第1章 調査研究の報告 |
T |
研究の基調 |
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1 |
研究主題 家庭や地域社会との連携を図る学校経営の在り方 |
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2 |
研究の趣旨 |
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「地域に開かれた学校」が強く求められている現状のなかで,本県における学校と家庭や地域社会との連携の実態を調査し,その問題点を究明したり,連携の実践例を示したりすることによって学校経営の改善・充実に役立てる。 |
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3 |
主題設定の理由 |
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(1) |
学校教育自体のもつ特質からの脱却 |
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これからの学校教育は,家庭や地域社会との連携を深めながら,多様な教育活動を展開し,画一的,硬直的,閉鎖的といわれる学校のもつ特質から脱却していかなければならない。それによって,児童生徒は豊かな人間性や個性を伸ばすことが可能になる。また,学校教育に対する意見や要望を,学校の存在する基盤としての地域社会や保護者から積極的に受け入れ,学校経営に当たることによって,学校は地域に根ざし,地域社会から求められ,信頼されるよう変容していかなければならない。 |
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(2) |
生涯学習社会における学校の役割の変化 |
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ア |
生涯学習の基礎づくりの場としての学校 |
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現在の社会は国際化情報化 高齢化社会への移行など,めまぐるしく変化をしている。その中にあって,学校のおかれる立場や役割も完結的な学習機関から生涯学習の基礎作りの場へと変化した。このような現状において,学校では児童生徒に自ら学ぶ意欲と社会の変化に主体的に対応できる能力を育成していかなければならない。
これからの社会を生きていくために必要な能力は,学校教育のみによって育てられるものではない。学校教育は児童生徒が生活する家庭や地域社会において身についた知識と技能を基盤として成り立っており,これを無視して学校教育は成り立たない。
また,学ぶ意欲や創造力などを育て,知識と技能の理解を図るための問題解決的学習や体験的な学習活動などの土台は,家庭や地域社会にあると言わねばならない。家庭や社会の在り方が変化し,1巳室生徒が自分をとりまく地域社会と自ら関わることの少なくなった現在,学校は家庭や地域社会と積極的な連携を図ることによって,学校教育の目指す能力を児童生徒に育成していかなければならない。 |
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イ |
地域社会のコミュニティセンターとしての学校 |
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学校はかつて地域社会の文化センター的性質をもち,地域住民にとって精神的な支えの場であった。近年,社会が変化するにともない,その性質を失ないがちであるがそれにつれて学校教育の荒廃も目立つようになった。
国民一人一人が常に学び続ける生涯学習時代において,地域社会の学習要求に応え学校はその施設・設備を広く地域社会に開放していかなければならない。また,教師は地域社会の一員として,知識と技能,指導力を積極的に地域社会における生涯学習のために発揮することが望ましいと考える。
このような努力をし,学校が地域のコミュニティセンターとなることによって,地域社会の生涯学習が推進されるばかりでなく,地域社会が学校や教師を理解し,共に地域の児童生徒を育てようとする姿勢が生まれるようになると考える。 |
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(3) |
児童生徒の人間としての生き方と地域社会 |
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児童生徒は人間としての生き方を学校教育全般において学んでいる。それにもかかわらず,知的には分かっているはずの人間としての正しい行動が実際にはできない児童生徒が多い。
人間としての生き方は,児童生徒の直接的な体験によって培われる面をもっている。年齢,性別,職業など多くのことがらが異なる人々の集合である地域社会における体験は,児童生徒の自分自身や他者への見方や考え方を変え,人間としての生き方をも変えていくことになる。
学校は地域社会との連携を深めることで,児童生徒に積極的な社会参加を促し,児童生徒にとって望ましい体験を重ねていけるよう援助していかなければならない。 |
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(4) |
学校週5日制への対応 |
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児童生徒の教育は家庭,学校,地域社会の三者がそれぞれの立場で連携しつつ行うことが望ましい。しかし,実際にはこの三者がそれぞれの役割をバランスよく果たしているとは言えない。過度の学校教育への依存,あるいは相互の役割分担のはきちがえは多くの弊害を児童生徒にもたらしている。
その意味で,月1日の学枚週5日制の実施は学校,家庭,地域社会が児童生徒の教育にどのようにかかわっていくかを考え直す契機となった。1年間の実践の基盤に立って,さらに月2回の実施をより意義のあるものにする必要がある。・そのためには,三者が互いに理解しあい,さらに連携を深めることによって,児童生徒の正常な成長が可能になると考える。休日となる日々の受け皿として,コミュニティセンターとしての学校の施設・設備が役立つのである。 |
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(5) |
臨時教育審議会答申,県の計画等 |
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ア |
臨時教育審議会第2次答申(昭和61年4月23日) |
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第2部・第1章・第2節 生涯学習のための家庭・学校・社会の連携 |
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生涯学習体系の中で家庭・学校・地域など教育の各分野の役割や責任を明確にするとともに,柑杜の連携を図ることが必要である。 |
第2部・第2章・第2節 家庭教育の活性化 |
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エ |
家庭・学校・地域が.それぞれの役割を踏まえつつ連携し,三者一体となって子どもを育てるための環境をつくる。この覿点から,PTA活動の活性化学校教育活動への地域住民参加の推進,学校給食の見直しなどを行う。 |
第2部・第3章・第1節 徳育の充実 |
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イ |
児童・生徒の発達投階に応じ,自然の中での体験学習,集団生活,ボランティア活動・社会奉仕活動への参加を促進する。 |
第2部・第3章・第2節 教育内容の改善 |
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エ |
学校教育活動を社会に開かれたものとするため,社会参加・ボランティア活動の尊ん高等学校における技能連携など企業や専修学校等との連携,成人学習の樺会の拡大を図る。 |
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イ |
臨時教育審議会第3次答申(昭和62年4月1日) |
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第2章・第5節 開かれた学校と管理・運営の確立 |
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(1) |
学校の活性化のための新しい課題 |
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生涯学習体系への移行の観点から,学校の施設・槻能を地域住民に開放することは重要である。また,情報化国際化をはじめ今日の社会・経済などの変化は著しく,こうしたなかで新たな要請も生じている。これらの要請に対応するため,学校を地域社会の共同財産としての観点から見直し,学校・家庭・地域社会の協力関係を確立する。 |
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(2) |
自然学校の推進 |
第4章 スポーツと教育 |
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(1) |
生涯スポーツの推進 |
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ウ |
学校のスポーツ施設等については,地域社会の共同の施設であるとの観点に立って,その整備の在り方を検討する。
また,それら施設等の時間帯別利用が円滑に行われるよう,施設管理の責任の在り九建築について工夫する。 |
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ウ |
教育課程審諌会答申(昭和62年12月24日) |
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U |
教育課程の基準の改善の関連事項 |
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2 |
学校運営と学習指導 |
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学校は,地域の施設を積極的に活用したり,学校教育活動について地域の人々の理解や協力を求めたりするほか,家庭や地域社会の建設的な意見に耳を傾けるなど,地域に開かれたものとなるよう学校運営の一層の改善充実を図ることが必要である。また,学校は,地域や学校の実態に応じて,他の学校との連携や交流を通して,他の学校の幼児児童生徒との触れ合いなどの機会を拡充し,望ましい人間形成を図るよう努めることが大切である。 |
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6 |
家庭教育及び社会教育との連携 |
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教育課程の基準の改善のねらいをより有効に達成するため,学校教育と家庭教育や社会教育とは,それぞれの機能を発揮しつつ,相互に補完し合う必要がある。学校と家庭や地域社会との連携を一層深めるためには,特に学校が家庭や地域社会に積極的に働きかけてその理解と協力を求め,学校内外に通じた幼児児童生徒の生活の充実と活性化を図る必要がある。
また,地域におけるスポーツ活動,文化的な活動,奉仕活動,自然に親しむ活動などを通じて望ましい人間形成を図るようにすることが必要である。そのためにも,生涯学習体系への移行にも配慮しつつ,社会教育施設等の整備とともに学校開放を促進することが大切である。 |
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エ |
茨城県教育振興計画(平成3年1月) |
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第1 |
基本構想編 |
3 |
施策の基本方向・学校教育の振興 |
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生浬学習社会への移行という展望に立って,学校教育が生涯にわたる学習の基礎をつくるという認識のもと,学校と家庭の役割分担の明確化と連携の強化を図りながら,学校教育がになう役割を積極的に果たしていくことが期待されている。 |
第2 |
基本計画編 |
1 |
学習指導の改善・充実 |
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優れた民間人の協力を得て授業等を展開するなど,魅力のある教育活動の展開に努める。 |
3 |
進路指導の充実 |
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情報槻器を活用して適切な進路情報の収集に努めるとともに,中学校・高校間,学校・地域社会間等の連携の強化に努める。 |
4 |
職業教育の充実 |
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産業の各分野から学ぶため,優れた職業人の講師招聘,職場実習等を積極的に取り入れる。 |
6 |
道徳教育,情操教育の推進 |
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郷土の自然や美術鼠音楽施設等の自然環境や文化環境を積極的に活用して,体験学習・学校行事を推進する。 |
7 |
福祉教育の充実 |
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創意工夫のある体験的な活動を重視した教育計画を作るとともに,地域に根ざした奉仕活動を推進する。 |
8 |
環境教育の推進 |
|
身近な環境保全のための活動を実践する態度を養う。 |
11 |
生徒指導・教育相談体制の充実 |
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生徒指導を地域ぐるみで総合的に推進するため,県及び地区別の生徒指導推進会議を開催するなど学校,家庭地域社会及び関係機関・団体間の連携の強化を図る。 |
12 |
学校不通応対策の推進 |
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学校,家庭,地域社会の連携のもとに,長期欠席児童生徒や高校中途退学者等の学校不適応児童生徒の解消に努める。 |
15 |
科学教育の推進 |
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身近な自然に目を向けさせ,直接経験による学習の充実を図るため,郷土の科学教材を活用した教育活動を推進する。 |
16 |
体力・運動能力の向上 |
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児童生徒の体力の向上を図るため,小・中学校が一体となり,家庭や地域との理解と協力を得ながら,地域に密着した体力つくりを実践する。 |
17 |
保健教育の充実 |
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生涯にわたり健康で充実した生活を送るための基礎を培うため,家庭や地域との連携を図り,学校の教育活動全体を通じた保健教育の充実に努める。 |
18 |
安全教育の充実 |
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生涯を通じて健康で安全な生活を送るための基礎を培うため,家庭や地域等との連携を図り,学校の教育活動全体を通じた安全教育の充実を図る。 |
19 |
学校給食の充実 |
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児童生徒の望ましい食習慣の形成を図るため,家庭や地域との密接な連携に努める。 |
59 |
生涯学習拠点施設の整備 |
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地域での学習活動を推進するため,小・中・高校の教育機能・施設(体育館,運動場,余裕教室,図書室等)の地域社会への開放を進める。 |
66 |
中・高校生の競技力向上 |
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地域,各学校,各団体と相互の連携・協力を推進するため,連絡会議の設置を促進する。 |
73 |
学校施設の開放推進 |
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小・中学枚施設の開放については,体育館のほか,運動場やプールも開放するよう努める。 |
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4 |
研究の方法 |
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(1) |
研究期間 平成4年度〜平成6年度(3か年計画) |
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(2) |
研究の具体的な方法 |
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ア |
研究協力貝を委嘱し研究協議会を開いて基礎的研究及び実態調査の作成に当たる。
(平成4年度) |
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表1 研究協力員の構成
年度 |
平成4年度 |
平成5年度 |
平成6年度 |
校種 |
小 |
中 |
高 |
合計 |
小 |
中 |
高 |
合計 |
小 |
中 |
高 |
合計 |
教頭 |
1 |
1 |
1 |
3 |
1 |
1 |
1 |
3 |
2 |
2 |
1 |
5 |
教諭 |
3 |
3 |
3 |
9 |
3 |
3 |
3 |
9 |
2 |
2 |
3 |
7 |
合計 |
4 |
4 |
4 |
12 |
4 |
4 |
4 |
12 |
4 |
4 |
4 |
12 |
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|
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|
イ |
実態調査を行うことで,本県の学校と家庭や地域社会との連携の実態と問題点を探る。
(平成5年度) |
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表2 実態調査依頼数・回答数
学校種 |
/ |
学校数 |
校長 |
教頭 |
教務主任 |
学年主任 |
担任 |
全体 |
保護者 |
小学校 |
依頼数 |
100校 |
100人 |
100人 |
100人 |
600人 |
/ |
900人 |
600人 |
回収実数 |
100校 |
100人 |
99人 |
100人 |
588人 |
/ |
887人 |
568人 |
中学校 |
依頼数 |
50校 |
50人 |
50人 |
50人 |
150人 |
300人 |
600人 |
450人 |
回収実数 |
49校 |
49人 |
49人 |
49人 |
138人 |
281人 |
566人 |
416人 |
高等学校 |
依頼数 |
30校 |
30人 |
30人 |
30人 |
90人 |
270人 |
450人 |
270人 |
回収実数 |
30校 |
30人 |
30人 |
30人 |
89人 |
270人 |
449人 |
270人 |
合計 |
依頼数 |
180校 |
180人 |
180人 |
180人 |
840人 |
570人 |
1950人 |
1320人 |
回収実数 |
179校 |
179人 |
178人 |
179人 |
815人 |
551人 |
1902人 |
1254人 |
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|
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|
|
○ |
小・中学校は,各教育事務所管内の学枚数や学校規模に配慮して抽出した。 |
|
|
|
|
○ |
高等学校は,学区の学校数,学科に配慮して抽出した。 |
|
|
|
|
ウ |
研究協力校を委嘱し,実践的な研究に当たる。(平成5,6年度) |
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表3 研究協力校
/ |
小学校 |
中学校 |
高等学校 |
合計 |
学校数 |
1 |
1 |
1 |
3 |
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5 |
研究の経過 |
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表4 研究の経過一覧 |
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6 |
研究の内容 |
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|
(1) |
理 論 研 究 |
|
|
|
ア |
小島 弘道教授(筑波大学)の講義 |
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|
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|
(ア) |
家庭や地域社会との連携の必要性
- 子供の成長環境への分担と共同(生涯学習,学校週5日制)
- 学校教育の充実,活性化(人材活用,生徒指導)
- 地域への貢献(学校開放,公開講座)
- 開かれた学校経営の実現
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|
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|
(イ) |
開かれた学校一誰に,何を,主体は
- 二つの意味(学校機能が開かれている,学校経営が父母に開かれている)
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|
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(ウ) |
地域にとっての学校
- 地域の文化のシンボルとしての学校
- 子供の成長環境としての学校
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|
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(エ) |
学枚にとっての地域
- 地域に根ざす教育(地域の教材化,地域の人材活用)
- 子供の成長環境としての学校
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(オ) |
連携をめぐる学校経営の課題
- 教育課程,親の理解・協力,教職員の意識変革と研修,連携の持続・調整
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(カ) |
調査対象校の選択
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イ |
本田 敏明助教授(茨城大学)の助言 |
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|
(ア) |
クロス集計,検定 |
|
|
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|
(イ) |
数量化による分析(カテゴリカル・データの処理) |
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(2) |
研 究 の 視 点 |
|
|
|
学校が家庭や地域社会と連携を図っている「開かれた学校」の姿を次のア〜オとする。 |
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ア |
地域の人材,文化財及び環境などが十分に活用されている。 |
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|
イ |
他校や学校以外の教育機関・団体等との連携が十分に図られている。 |
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|
|
ウ |
保護者が学校教育の方針や内容を理解し,学校の運営に建設的に参加している。 |
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|
|
エ |
学校の施設・設備が地域社会に開放されている。 |
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|
|
オ |
学校のもつ教育力が地域社会に生かされている。 |
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(3) |
調査項目の観点 |
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「開かれた学枚」の姿に対して,本県における実態を下記の観点から調査する。 |
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表5 連携に関する観点
/ |
内 容 |
観 点 1 |
家庭や地域社会との連携に関する教職員の意識について |
観 点 2 |
地域の人札 文化財及び環境などの活用について |
観 点 3 |
他校や学校以外の教育機関・団体等との連携について |
観 点 4 |
保護者と学校との関わりについて |
観 点 5 |
学校の施設・設備の地域社会への開放について |
観 点 6 |
学校のもつ教育力の地域社会への還元について |
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