刊行にあたって


 今日の社会は,高度情報化,国際化,高齢化,価値観の多様化など,かつてない ほどの規模と速さで変化しています。これからの学校教育は,このような社会の変 化の中で,心豊かに,たくましく生きていくことができる児童生徒の育成を目指し ていかなければなりません。
 そのためには,知識や技能を断片的に与えるのではなく,児童生徒が一人一人の よさや可能性を生かして,新しい対象に積極的にかかわり,考え,判断し,表現す る資質や能力を獲得できるようにすることが求められています。
 茨城県教育研修センターでは,「主体性の青成を図る学校教青に関する研究」とい う統一研究主題を掲げて研究を進めております。その中で,教科教育第二課では, 平成6年度から7年度の2か年にわたり,理科,生活,音楽,図画工作,美術,家庭, 技術・家庭,商業の教科について,児童生徒が主体的に観察・実験や実技などの活 動に取り組めるように,学習指導の在り方について研究をしてきました。
 「主体性」や「主体的」とは,現象的には「自分から進んで〜する」ことですが, 現象的には積極的に行われているかにみえる行動も,実は動機が外発的であったり, 他律的であったり,非主体的であったりする場合があります。「主体性」とは,本質 的には「もっと〜したい」という意欲に裏付けられた価値志向性をもつものです。 本質が身に付いていれば,それが現象となって現れていくのは当然ですが,その逆 は必ずしも成立しません。しかし,方法としては,現象から入り,本質を育てるこ とも可能です。いずれにしても,「主体性」の本質と現象とを混同せず,両者を区別 するとともに,その上でこれらを関連づける教師の自覚と扱い方とが必要です。
 この報告書には,児童生徒が目を輝かせ,「これはおもしろい」「もっとやってみ たい」と心底から感じて学習に取り組めるような研究の成果を収録しました。本研 究が,学習指導の改善・充実に役立ち,児童生徒が主体的に観察・実験,実技に取 り組む機会がますます増えていけば幸いです。
 おわりに,本研究を進めるにあたり,意識・実態調査にご協力いただきました関 係学校及ぴ、研究協力員の先生方に対して,心から感謝の意を表します。

平成8年3月
茨城県教育研修センター所長
高久清吉


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