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全体指導計画等の課題 |
指導計画の改善と指導体制の整備について,「学校教育指導方針」で学校や児童の実態に即して充実した特別活動が展開できるよう,指導計画と指導体制の整備に努めることを提言している。しかし,小・中・高等学校の実態を見ると,なかなか「改善」や「整備」が進まないのが現状のようだ。 |
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ア | 特別活動における年間指導計画等の作成者の小・中・高等学校の比較 |
設問1は,小・中・高等学校の年間指導計画等の作成者(中心的役割を担う人)を内容毎に選択するものである。 図28は、全体の指導計画の作成の中心になった人の比較である。 小,中学校においては,ほとんどの学校が特別活動主任が中心になって,作成されているのに対して,高等学校では,特別活動主任を筆頭に(55.5%),教務主任が作成する学校(21.8%),さらに特別活動担当の場合(19.1%)と3つの型に分かれている。 全体の指導計画は,特別活動の中心を成すものであるから、全職員で作成することが望ましいことを忘れてはならない。 図29は、学級活動(ホームルーム活動)の年間指導計画の作成者を比較したものである。 小学校、中学校、高等学校と少しずつではあるが変化が見られる。 ここで注目したいのは小学校の作成担当は、図に示す特別活動担当と(図にはないが)特別活動主任で作成している学校がほとんどで、両者を合計すると78.7%になる。 図30は、児童会・生徒会の年間指導計画の作成者の比較であるが、小学校では特別活動主任が作成する場合と特別活動担当の場合が多いが、やはり,特別活動主任に、特別活動関係の仕事が集中していることが分かる。 児童会・生徒会を実際に動かす児童会,や生徒会担当者も、もっと積極的に指導計画作成段階に参画していかないと形骸化につながる危険性がある。 図31におけるクラブ活動は、児童会、生徒会に比べて、直接子供を指導する担当者が指導計画を作成してることが分かる。 図32の学校行事は,その特質上,小中,高等学校とも教務主任が作成の中心になっているが,多くの場合,作成者は教務主任一人になる傾向が強い。 そのために,学校行事の精選などでしばしば特別活動担当,あるいは学年の先生が知らないうちに,学校行事が削減されてしまうという悲劇が起こってしまうことがあると聞く。高等学校では教務主任,特別活動主任,特別活動担当に分散している。 その他では,小,中,高等学校とも大差はない。 |
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イ | 特別活動の校務分掌等の小,中,高等学校の比較 |
図33は、小,中,高等学校とも設問2(1)での,特別活動の組織の人数を回答したもののうち,5人以上の割合をグラフにして比較したものである。 特別活動の担当者会に,各学年1〜2名配属するという学校が多いと考えられる。各学年の意向を学校全体の中に伝えたり,また,学年に分担された仕事などを持ち帰るとき,さらに,仕事上の相談をするときなどに学年毎に複数の担当であったほうが都合がよいからであろう。 しかし,学校の規模を考えると必ずしも複数の担当者を学年から配属することは無理があるのか,5人以上の割合は小学校が最も低い。小学校の学校規模別に5人以上の割合を見ると,大規模校が82.0%,中規模校が58.5%であるのに対して小規模校は27.6%に過ぎない。 図34では特別活動係の会議回数について示している。 各学校とも会議日の定例化しているところは少なく、小・中・高等学校とも必要に応じて開催するという傾向が強い。 会議日の定例化は、毎日巻き起こるさまざまな特別活動上の問題を早期解決するという点で大変効果的である。しかし、これまで様々なところで指摘されているように、学校行事の増大などで小,中,高等学校とも定例の開催が難しく、必要に応じて開催に集中している。 必要に応じて特別活動の担当者会議を行っている学校の場合でも、やはり、その時間の設定に苦労しているいう声が多い。会議の開催にはままだ問題が多い。 図35は、各学校の特別活動主任の年齢を示している。小学校では40歳未満が多く,中学校では30〜40歳に集中している。高等学校では若干年齢が高くなり45歳未満となっている。しかし,小・中学校といえども地域によっては年齢が高いところ,あるいは逆にもっと若くても特別活動主任を務めている例もある。 これは職員構成、あるいは職員の配置との問題もありどちらがよいともいえないが、その他の校務分掌上の各主任とも同様の年齢の先生が勤めているのではないだろうか。 特別活動の活性化を図るには若い先生の登用も一案として考える必要があるだろう。 |
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ウ | 指導計画における指導の重点化の小・中・高等学校の比較 |
今回の調査で,各学校とも年間指導計画を作成する上で重点化して指導することへの取り組みは、小学校で64,1%,中学校で62,2%,高等学校では38,2%という結果であった。小,中学校の多くは指導内容の重点化が図られつつある。 しかし,まだ「(指導内容の重点化が図れたか)どちらとの言えない」と答える学校が見られる。特別活動の各内容は,学級(ホームルーム)活動,児童(生徒)会,クラブ活動,学校行事ともそれぞれにおいて独自の教育的な特質がある。その為に,その各内容のねらいや特質などが十分達成できないでは困る。学校の実態,児童生徒の発達段階などを考慮していくと,そこに自ずと指導内容の重点化を図ることに迫られるはずである。「まだどちらとも言えない」と答えた学校は,ぜひ今後の反省材料にして欲しい。 図36は、学校教育目標に迫るために、特別活動の年間指導計画作成にあたって特に重視していることをまとめたものである。 小,中,高等学校とも「自主的・実践的態度を育てる」を第1に選択している。特に,中学校での選択率が著しく高かったことは注目される。「学校の実態に即する」の選択率が高等学校で特に高かったことと合わせて,特別活動の目標に迫る上からその姿勢は高く評価してよいだろう。ただ,その反面、今回の「小学校の特別活動」のところで指摘しているように、今後新しい活動内容が入ってくることを考えれば、「学校の創意工夫を生かす」ことに力を注いでいくことが望まれる。現在審議が継続されている教育課程審議会が出した「中間まとめ」にも「各学校が創意工夫を生かし特色ある教育を展開すること」は教育の専門家集団の立場から強調されていることでもあり,特別活動の基本を踏まえて取り組みが求められるところである。 |
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