はじめに

 学校教育においては,高度情報化,国際化高齢化などの激しい変化が予想される社会に,主体的に対応して生きていくことができる心豊かな人間の育成を図ることが求められています。このような認識に立って・これからは・知識や技能をどれだけ身に付けたかという量的な面だけが重視される傾向が強かった今までの教育観の転換を図ることが期待きれています。すなわち,一人一人が自分のよさや可能性を発揮し,主体的に学習に取り組み,自ら考え,試みることを通して,確かめたり新たな発見をしたりして,学ぶ喜びや成就感を味わったりするような学習活動が中核になるということです。

 こうした状況の中で,児童生徒一人一人が自ら自分のよさや可能性を伸ばし,その自己実現を図ることを支援することが教師の大きな課題になっています。児童生徒の思いをもとに,問題解決的な学習活動や体験的な学習活動を積極的に取り入れていくことが望まれます。そのためには,児童生徒との温かい雰囲気の中での交流を通し,児童生徒の思いを共感的に理解し,支援をすることが教師の役割といえます。

 これからの新しい学力は,生涯学習に生きて働く自ら学ぶ意欲や思考力,判断力,自己表現力などの育成が求められています。新しい学力は「学ほうとする力」「学ぶ力」「学んだ力」の三つの要因からとらえることもできます。本研修センターでは,平成4年度から新しい学力観のもとに,学ぶ側に立って「学ぼうとする力を育てる学習指導に関する研究」を研究主題に掲げ,国語,社会,算数・数学,理科、生活,外国語の各教科について研究に取り組んできました。本研究報告書は,この2年間の実践をまとめたものです。

 本研究が新しい学力観に基づく授業実践に活用され,学習指導の工夫・改善に役立てていただければ幸いです。

 おわりに,本研究を進めるに当たり,意識・実態調査に御協力いただきました関係学校及び研究協力員の先生方に対して,心から感謝の意を表します。

 平成6年3月
茨城県教育研修センター所長
高 久 清 吉

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