(1) | 教科共通の研究主題 「豊かな感性を育てる学習指導」 | |||||||||||||||
(2) | 教科別主題と研究のねらい
|
(1) | 研究の視点について 昨今の子供の姿として、いじめ、登校拒否など物質的な豊かさの裏に子供の心の貧しさが指摘され、今日の教育的な問題の一つとして、子供の「感性の不毛」が上げられている。 このような中で、改めて「人間性の教育」が強調されている。「人間性の教育」(子供それぞれの個性や人格の育成を図る。)は「有能性の教育」(役に立つ人間、一人前の人間として生きていくために必要な諸能力を伸ばす。)と調和して成立するものである。この二者を結びつける基盤として「豊かな感性」を取り上げることができる。 第15期中央審議会第一次答申では、今後における教育の基本的な方向の中で、これからの変化の激しい社会にあって、子供たちに必要な資質や能力を「生きる力」と称し、「生きる力」は理性的な判断や合理的な精神だけでなく、美しいものや自然に感動するといった柔らかな感性を含むものであると述べている。 このような今日的な教育問題や今後の教育の方向性を基に、教科教育第一課では「感性」に研究の視点を当てて研究を進めることにした。 平成4年度から平成7年度にかけて教科教育第一課(平成4・5年度は基礎教育課)では、学力を「学ぼうとする力」「学ぶ力」「学んで得た力」ととらえ,平成4・5年度は,「学ぼうとする力を育てる学習指導に関する研究」,平成6・7年度は,「学ぶ力を育てる学習指導の在り方」と研究主題を設定し,実践的に研究をすすめてきた。 4か年の研究の成果として,「学ぼうとする力」や「学ぶ力」についてのとらえ方,学習過程の在り方や教師の支援の在り方等が明らかになったが,課題として次のようなことが挙げられた。
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(2) | 感性のとらえ方 「感性」については,
以上の定義を参考にして,教科教育第一課では,感性を基本的に次のようなものととらえることにした。
そして、研究を通して育てていく豊かな感性をもつ子供の姿を
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(3) | 豊かな感性を育てるための学習指導改善の視点 豊かな感性を育てるために、国語科、社会・地理歴史・公民科、算数・数学科、外国語科(英語)科の4教科の中で、次のような視点から、学習指導の改善の方向を考えていくことにした。
ア 豊かな感性を育てる学習の場の工夫
イ 豊かな感性を育てる学習の場と子供の学習活動
|
(1) | 平成8年度の研究
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(2) | 平成9年度の研究
|
○ | 国語科 豊かな感性を育てるために,言語感覚を育てることに焦点を当てて研究を進めてきた。小学校では,デイベートを取り入れた学習や学習カルテを活用し複数教材を用いた学習,中学校では,意席の似た言葉の辞典作りの学習,コース別学習を取り入れた比喩の学習,高等学校では,擬声語,擬態語を分類整理する学習・名付けの由来の調べ学習を実践した。豊かな感性を育てるために,国語科では・児童生徒一人一人の興味・関心を生かしながら必要感のある言語活動を通して,言葉に積極的にかかわる意識をもつことができるような学習活動を意識的に展開すること,言葉で表現する場を設けること,一人一人が学習したことを児童生徒相互で交流する場を設けることの重要性が確認できた。さらに,児童生徒一人一人の表現に対して,教師や児童生徒相互が共感し,受け入れていく姿勢が重要であることが分かった。 |
○ | 社会・地理歴史・公民科 研究主題に迫るために,体験的な活動を導入し,社会的事象と直接的,間接的に出会う場を意図的に設定することによって,直感や洞察を働かせ,感動や実感をともなう経験の中から切実性のある問題を発見したり,歴史的事象とかかわる先人の働きや苦心,当時の人々の思いや願いに共感したりすることができた。また,子供同士がかかわり合って学び合う場を設定することによって,調べた結果や考えを問い直し,社会的な見方や考え方を広げたり深めたりすることができた。このような学習の場を設定することによって,子供は,自らの感覚や感受性を生かして社会的事象と出会い,思考や判断を繰り返しながらねばり強く問題解決に取り組み,納得あるいは実感をともなって分かるまで,追究することができるようになった。 |
○ | 算数・数学科 数量や図形についての豊かな感性を育てるために,問題を解決していく楽しさに触れながら,数学的な見方や考え方を身に付けることについて研究してきた。小学校では,体験的な活動・具体的な操作活動の工夫,学習計画の立案や小集団による課題解決的学習,中学校では,課題学習やコンピュータを活用した学習,高等学校では,具体物を用いて操作的な活動や自由な意見交換の場を設けた学習などを実践した。これらのことから,児童生徒は問題解決において,興味や関心が高まり,直感的な見方や考え方を発揮して取り組み,自分なりの数学的な見方や考え方で納得するまで意欲的に問題解決を図るようになってきた。これらの実践から,課題を見いだすおもしろさや問題を解決していく楽しさが感じられ,個性を生かした,生き生きとした学習の姿が見られるようになった。 |
○ | 外国語(英語科) 感性を育てることを,体験を通して感動や驚きを基に感じたことや思ったことを表現するコミュニケーション活動ととらえた。そこで,生きた英語を実感できるようにするために,中学校では,興味・関心のある内容について,即興性のある現実の会話に近い言語活動をした。一方,高等学校では,身近な事柄についての題材を取り上げ積極的なコミュニケーション活動をした。このことにより,生徒は生きた英語を主体的に情報をやりとりする意志疎通の道具として実践するようになった。今後は,英語の活用場面やはたらきが広がるような教材の開発が不可欠であると考える。 以上のように,実践研究を通して豊かな感性をもつ子供の姿が見られるようになった。このようなことから,豊かな感性を育てるための学習指導の改善の方向を明確にすることができた。 |
前のページへ戻る