研究のまとめ
   本研究では,理科の学習及び学習指導に関する実態調査を踏まえ,平成14年度と平成15年度の2年間にわたり,実践的な研究に取り組んできた。以下に,研究主題「問題解決能力の育成を目指す理科学習の指導の在り方」に迫るための手だての有効性について述べる。
  (1)  中学校の実践に見られる自作教具を使った事象提示や高等学校物理の実践にあるコンピュータ・シミュレーションによる事象提示は,生徒の興味・関心を高めることができ,驚きや疑問から課題へと発展させることに役立つことが分かった。また,小学校に見られるように,導入の場面で自由試行を取り入れることや,高等学校地学のように,導入の場面で工作を取り入れることは,児童生徒が実感を伴って課題をとらえることに有効であった。
 このような授業導入時の学習活動の中で,教師は,児童生徒の驚きや疑問を引き出し,自ら課題をとらえさせることができた。
  (2)  小学校の実践では,課題追究の場面で自由試行を取り入れた。その結果,児童一人一人が自らの論理を生かし,自らの問題として探究しながら,新たな問題を見出したり,新たな論理を構築していくのに役立った。また,全校種の実践で見られるように,自作教具を活用した観察,実験を選択させ,結果を予想させたり仮説を立てさせて,課題に取り組ませた。児童生徒一人一人の興味・関心に応じて課題に取り組むための観察,実験を選択させて,見通しをもたせることにより,児童生徒が積極的に課題を追究しようとするとともに,他の班と比較・検討するなど意欲的に活動する姿が見られた。その際,ワークシートを工夫することで,児童生徒一人一人が観察,実験の流れや結果を把握することが可能となった。さらに,自分で選択した観察,実験ができたという達成感を味わうことにつながった。
 このように,観察,実験を工夫して行わせることで,児童生徒が発想した予想や仮説に基づいて,観察,実験を行いデータを集積したり,結果を導き出すことができると考える。
  (3)  小学校の実践では,ブレーンストーミングを取り入れた小集団による話し合い活動を取り入れた。この活動は,児童の自由で多様な考えを引き出すのに有効であり,自らの考えを整理したり見直したりして,さらに,疑問を探究して行こうとするようになった。中学校の実践では,自作教具を使って話し合わせることで,わかりやすく実験結果を考察し,まとめさせることに成功した。高等学校の実践では,自分たちで選択し製作した作品や実験装置を提示しながら結果を発表し合うことにより,相手に理解してもらう表現力を養ったり,他の班の結果と比較し,広い視野から結果を考察し,まとめることができた。
   以上のように,事象提示の工夫や教材・教具の工夫と活用,さらに観察,実験を選択させたり話し合い活動や発表の場を設けるなど指導方法を工夫することで,探究的な活動を通して,児童生徒自ら問題を見つけ,試行錯誤しながら自分で考え,解決していくなどの問題解決能力の育成を目指すことができたと考える。
 児童生徒の問題解決能力をさらに育てるには,一単元だけでの実践ではなく,年間を通した計画と他教科や総合的な学習の時間との関連をどのように図るかが大切なことである。また,児童生徒に問題解決能力が身に付いたかどうか,適切に評価することが必要であると考える。これらのことを今後検討していきたい。


[目次へ]