】 高等学校第2学年 オーラル・コミュニケーションA “Are You Free This Weekend?”

(1)  授業の構想
 AETと共に英語を学ぶようになってから,生徒は以前よりも上手にしかも自然に英語で反応できるようになってきている。しかし,実際に場面を設定して英語でAETと,また生徒同士で話すと,それまでに覚えているはずの表現や単語を使って会話を作り上げ,必要な情報をやりとりして会話を楽しむことが難しくなり,次の段階に進むことができない。
 以上のようなことを踏まえ,前もって生徒自身が,どのような場面で話すのかを理解した上で,その中で話し合うべきことを調べておけば,その情報を英語で表現し相手に伝えてみたいという意欲が増すのではないかと考えた。そして生徒が話すことができるような身近な場面を設定し,英語で話してみたいという気持ちにさせることを授業の目的として考えてみた。
(2)  指導の手だて
 準備をさせるための工夫
(ア)  学習形態の工夫
 普段はペアでの練習が多いが,今回は1班4人から5人で10班を編成し,共同で事前に調べることを話し合い,確認することによって,授業で行うことをしっかり意識することができるようになると同時に,班で協力し合って準備できるようにした。
(イ)  会話に必要な情報の準備
 第1時で教科書に基づいた会話のモデルを練習し,「友人に週末の予定を聞き,どこかに一緒に行くように誘う。」という場面設定と,その中でやりとりすべき情報について説明した。というのは,自分たちが相手をどこに誘うのか,その場所に行くための交通手段や待ち合わせの時間,入場料など,相手に与えるべき情報について,前もって調べておくことで,相手に英語で伝えたいという生徒の意欲が高まると考えたからである。
(ウ)  場面設定に合わせた会話文の提示
 教科書の会話のモデルのほかに,同じような場面で,尋ねる内容が異なる表現を含む三つのパターンの会話の例を前の授業で提示し,そこに出てくる表現や単語について確認しておくことによって,生徒が自分で調べた情報を使い,会話を組み立てやすくした。
 授業の中で
(ア)  リラックスさせるために
 生徒がリラックスして授業に参加できるように,ウォームアップとして,AETが毎時間授業の冒頭で,「今日の漢字」と称する活動を行なっている。これは,AETを一字黒字黒板に書き,それを読んだ後でその漢字を使った日本文を提示する。生徒はこの日本文を英語に訳して発表するが,その際言葉の使い方や微妙な感覚の違いなどに接することができる。この後生徒の一人が反対に,英語の単語とその単語を使った英文を提示して,AETがそれを日本文にする。この活動によって,なごやかな雰囲気が生まれる。
(イ)  質問事項を書いたワークシートを利用して
 それぞれの班で自分達が行くと想定した場所を決定し,その場所についていくつかの事柄について調べ,のちに他の班の人を一緒に行くように誘うことになる。誘われた人は,その場所への交通機関,待ち合わせの時間,入場料などについて質問することになるが,その際生徒は,質問しやすいように配付した,質問事項を英語で書いたワークシートを利用して,メモを取るようにする。生徒はこの後,このメモを使ってAETやJTEから質問を受けた時,自分が得た情報について説明できるようにした。
資料1 会話の例
【Patern A】
 A:  Do you have any plans for next Sunday?
 B:  No,I don't.
 A:  Would you like to go to with me,then?
 B:  I'd like to. How are we going to get there?
 A:  We take a train at Mito Station and take off at Katsuta Station and from there we go by bus.
 B:  How long does it take to get there?
 A:  May be about an hour.
 B:  I see. What time does the park open?
 A:  10 o'clock a.m. So, can I meet you at Mito Station at 8:30 on Sunday?
 B:  0.K. Thank you for inviting me.
資料2 ワークシート
No.1 (Take notes during talking with your friend when you are invited.)
Name of your friend inviting you
Date
Place
Transportation
Opening time
Time to meet
Admission Fee
(3)  授業の考察
 準備
 班を編成し,前もって授業の目標について説明すると生徒は興味をもって「行き先」と想定する場所を決定したり,その場所に関する情報を集めたり,なかには英語の表現についても話し合い,質問する生徒も見られた。生徒自身が学習する内容に必要な知識や情報などを自分で調べることが,自主的な学習意欲を育てる上で重要なことであることを改めて確認した。
 今回の授業については,準備したものを確認する時間が十分ではなかったと考える。この生徒が集めた情報の確認は,日本語で話し合ってもよいだろう。この確認によって生徒に余裕が生まれ,生徒は一層授業を楽しむことができたのではないかと思う。
 授業について
(ア)  プリントの利用
 今回の授業では,会話の練習の際の補助として,2種類のプリントを生徒に配付した。1種類は授業での会話練習の際の場面設定に合わせた三つのパターンの会話例であり,今回の単元の1時間目に配り,練習をした。もう1種類は,メモとして利用するため質問事項を書いたワークシートである。これは本時の会話練習の前に配付した。いずれも前に授業で取り入れたことがあるが,今回は少し量が多過ぎたようで,生徒がメモをとるのに苦労したようである。会話例のプリントについて,生徒はアンケートの中で「プリントを見ないで話すことが難しかった。」「見本の文を読むだけで自分の会話が続かなかった。」などの感想を書いている。またワークシートの利用については,メモを取るために会話がたびたび中断してしまうことがあり,工夫が必要であろう。
(イ)  生徒の反応
 授業の中で,生徒の会話がスムーズに進むようになるまで少し間があり,とまどいも感じられた。しかし,授業後のアンケートによると,生徒は少なくとも2人から7人と会話をしAETとも会話をしている。一番多いのは4人ぐらいと会話したという回答である。生徒は苦労しながらも,自由に話すことができたことや,たくさんの友達と話すことができた。いままではペアで話すことが多かったが,みんなで話すことができてよかったと感じている。また,英語で話すようにできるだけ努力したとか,英語を使い,英語での会話が楽しくできたと思っている。中には,AETと話せるのがうれしいし,何よりも自信がつくと書いている生徒もいた。
 顕著なことは,授業の前のアンケートでは,授業の中で英語で話すのは先生やAETに質問された時,会話をするように言われた時であったものが,この授業では,自由にたくさんの人と話せたことが楽しさに結びついており,何よりも生徒が積極的にコミュニケーションをとっている様子が見えた。一方,「授業を楽しめなかった。」「日本語が楽。」「英語がしゃべれない。」という回答もあり,今後もていねいに対処する必要がある。
(4)  まとめとして
 オーラル・コミュニケーションの授業では,生徒がいかに自然に聞いたり話したりできるかが目標であり,そのためには生徒の自主的な意欲を引き出すことが課題である。その意欲が,生徒の英語を生きたものにしていくと思われる。今回の授業で,生徒のなかには,難しいと感じながらもできるだけ多くの人と話そうと努力していた生徒もいた。そして,今までよりも自由に積極的に,友達と英語で会話を楽しもうとしていた様子が見えた。
 生徒がより生き生きと学習活動をするためには,生徒自身の手で準備がしっかりなされるような手だてが必要であり,その準備を助けるのが,教師の役目であろう。教師が,どのような場面を設定して会話を行なうのか,常に十分に説明し,生徒がその場面に必要な情報を集めやすくした上で生徒を見守る必要がある。そして,生徒が英語で会話をする活動に入る時には,その活動を補助するプリント類を生徒が十分に活用できる量を考えて与えなければならないであろう。そうすることによって,生徒は自分たちが身に付け準備したものを生かして,英語で素直に表現し活動できるようになると考えられる。

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