【授業研究2】 中学校第3学年 POP BOX2 “How Shall I Spend My Holidays?”

1.授業の構想
 研究1年目の10月に行ったアンケートの結果から,生徒は,今学んでいる英語を使って様々な体験をしたり,教科書以外の英語にふれたいと望んでいることが分かった。これは,今の英語の授業の中に生徒が求めている体験型学習が少ないことや教科書だけの学習になりがちなことを示していると考えられる。
 生徒にとって最も身近な「生きた英語」とは教師である。生徒が英語に接する時間は,英語に対する興味・関心の高い生徒を除いて,一般的にきわめて短い。まずは,教師が実際に体験したことや実践していることを授業の中に取り入れてこそ,生徒は「生きた英語」を「実感する」に違いないと考えられる。
 そこで,これまでの様々な体験を授業に導入して英語を学ばせることにより,英語を使う楽しさやコミュニケーションをすることができた喜びを味わうことができると考え授業を実践した。

2.指導の手だて
(1)  話すことに慣れるために
 対話は基本的に個人対個人で成り立っている。対話に慣れるように,1日に1回は英語を使おうということで毎時間テーマを決め,基本的な表現を使って1対1で対話をさせた。対話をする前に必ず質問の仕方(今まで学習した表現)を思い出すよう,いくつかのパターンで最初に教師が生徒と対話した。
(テーマ例)
sports,hobby,animals,fruit,Sunday,travel,country,dish,flower,season…
Do you like sports? I'm insterested in ….
What sports do you like? My favourite □ is …?
Why …? What kind of □ is …?
Are you a good …player? Can you □ …?
(2)  話を発展させるために
 どちらか一方だけが質問し,他方は答えるだけにならないようにするため,互いに質問し合ったり,相づちを打ったりして,話題が発展するようにした。その際,具体的な場面を設定したり,具体的な物を使って対話を行うようにもした。また,場面ごとに覚えておくと役に立つ表現例を生徒に配布した。
(例)話題を発展させる表現
Why …? Because….
How about you?
Excuse me. Pardon?
Ah,so.
Really?
Would you like …?
When …?
Where …?
Which …?
資料1 場面別表現
●症状の表し方(あいうえお順)
頭が痛い
息苦しい。
おなかが痛い。
かぜをひいた。
花粉症に悩む。
気分が悪い。
血便が出た。
下痢をしている。
高血圧だ。
足を骨折した。
寒けがする。
I have a headache.
I have difficulty breathing.
I have a stomachache.
I caught cold.
I suffer from hay fever.
I'm not feeling well.
I had a bloody stool【ストゥール】.
I have diarrhea【ダイアリーア】.
I have high blood pressure.
I broke my leg.
I feel chilly.
(3)  生徒の発想を生かすために
 教科書で学んだことが実際の場面で生かせるようにするため,スキットやクイズ作りに取り組んだ。自分たちのアイディアが英語を学ぶことに結びつくと分かったとき,生徒は学ぶ楽しさを味わうことができる。
生徒が作成したスキットの例
A: What's wrong?
B: Oh….I have a toothache.
C: 歯が痛そうだよ。
B: Can you tell me the way to the dentist?
A: Let me see. Go straight for three blocks.
Between Fujiya and a CD shop.
B: Oh,thank you very much.
A: You're welcome.
関係代名詞を使ったクイズ
an animal which has the longest nose

a thing which has three eyes

a person who is very famous
basketball player in the world

3.学習指導案

(1)  目標
  •  天候を表す表現を理解し,運用することができる。
  •  4連休の予定について英語で話し合うことができる。
(2)  学習計画(2時間,本時は第2時)
(3)  本時の学習
 目標
  •  自分や友達がどのように連休を過ごすか,英語で話したり尋ねたりすることができる。
  •  4連休の過ごし方について計画を立て,英語で表現することができる。
  •  英語で食事の注文をすることができる。
 展開
展開

4.研究授業の反省
(1)  研究授業に至るまで
 生徒にとって「生きた英語」とは,興味・関心がある内容の授受があるものである。単にそれぞれに興味・関心がある内容に関する表現を学習しただけでは,身に付けさせることは難しい。そこで,体験的学習を取り入れ,それらの表現が,海外に行ったときにどういう場面で使われるかということを想定して,授業を実践してきた。
 できるだけその場の雰囲気を出すために,実際に使われているものや,その場面で行われる対話のサンプルを用いるなどして,毎時間対話を5分間ほど実施してきた。そのため,生徒は次第に英語を使うことに慣れ,英語での指示や質問にも抵抗なく反応するようになってきた。
(2)  研究授業について
 今回の授業では,1人約20分間の英語を使う時間を確保することができた。また,飲み物を注文するときに4種類のジュースを用意して,実際に選択させるという自己の意思決定の場を設けた。誰もがウェイターやウエイトレス,客の立場を体験する活動の最後の時間ということで,慣れてきたこともあり生徒たちは緊張した様子もなく活動できていた。ただ,その場の雰囲気をもっと出すための準備が足りなかった。
 4連休に自分や友達が何をするかということを,お互い伝えることはできたが,聞いたことを正しい表現でメモすることは難しかったようである。代表的な例を挙げて,正しい表現の仕方や表現の幅を広げることも必要であった。
 グループによる活動ということで生徒は助け合いながら対話をしていたが,特に英語が不得意な生徒に対してはもっと積極的に援助すべきだった。
(3)  生徒の変容
 授業後の感想
資料2
  •  今までの2年間と違う授業スタイルに最初は戸惑いと不安があったが,ふだん使う英会話ができるのだなと思ってうれしかった。
  •  今回の授業は,今まで何回か研究授業を行ってきたけれどいちばん楽しかった。英語があまり話せなくても単語を並べるだけで相手が理解してくれることが,英語の不思議さでもあるし,魅力なんだということを今回の授業で自分なりに感じた。
  •  先生が見に来ているというのにこんな楽しい授業をしたのは,この3年間ではないと思います。将来,アメリカのステーキレストランヘ行ったら今日学んだ英語を使っておいしいステーキを注文したいと思います。
資料3
OUR PLANS ARE…
Name Name
Name Name

今日の授業の自己評価をしよう(○をつけよう)
1 アイコンタクト 4 理解
2 話題の広がり 5 表現
3 意欲
 アンケート結果
 右のグラフからも読みとれるように,約70%の生徒が,以前の授業と比べて楽しさを感じている。その理由としては,「外国で日常使われている会話を知ることができた。」
 「以前は書くことが多かったが,授業で話すことが多くなった。」などど答えている。
 これらア,イの結果から,過去2年半の授業に比べて,現在の英語学習に喜びを見いだしており,さらに,テーマを決めた会話や場面を決めて,話をはじめ,調べ学習もやってみたいという声も少なからず聞かれるようになった。
 これは,生きた英語を実感できる機会を授業の中にできるだけとり入れきた結果,生徒たちの間に英語学習に対するプラスの変容があったからであると思われる。
資料 4
以前と比べて今の英語の授業はどう思いますか

回答 円グラフ
楽しい
楽しくなってきた
今までと変わらない
以前の方がよかった
その他
(4)  まとめ
 「事前に準備されたスピーチではなく,Oral Communication の即興性を考え,別な題材でもアドリブのきいた Communication を」というのが昨年度の課題の一つであった。つまり,前もって準備されたものを約束通り,口にするのではなく,場に応じた表現が臨機応変に口をついて出てくる状態を授業展開の中で探求していくということであると考える。いいかえれば,できるだけ生きたコミュニケーションが行われるような場の設定を工夫することが必要なのである。我々の日本語での日常会話がそうであるように,場面抜きの会話など考えられないのである。
 しかしながら,「ない袖は振れない」という言葉に代表されるように,知らない表現は使えないのであり,どんなに場面設定を工夫したところで,生徒たちの口は依然として重いのである。そこで,Oral Communication の場を設定するにあたり,大切になってくるのが,事前に何をどれだけ知らせておくかということであろう。今回の実践はそのほんの一例に過ぎないが,ステーキレストランでの会話の場面を設定するにあたって,それに至るまでの過程で3種類の指導の手だてを考え,本時に至るまで,日々の授業の中で実践した。
 結論として,生きた英語を実感できる学習活動を展開するには,次の4つの要素が考えられるであろう。
 折に触れて,日常生活に英語が深く浸透していることを,具体的な例を示して十分理解させる。
 学習した表現が,実際の場面でどう使われているのかを理解し,疑似体験ではあるが,実際の場面を設定してコミュニケーション活動を行う。
 たとえ短い対話であっても,毎時間テーマを変え,既習の表現の定着を図るため,英語で対話する時間を確保する。

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