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 授業研究の実践



【授業研究1】 中学校第3学年 Program 7 “The Home Planet”

1.授業の構想
 生徒の豊かな感性を育てるため「生きた英語を実感できる学習活動の在り方」について模索してきたが,このテーマに沿って授業を構想する場合,コミュニケーションで使われる英語の内容が問われるように思われる。
 すなわち生きた英語とは,生徒が興味・関心のある内容について発話し,それを受け止めて理解するための英語である。生徒にとって意味のある情報のやりとりがあって初めて生きた英語であり,豊かな感性を育てるコミュニケーションと言うことができる。
 Program 7は地球環境の現状について宇宙という視点から考える題材である。本来4領域のうち「読んで理解する」活動が中心になる題材であるが,新しい方向を模索するため,単元の計画を大幅に見直してみることにした。すなわち,読んで理解したことを基に環境についてさらに深く調べて,発見したり感動したりした点を発表し,理解し合う機会を設けるようにしたのである。
 環境の問題というと語彙も難解なものが多く,英文も複雑になることが予想されるが,今まで練習してきた日常的な話題よりも一歩踏み込んで,自分たちで調べ,考えたテーマを発信させることで,生徒の側にも「ぜひ,わかってほしい。」という自己表現の欲求が高まり,「どうしたらよく伝わるだろうか。」という工夫が生まれるのではないかと考えた。
 このように単元の計画を見直し,再構築することは,生徒の心を揺さぶるようなダイナミックな仕掛けを作る上で必要なのではないかと考えた。

2.指導の手だて
 生徒に十分な時間と資料を与えて問題意識を高めること
 生徒に,まず図書室でグループごとに調べ学習をさせた。“50 Simple Things To Save The Earth”の本とその日本語版である「地球を救う簡単な50の方法」を各グループに与え,この本を柱に,テーマを絞って調べさせたり話し合いをさせたりすることで,生徒は各グループの問題意識を高めていった。
 発表の内容が十分に伝わるような工夫をさせること
 生徒は日常的なテーマで,英語で話す練習は何度もしているが,あるまとまったテーマについて英語で話す機会はこれが初めてである。「どうしたら聞いている人たちに分かってもらえるか。」「どうすれば興味をもって聞いてくれるか。」について,具体的な例を挙げながらグループごとにアドバイスをしていった。
 発表の内容が聞いて理解できる手だてをすること
 環境というテーマで取り組む場合,どうしても専門的な語彙の学習はさけて通れないので,各グループに聞き取りの補助になるように,ワークシートを用意させ,要点を意識して聞き取れるよう援助した。また,教師側でも自己評価・相互評価の欄を設けて,発表する側も聞き手の側も学習活動として真剣に取り組めるように工夫をした。

3.学習指導案

(1)  学習計画 省略(10時間,本時は第9時)
(2)  本時の学習
 目標
  •  自ら調べた内容について各グループで発表方法を工夫して分かりやすい英語で伝えることができる。
  •  ほかのグループの発表を興味を持って聞き,環境についての新たな知識を英語で得ることができる。
 展開
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4.授業の考察
(1)  生徒の準備の様子について
 事前の調べ学習の段階から,生徒は意欲的に作業に取りかかっていた。これは「自分たちが調べて分かったことについて他の人に英語で伝える。」という,今まであまり経験のない設定であったため,生徒のやる気を大いに引き出したものと思われる。
 一方,「環境」という大きなテーマを与えられて,どこから取りかかっていいのか分からないグループや,話題を広げすぎたり,発表内容が絞り込めなかったりするグループも見受けられたのも事実であった。しかし,話合いを深めるうちに自分なりの問題意識も膨らみ,次第にポイントが絞れるようになっていった。生徒は試行錯誤しながらもグループごとの発表のスタイルをつかんでいくことができた。
(2)  生徒の発表の様子について
 どの生徒も大変意欲的な発表を行うことができた。音声による表現力には差があるが,この段階においては自分たちで調べ,発表しようとして工夫した内容であるので「伝えたい」という気持ちが非常に高く,練習やリハーサルにもカを入れることができた。リハーサルを行ったことで自分たちのグループの発表内容がどの程度分かりやすいか,お互いにチェックすることができた。
 発表会当日はとてもアットホームな雰囲気で楽しく行うことができた。環境問題という話題のため,未習の語をキーワードという形で提示するグループが多かった。そのとき,普段の授業での新出語の練習のように,生徒が声をそろえて発音するなど,グループ同士が発表を尊重して熱心に耳を傾ける態度が観察された。これも発表会までに相当の準備と練習をしたことをお互いに知っているからできたことであろう。生徒は緊張しながらも,英語で伝えられた成就感を得ることができたようである。
(3)  生徒の理解の様子について
 感想文や相互評価のカードなどを分析してみると,グループによって伝わり方はまちまちのようである。このような伝わり方の違いがでたのは,発表する側がどれぐらい聞き手の側を意識して準備し,発表したかによるのではないだろうか。聞き手側を十分に意識した発表は,聞き手側にその内容について十分に考えさせ,環境問題についての意識を高めさせることができた。
(4)  まとめ
 日常的な会話の練習や簡単な話題についてのスピーチを除いて,生徒たちは自分のまとまった意見や考えを英語で発表するのは初めての機会であった。その中で聞き手を意識して表現を工夫したり表情をつけたりすることは,たとえ準備の期間があったにしても少々要求が高すぎたかもしれない。しかし,この取り組みを通じて生徒は多くのことを学んだのではないだろうか。最大の収穫は英語が生きた言葉であり,日本語と同じように情報をやりとりする手段だということを,初めて実感したということである。発表の際に失敗した点はあったにしても,そのことが教訓となって今後の英語学習やコミュニケーション活動に生きてくることを期待したい。

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