【授業研究5】高等学校第3学年「言語」

1.授業の構想
 国語科教育が言語の教育であるという認識は,だれもがもっているが,実際の学習指導においては,教材の内容を中心にして授業を進めることが多いように思われる。言語に関する事項の教材や指導方法の研究・開発は,他の領域・分野に比べると決して十分とはいえない状況であろう。そこで,言語に関する興味・関心を喚起させ,言語に対する感覚を豊かにするための実践的な指導方法として,コンピュータを道具として使うことを考え,コンピュータのよさを生かした指導方法を試みることにした。

2.指導の手だて
(1) 興味・関心の喚起
「国語CAI」ソフトによる漢字・語句の学習
 問題部分を生徒の実態にあわせて作成したドリル型のソフトを使用した。
コンピュータのワープロ機能を利用した漢字・語句の学習
(ア) 漢字の学習
 すべてひらがなで書かれた文章がいかに読みづらいかを体験し,漢字に変換する作業を通じ,漢字の必要性を再認識することができるのでないかと思い,コンピュータのワープロ機能を利用することを考えた。
(イ) 語句の学習(本時)
 人間の「泣く,笑う」という感情を表現する擬態語・擬声語等を,いくつか記入し,どのような場面で使うか例を示すことにより,その言語がもつ感覚を認識することができるであろうと考えた。さらに,経験・体験等に裏付けられた自分の言語感覚を基に,その言語がもつ「悲しみ,おもしろみ」をその度合いにより比較・分類することによって,改めてその言語から受ける感覚を整理するのに役立つであろうと考えた。
(2) 指導方法の工夫
コンピュータのリモート操作による個別指導
 一生徒のコンピュータをリモート操作で教師が直接コントロールすることができる。生徒の画面を随時モニターしながら,必要があれば,教師側から生徒のコンピュータの画面にヒントやメッセージを送ったり訂正したりすることにより,他の生徒に分からないように指導することができる。教師は教室内を移動せずに的確な助言をタイムリーな形で与えることができ,効果的な指導が可能になると考えた。
コンピュータを生かした学習成果の交流
 積極的に発表したいという生徒が少ないため,一生徒のコンピュータの画面を他の生徒全員に中継するという,間接的な発表形式をとることを考えた。生徒は誰の解答か分からないので,誤答であっても他の生徒の参考として全生徒の画面に提示できる。また,スライドのように次々と表示することができるので,言葉から受ける感覚が新鮮なうちに作業を進めることができると考えた。
(3) イメージの視覚化
 言葉から受けるイメージをそれぞれ比較し図示することで,改めてその言語から受ける感覚を整理することができると考えた。


3.学習指導案

学習指導案


4.授業の考察
 コンピュータは,マウスやキーボードを操作しなければ動かない。したがって,学習に対して取り組む態度にも主体性が見られるようになった。
 日常何気なく使っている言葉を,改めて文字に表し,使い方を整理するという作業は,その言葉の持つ意味はもちろんのこと,言葉の持つ感覚を再認識する上で大変役に立った。この感覚は単なる言葉の意味だけにとどまらず,生活体験や経験などによって育てられ,あらゆる言語活動の中で磨かれていくものであろうと思われる。他の生徒の解答を参考にするということは,様々な用例に触れることであり,語彙を豊かにしたり,生徒が自分の言語感覚を確認し直したりすることでもある。
 こうした言葉の持つ響きやニュアンスに触れ,言語の使い方についての適否や美醜を感じ取ることが,今後の表現や理解の活動に役に立つことを期待したい。

真剣にディスプレーを見つめる生徒
真剣にディスプレーを見つめる生徒

資料6 生徒の解答例
資料6 生徒の解答例

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