研究のまとめ
  (1)  小学校・中学校・高等学校における授業研究を通して,次のようなことが分かった。
     小学校では,調べたいことをもとに興味・関心別にグループを編成したことで,調べる動機や目的を明確にすることができた。また,多様な調べ方を取り入れたことにより,児童はそれぞれのよさを実感しながら,主体的に追究活動に取り組み情報を増やすことができた。まとめの段階では,ニュースタッチの発表会やプレゼンテーションをもとにした情報交換会を通して,自分の考えを整理したり深めたりすることができた。
     中学校では,多様な学習形態の場において,複数の教師によるティーム・ティーチングによる指導を取り入れた。その結果,何が問題なのかはっきりしない,どのように調べたらよいのかが分からないなどの生徒一人一人の学習状況を,教師が的確に把握することができるとともに,個に応じたより細かな支援を行うことができることがわかった。このことにより,生徒は,明確に問題意識をもち,適切な調べ方を見いだすことができ,主体的に学習活動に取り組めたものと考える。
     高等学校の日本史学習では,追究の見通しをもたせるために,調べる観点を明示した観点別カードを作成し,活用したことで,生徒は調べ学習の中で使用した参考文献を単なる「読み物」としてではなく,「資料」として活用することができた。調べ学習でまとめられた追究の結果を発表する場においては,ストーリーボードシートを活用して発表の構想を事前に立案したことにより,生徒は,発表のイメージを具体化した上で発表会の場に臨むことができ,聞き手に分かりやすく伝えることできた。
     高等学校の公民学習では,環境権に関する政治・経済学習においては,生徒が情報収集を容易に行えるように,図書館を中心として書籍やインターネットを利用して自由に調べ学習を行うことができるようにした。その結果,生徒は,主体的に学習に参加することができた。また,グループ内で情報交換を行う場面を学習過程の中で設定したことにより,生徒は自由な雰囲気の中で意見交換を行うことができ,自らの調べた内容や考えの見直しを行うことができた。
  (2)  2年間にわたり研究を進めた結果,次のようなことが明らかになった。
     児童生徒に,自分のめあてや学習計画に基づいて意欲的,主体的に問題を解決していく見通しをもたせるために,自分の課題についての調べる視点や方法について選択する場を設定した。結果,学習過程が個別化され,自分の視点や方法で調べられるように追究過程が見通すことができ,問題解決のために主体的に取り組めるようになった。
     児童生徒に追究の見通しをもたせ主体的な調べて考える学習を進めるためには,児童生徒が追究過程で調べて発見した事実とその見方や考え方について,相互に関連について振り返える場を設定することで,自分の考えに沿って調べた事実に対して別の見方や考え方があることに気付くことができ,自分の考えの見直しを図れるようになった。
     自分の見方や考え方を深めるために,児童生徒が追究の結果について修正を加えたりまとめたりする場を設定し,主体的に調べて考えたことを相互に比較・検討することで,自分の考え方との共通点や相違点について気付くことができ,社会的事象を空間的,時間的に理解したり,多面的にとらえたりすることが可能になった。


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